JAZZ雑感 11.
窯焚きとJAZZ
〜 満天の星の下で 〜
2005年2月上旬に4泊5日で窯焚きに行ってきた。今回も栃木県の「閑庵 楡窯」にお世話になり、お手伝いならぬ足手まといに行ってきた次第だ。
僕にとってはこの窯焚きとその時に聴くJAZZは一度に二つの趣味を満足させることの出来る至福の時と言わねばならない。窯焚きの窯から出る煙や炎を見ながら聴くJAZZは心を潤す。空には満天の星が降り注ぎ森閑とした空気は心を洗う。
夜を徹して焚く窯焚きは5日間に及ぶが、特に、深夜から明け方に一人で行う薪番は貴重なひと時で、凍てつく空気の中で聴くJAZZにはひとしおの感慨がある。今回の窯焚きには、最近の「manaの厳選 PIANO TRIO & α」の中から17枚のCDを持参した。その窯焚きの体験を通して、改めて感動したアルバムをチョイスすると・・・
@STAN GETZ & KENNY BARRON "PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231. ) 中でも"FIRST SONG"には参ったなあ。これが、癌の病に冒されているGETZが亡くなる3ヶ月前に録音したラスト・レコーディング。3ヶ月前にして、ここまでテナーサックスを歌い上げる体力があったのか?それとも、精神力だったのだろうか!目頭が熱くなってしまう。
ACARSTEN DAHL "MOON WATER"(JAZZ批評 246.) ここから流れ出るJAZZは夜明け前の森閑とした凍てつく空気に共鳴した。1曲目の"ECOUTER
ET JOUER"や6曲目の"HYMNE"は見事にその空気を捉えている。
BNAJ PONK "AUTUMN IN NEW YORK"(JAZZ批評 236.) 3曲目のJ.LENNONの書いた"IF I FEEL"は和音の美しさが心に沁みる。シンプルそのものの演奏だが、本当に心に沁みる。音楽は音数ではないと再認識。
CHELGE LIEN "WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE"(JAZZ批評 228.) 今回、この曲を書き忘れてしまったので、後から追記。静かな躍動感が何ともいえない。美しいスロー・バラードにあっても湧き上がる躍動感がこの曲の凄さ。心を無にして聴いて欲しい1曲。この曲を聴きながら余生を考えてみるのもいいかも知れない。
「楡窯」の庵主、栗原先生はJAZZにも憧憬が深い。偶然ではあるが、僕と同様に若い頃、ベースを弾いていたという。JAZZと陶芸が共通項だ。尤も、栗原先生はプロで、僕は趣味の範疇だが・・・。
そんな先生とのJAZZ談義の中で話題になったのがアメリカのジャズの衰退。
奇しくも僕が昨年末に購入したアルバム10枚のほとんどがヨーロッパ発のアルバムという事実が折り重なる。実は、僕がこのHPを始めた頃は、「ヨーロッパのジャズなんてジャズじゃないよ」と思っていたし、事実、聴きたいとも思っていなかった。それから3年半の間に事情は一変した。アメリカのジャズに魅力がなくなったことも一因だが、むしろ、ヨーロッパのジャズが魅力的になったことを素直に認めるべきだと思っている。
先ず、ピアノもベースも技術的に上手いし表現力が豊か。クラシックの薫陶を得ているためか、楽器の基本がしっかりしているのと、その楽器を知り尽くた表現力が一対になっているのだ。ベースにおいては最も基本的というべき音程が正確だ。本来、当たり前のことだが、この当たり前のことこそ難しいと言うのが世の常だ。
昔はクラッシク経験者は頭でっかちでノリが悪いとかパワーに欠けるとか言われたものだが、今は違うね。充分パワフルであるし、ノリだってアメリカのジャズよりいいかもしれない。以上のことから、結果として導き出される音楽が「深い!」。だから、何回も繰り返し聴きたくなる。これって、いいジャズと認められる絶対条件だと僕は思う。
今までに250余にわたるレビューを書いてきたが、良いジャズと認められるアルバムは何年経ってもまた引っ張り出して聴いてみたいと思わせる「何か」が心に残っている。反対に、つまらないアルバムは1回きりでおしまいというのが現実だ。先日も3.5★以下を買い取りに出して、新たに新譜を購入した。今日もまた、新たな5つ★を捜し求めて耳を傾けている。 (2005.02.27)