JESSICA WILLIAMS
聴きこむほどにジンワリとそのよさが染み出てくるアルバム
好感が持てる
"LIVE AT YOSHI'S  VOLUME ONE"
JESSICA WILLIAMS(p), RAY DRUMMOND(b), VICTOR LEWIS(ds)
2003年7月 ライヴ録音 (MAXJAZZ MXJ 210) 
                    
最初にこのアルバムを手にした時、また「寿司屋のジャズ」かと正直思った。このライヴ会場のYOSHI'SはJAZZ批評 207.のMUGREW MILLER TRIOでも紹介した高級和風レストラン。すし屋でJAZZというのも最近のアメリカの流行かもしれないが、前作の出来がもうひとつ満足いくものではなかったのであまり期待感はなかった。考えてみれば、プレイヤーが変われば音楽も当然変わるわけで「寿司屋のジャズ」と決め付けることもないわけだ。事実、このアルバムは期待以上の作品に仕上がっている。

ベースのRAY DRUMMONDはJAZZ批評 22.KENNY BARRON TRIO"LIVE AT BRADLEY'S"にも参加している。肩肘張らないリラックスしたライヴではこのベーシストは最適かもしれない。変に気張ったところがなくてスウィング感もあり、よく歌うのでピアノのサポート役として重宝されているようだ。
                           

@"I'M CONFESSIN' THAT I LOVE YOU"
 この曲のイメージとしてはKENNY BARRONがふっと湧いてくる曲。JAZZ批評 26.や174.でも演奏されている曲。 先ず、曲がいい。リラックスした雰囲気の中での小気味のいいピアノ・プレイで楽しさを満喫させてくれる。左手のコードによるバッキングがいいね。トリオとしての緊密感も高いし、リズムを刻む一体感が嬉しい。

A"SAY IT OVER AND OVER AGAIN" これもいい曲だ。ミディアム・スローの一度ならずとも聞いたことのある曲。耳にすれば「ああ、この曲か!」と納得がいくはず。
B"YOU SAY YOU CARE" 
C"TUTU'S PROMISE" WILLIAMSのオリジナルだが、なかなか味わいのある泥臭いブルースだ。これは渋い。3人がこのブルースを楽しんでいる。

D"HEATHER" BILLY COBHAMのオリジナル。異色なフィーリングの曲をなかなか雰囲気のある演奏に仕立て上げた。
E"ALONE TOGETHER" フリーなピアノのイントロからテーマのイン・テンポへと移行する、その様がいい。スティックがシンバルを刻みベースが力強くウォーキングし、ピアノが気持ちよくスウィング。11分を超える長尺だが、飽きさせることはない。

F"POEM IN G MINOR" WILLIAMSのオリジナル・ワルツ。これもいい曲だ。メロディアスでありながらもリズミックなピアノが美しい。
G"I WANT TO TALK ABOUT YOU" スタンダード・ナンバー。少し早めのスローを2ビートでサラッと演奏している。
H"MYSTERIOSO" THELONIOUS MONKの曲。なにもMONK風に弾くことはなかったと思うけど・・・。

聴きこむほどにジンワリとそのよさが染み出てくるアルバム。ライヴにありがちな受け狙いとか奇を衒った演奏は微塵もない。真面目にしっかりとライヴを楽しんだという感じ。「寿司屋のジャズもまんざらではない」と思えるアルバム。
全9曲、選曲が良い。どの曲もセンスのよさが感じられ好感が持てる。   (2004.09.18)



独断的JAZZ批評 220.