独断的JAZZ批評 954.

REIKO YAMAMOTO TEMPUS FUGIT
躍動感満載のヴィブラホーン・カルテットは大音量で聴け!
"WILTON'S MOOD"
山本玲子(vib), 皆川太一(g), 小美濃悠太(b), 松尾明(ds)
2014年12月 スタジオ録音 (TERASHIMA RECORDS : TYR-1046)


ジャズ評論家でジャズ喫茶のオーナーでもある寺島靖国氏は2007年にこの寺島レコードを立ち上げたという。数多くのコンピレーション・アルバムを世に送り出している。一方で、日本の有能な若手ミュージシャンにも光を当てて、レコード(CD)をリリースしているが、何故か、女性ミュジーシャンが圧倒的に多いというのも好みの問題か?そう言えば、コンピレーション・アルバムのジャケットの全てが美しい女性だ。
ジャズ喫茶のオーナーらしく音質にも拘り続け、重量盤のアナログLPを出し続けているのも音に対する拘りなのだろう。
ところで、この山本玲子もなかなかの美人だ。

@"BOHEMIA AFTER DARK" 先ず、いきなり飛び出すベースの音色がガッツとビートに溢れていて良いではないか。どの楽器も生々しく録れている。続くKENNY BURRELL風の皆川のギターもいいね。願わくば、良いオーディオ装置で大音量で聴いてもらいたい。スマホなんかでチマチマ聴いていたのではこの迫力を堪能することは出来まい。
A"WILD IS THE WIND" 
バラードだけど、ここでもベースが効いている。
B"WILTON'S MOOD" 
アルバム・タイトル曲だけど、ギターとヴァイブが心地よい会話を繰り広げる。
C"ORDINARY DAY" 
いずれの演奏も小難しいことは抜きにしてシンプルにスイングしている。山本のオリジナル。ノスタルジーをも感じさせる演奏だ。
D"IN GRAND CENTRAL" 
これも山本のオリジナル・バラード。こういうバラードの中にあってもビート感溢れる小美濃のベースが存在感を示しているので、甘さに流されることはない。
E"THE CLOOCKER" 
アップ・テンポでベースとギターが唸りをあげる。外連味のない演奏で好感が持てる。熱いバックアップに乗せられて山本もハードなヴァイブを披露している。
F"ISN'T IT ROMANTIC?" 
RICHARD RODGERSが書いたスタンダード一発。小美濃のベースは粗削りだけど、今後が楽しみだ。何よりも強靭なビートを持っているのが良い。
G"FOOTSTEPS" 
本アルバムの中に山本の書いたオリジナルが3つあるけど、いずれも芯の通った自己主張の強い曲だ。4ビートに乗ってグイグイ突っ走る。
H"I SURRENDER DEAR" 
ミディアム・テンポで各楽器が持ち味を出していていいね。
I"BOHEMIA AFTER DARK
-alt take-" ベーシスト・OSCAR PETTIFORDの書いた曲だけど、この人"TRICOTISM"(JAZZ批評 182.)という名曲も残している。

いわゆる、こういう正統派のジャズ、しかもアグレッシブな演奏にはヴィブラホーンは楽器として少し弱いかなと思っていたのだけど、聴いてみてさにあらず。十分に闘えている。しかも、か弱き美女の演奏とは思えない力強さを持っているのだ。この楽器の良さを見直した。それも4者の優れたアンサンブルがあればこそ!
このCDは良いオーディオ装置で、しかも、大音量で聴いてもらいたい音楽だ。スマホや携帯オーディオなどではその半分も良さがいかされてこないだろう。特に荒削りだけど強いビートを持った小美濃のベースワークにも注目してもらいたい。
主役に躍り出たヴィブラホーンの素晴らしさを再認識させてくれたアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.08.24)

試聴サイト:https://www.youtube.com/watch?v=ARi-_yrcW6k



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