YUKI FUTAMI TRIO
O. PETERSON色を薄め自分の色が出せるようになれば、面白い存在になるかも知れない
"BANZAI OSCAR"
二見勇気(p), 寺尾陽介(b), 西村匠平(ds)
2012年12月 スタジオ録音 (CADENZA : CADE-0005)
「期待度0%!? だけど、聴いたら凄かった・・・。」 こんな帯のコピーは見たことがない。
ジャズ通の友人と会って、最近の日本人若手ピアニストの不甲斐なさに話が及んだ。女子の活躍に比べ、男子が話題に上ること自体が少ないという話だ。誰か良いピアニストを知らない?と投げかけたのだ。
その翌朝のメールに書かれていたのがこの二見勇気。
勿論、初聴きである。1987年生まれというから、録音時で25歳だった。
「万歳 OSCAR」というからには全曲、OSCARの曲かと思っていたが,
さにあらず。本アルバムではPETERSONの曲が2曲、PETTIFORDの曲が1曲入っており、二見のオリジナルは3曲、その他3曲という構成になっている。
@"CREAM PIE" おおっ!若い男らしい活気のあるピアノ弾ける音色で始まる。流石にPETERSONを敬愛するだけに影響は強く受けているね。
A"ROCK OF AGES" 分かり易いブルース形式の12小節。ミディアム・テンポ以上では弾き倒すという傾向が強いのかも知れない。最近の一連のレビューを聴きながら思うのは、日本には無名だけど良いベーシストが多いってことだね。当然だけど、弦を弾いているものね。これが歳とってくるとテクニック優先で弦を擦るようになってアンプ頼りになってしまうのだから・・・。
B"GIRL TALK" 高音部を多用した煌びやかな演奏だ。
C"CAKEWALK" 19世紀に黒人の間で始まった、ケーキを賞品とした歩きぶりを競う競技があったらしいのだけど、それを指しているらしい。軽快で少々大げさな演奏ぶりが、いかにもPETERSON派らしい。
D"BODY AND SOUL" 一転して、スタンダードナンバーから。ここではリリカルなピアノ・プレイを披露している。
E"TRICOROTISM" PETIFFORDの書いた32小節の歌モノで大好きな曲のひとつ。いかにも、ジャズ・チューンってところが良い。併せて、PETER BEETSの"FIRST
DATE"(JAZZ批評 182.)も聴いてもらいたいアルバムだ。3者一体となってミディアム・テンポの4ビートを刻んで、実に心地よい。やはり「いいテーマにいいアドリブあり」だなあ。ベース〜ブラシへと繋いでテーマに戻る。
F"TAKE THE 4, 5, 6, TRAIN" 二見自身がニューヨークで良く使った地下鉄の路線名だそうだ。3人がバリバリに弾き倒すトラック。最後に西村のド迫力のドラム・ソロで終える。
G"SOUTHERN ISLAND" タイトルの如し、南国のリゾートに羽ばたいたか?砂浜での昼寝気分だそうだけど、その割には気ぜわしい。
H"HYMN TO FREEDOM" 「PETERSONと言えばこの曲、この曲と言えばPETERSON]と言われるほどのPETERSONの十八番。
Cまでは助走期間かな?バリバリ弾いてちょっと驚かしてやろうという魂胆が見え隠れする。確かに、良く動く指だ。
で、Dに一転してキラキラするようなバラードを持ってきた。PETERSONの好むパターンだね。
まだまだ勢いに任せて力ずくで弾いているので演奏に余裕がない。兎に角、せわしないのだ。PETERSON色を薄め自分の色が出せるようになれば、面白い存在になるかも知れない。 (2015.09.06)
試聴サイト:http://www.t-tocrecords.net/futami.html
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