独断的JAZZ批評 958.

YUKO OHASHI TRIO
寺島レコードの看板娘
これが3枚目のリーダー・アルバム
"TWO CHORDS"
大橋祐子(p), 佐藤忍(b), 守新治(ds)
2013年10月 スタジオ録音 (TERASHIMA RECORDS : TYR-1039)

4つ前に掲載した山本玲子 テンパス フィジットの"WILTON'S MOOD"(JAZZ批評 954.)と同じ"TERASHIMA RECORDS"の制作で、それより1年遡る2013年に録音されたアルバムである。
大橋は、謂わば、寺島レコードの看板娘で、これが3枚目のリーダー・アルバムに当たる。本アルバムのメンバーは第2弾からベースが変更になっており、木村将之から佐藤忍に替わった。ドラムスの守新治に変更はない。
僕は、新譜を試聴するときに先ずはスタンダード・ナンバーから聴くようにしている。スタンダードを聴けばおおよその実力が分かるというものだ。C、D、Eのセンスの良さはなかなかなものだ。

@"VAGABONDEN OCH SVAN" 最初を飾る美しい曲だ。
A"SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD" 
邦題に「時には母のない子のように」とついている。ブルース・フィーリングたっぷりでなかなかいいね。
B"WHITE LADY" 
カクテルの名前らしい。ミディアム・ファーストの軽快なワルツだ。
C"I'LL CLOSE MY EYES" 
スタンダードをゆっくり目のバラードで。こういう誰もが耳にしている曲をスローで演奏するのは勇気がいるよね。奇を衒わないところがいいね。実力の証だと思う。
D"AROUND THE WORLD" 
「80日間世界1周の旅」であるが、この高速アップテンポでは8日間で周ってしまいそうだ。こういう高速4ビートでも「間」を持っているのがいいね。
E"BEAUTIFUL LOVE" 
VICTOR YOUNGの書いた名曲。ここでも果敢にスローで挑戦している。いつの間にか指を鳴らしているものね。歌心あるなあ!強靭な佐藤のピチカートが華を添える。 
F"TWO CHORDS (take 1)" 
大橋自身の解説によると、イタリアのPIETRO BASSINIというピアニストの曲でイントロとエンディング以外にGとA♭しか使用しない上にメロディーもないとのこと。自由すぎるというか、即興能力を試されるというか・・・。スパニッシュ系の激しい演奏だ。聴いてのお楽しみ。
G"TOMORROW" 
大橋のオリジナル。覚えやすくて親しみやすい曲。何も難しいばかりが能じゃない。
H"HAPPY HOUR" 
激しい曲だ。男勝りのピアノ・プレイも出来るというところをみせたいわけではないだろうが・・・。
I"WALTZ PART 3" 
3者が逞しく織りなすワルツ。
J"HOME ON THE RANGE" 
「峠の我が家」 歳取ってくるとこういうのが偉く沁みてくる。
K"TWO CHORDS (take 3)" 
Fの別テイク。聴き比べするのも良いかもしれない。イントロ部分が大人し目のこのトラックとのアドリブの差はあまり感じないなあ。

寺島レコードは大きなスピーカーで大音量で再生するように音の設計がなされているのだと思う。人によっては音が誇張されていると感じる人もいるだろう。イヤホンやヘッドホーンでチマチマ聴いていたら駄目だ。是非、素晴らしいオーディオ環境で聴いてもらいたい。
日本女子ピアニストの活躍には目を見張るものがあが、「寺島レコード」には、今後も未だ無名に近いジャズ・プレイヤーにスポットライトを当て続けて欲しいものだ。    (2015.08.31)

試聴サイト:http://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ131016-01




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