独断的JAZZ批評 960.

YOKO TERAMURA TRIO
「3分間芸術」を標榜する寺島レコードの面目躍如だ。
"BLUE"
寺村容子(p), 新岡誠(b), 諸田富男(ds)
2015年3月 スタジオ録音 (TERASIMA RECORDS : TRY-1048)

本アルバムは、当HPの中では「寺島レコード」の第3弾に当たる。第1弾は山本玲子 テンパス フュジットの"WILTON'S MOOD)(JAZZ批評 954.)で、第2弾が大橋祐子の"TWO CHORDS"(JAZZ批評 958.)。いずれも星5つで、すっかり嵌ってしまった。
特徴として、音がジャズ向きで迫力がある。特にベースはアグレッシブでビートも強い。音が前に前にと出てくる。中には誇張され過ぎと言う人もいるかもしれないが、良いオーディオ装置で聴けばジャズの醍醐味と臨場感を味わえるだろう。
本アルバムは、シリーズ3作目に登場する寺村容子。このピアニストも寺島レコードの秘蔵っ子であることは間違いあるまい。全12曲のうち、寺村のオリジナルは3曲。残りはカバー曲が多いが、いずれもマイナーな曲で知る人は少ないのではないだろうか?

@"THE ISLE OF CELIA" ビート感のあるラテン・リズムのベースの定型パターンで始まる。この寺島レコードのベース音には1種の拘りがあるようで、人によっては好き嫌いの分かれるところだろう。
A"BLUEBERRY HILL" 
甘くないスロー・バラード。ベースの遊び具合が良い塩梅だ。ピアノも楽しげだ。
B"CODA" 
寺村のオリジナル。クラッシクの匂いをさせながらジャズの面構え。シンバル・レガートが利いている。
C"KISS OF SPAIN
VER1" DUKE JORDAN(JAZZ批評 48.)の曲でスローで哀愁を帯びた演奏が心に沁みる。それだけで終わらないのが寺村の真骨頂。情熱的なクライマックスを用意している。
D"ENERGY" 
寺村のオリジナルで32小節の歌モノ。ベースとドラムスの4小節交換を経てテーマに戻る。
E"I BURN FOR YOU" 
STINGの曲。聴いてみると「ああ、なるほどね!」と思ったりする。哀愁を帯びた旋律をなぞり、寺村のアドリブが新たな世界を開く。
F"PAS DE TROIS" 
一転して、明るい曲想のワルツだ。
G"HIDE AWAY" 
いかにも黒人が演じるブルースのようで、グルーヴィーだ。アコースティックなベースでのソロもいけてる。
H"VIVID COLOR" 
タイトル通りヴィヴィッドな演奏でもある。
I"SOLDIER'S HYMN" 
この曲、ERIC REEDの書いた曲だという。珍しいタイトルの曲を選んだものだ。「自由の賛歌」を選ばないあたりに寺村の人柄を感じる。
J"JOHNNY BOY" 
作曲者は北アイルランドのGARY MOORE。"DANNY BOY"のパクリかと思ったけど違った。曲想は似ている。
K"MAELSTROM" 
この曲も渋いね。フランスのMICHEL SARDABY(JAZZ批評 91.)の曲だもの。
L"KISS OF APAIS
(ALT. TAKE)" Cの別バージョン。今度はミディアム・テンポのラテン・タッチだ。

言ってみれば、てんこ盛りだ。全13曲でトータル50分は1曲あたり4分を切れる。「3分間芸術」を標榜する寺島レコードの面目躍如と言っても良いのかもしれないが、リスナーにとっては少々、消化不良だ。カバー曲のマイナーな選曲といい、"SOLDIER'S HYMN"あたりを挿入するところも寺村の拘りなのかもしれない。
先のふたつのアルバム、"WINTON'S MOOD"と"TWO CHORDS"と比べるならば、アルバム・トータルの「楽しみ度」として前者のふたつをあげたい。3枚並んで置いてあるとすれば、僕は先の2枚を選ぶに違いない。   (2015.09.04)

参考サイト:https://www.youtube.com/watch?v=3wDWGtIDmCk




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