RICHARD DAVISという個性的なベーシストを
メンバーに迎えることにより、
非常に印象的なアルバムに仕上がった
"MICHEL SARDABY IN NEW YORK"
MICHEL SARDABY(p), RICHARD DAVIS(b), BILLY COBHAM(ds),
RAY BARRETTO(perc), 1972年スタジオ録音(SOUNDHILLS SSCD-8079)

最近、MICHEL SARDABYの1990年録音盤"NIGHT BLOSSOM"が再発売された影響で、僕も"IN NEW YORK"を買い直してみた。LP盤は愛聴盤だったが、今、改めてCDを聴くと買い直してよかったと納得がいく。

ピアノ・トリオにおいてはベースの良し悪しが、そのアルバムの良し悪しを決めてしまうほどの重要ファクターだと思っているのだが、流石 RICHARD DAVIS。力強く個性的なサポートはDAVISならではのもの。1966年録音のEARL HINES TRIO(JAZZ批評 44.)の頃と同様の若々しくも脂の乗った演奏が聴ける。

1曲目"THE PANTHER OF ANTIGNY"。いきなりDAVISの太いベースで始まり、ピアノがテーマで絡みだす。伸びやかでビート感溢れるウォーキング・ベースが印象的。このベースの音にピアノの音が負けてしまっているのが残念。録音のバランスがチト悪い。
次の"SONG FOR MY FATHER"は文字通りのワルツ曲。ここでもベースの唸り声が聴ける。

3、4曲目にはパーカッションのRAY BARRETTOが加わり、曲想が一変している。"LOVE LOVE AND DREAM"では軽やかなコンガのリズムに乗ってピアノが気持ちよさそうに歌う。都会的なお洒落な雰囲気を醸し出している。DAVISの個性的なベース・ソロが堪能できる。
4曲目"MARTINICA"はラテン・ビートの軽快なリズムに乗ってピアノもベースも大いに乗りまくる。
次が一転してスローバラードの"SOMEONE CAME INTO MY LIFE"。情感たっぷりにSARDABYのピアノが歌う。また、聴きたくなる出来映え。

最後の6曲目はCOBHAMの長いドラム・ソロの後にコンガが加わり、続いてベースという具合に、徐々にピアノの出番に向けて場を盛り上げていく。約10分の演奏の内ピアノが登場するのが6分を過ぎてから。いきなりハイテンションでピアノが加わり一気に頂点に向かって走り出す。実験的性格の強い演奏。

このアルバムはRICHARD DAVISという個性的なベーシストをメンバーに迎えることにより、SARDABYのピアノも触発されて非常に印象的なアルバムに仕上がった。もし仮に、違うベーシストなら何の変哲もない印象のアルバムに終わったのではないだろうか。    (2002.08.31.)


MICHEL SARDABY

独断的JAZZ批評 91.