独断的JAZZ批評 946.

KANJI OHTA
どこか懐かしく、どこか心に沁みるアルバム
"THIS IS NO LAUGHING MATTER"
太田寛二(p), DAVID WILLIAMS(b), LEROY WILLIAMS(ds)
2013年12月 スタジオ録音 (JZAZ RECORDS)

太田寛二は初めて聴く。1959年生まれの56歳だ。専ら、関東圏を中心にライヴ活動を行っているバップ・ピアニストらしい。
メンバーにあのLEROY WILLIAMSが参加しているのも嬉しいではないか。LEROYと言えば、BARRY HARRISとの共演歴が長く、古くは1969年録音の"MAGNIFICENT!"(JAZZ批評 92.)や1996年の"FIRST TIME EVER"(JAZZ批評 20.)などの名盤に参加している。1937年生まれというから録音時には75歳になっていたんだ。
DAVID WILLIAMSは長らく、今は亡きCEDER WALTONのグループでやっていたそうだ。
ピアニストもサイドメンもバップ・テイスト、加えて、選曲も往年のバップ・チューンがズラリと並んでいる。

@"CONFIRMATION" BARRY HARRISには同名タイトルのライヴ・アルバム(JAZZ批評 186.)があり、これはKENNY BARRONとのツー・ピアノになっている。こういう曲が入っているのは嬉しい限りだ。
A"HOLY LAND" 
CEDAR WALTONの曲だけど、これも良く演奏される曲。AL HAIGの"INVITATION"(JAZZ批評 47.)も参考までに。テーマに続くDAVIDのベース・ソロは太くて逞しい。良い音色だ。首でも振って、指でも鳴らせば最高さ!
B"THAT OLD BLACK MAGIC" 
太田のピアノは若々しい演奏で、勿論、指のもつれもなくて実に滑らか。往年のHARRISは結構、指がもつれていたからなあ!
C"THIS IS NO LAUGHING MATTER" 
今度はしっとりバラード。難しいことは何もいらない、シンプルそのままが良い。
D"IN WALKED BUD" 
T. MONKの曲。軽快なブラシ・ワークが最高。ベースがズンズン4ビートを刻んでピアノが躍る。堪りませんなあ!
E"WEE" 
往年の名ドラマー・DENZIL BESTが書いた曲。これもバップ・チューンとして良く採用される。アップ・テンポでグイグイ進む。3者のアンサンブルも良くて、何よりも楽しげだ。
F"DANCE OF THE INFIDELS" 
B. POWELLのミディアム・テンポのブルース。ベース・ソロ〜ドラムス・ソロを挟んでテーマに戻る。
G"SPRING IS HERE" 
スタンダードからRICHARD RODGERSの曲。原曲の良さをそのままに、何も足さない、何も引かない。これで十分。
H"JUMP CITY"
 最後はやはりこの人の曲で!BUD POWELLのご機嫌な1曲。プレイヤーの楽しさが伝わってくるのがいいね。

何の予備知識なしにいきなりこのアルバムを聴かされたら、若いころのBARRY HARRISの演奏と見紛うのではなかろうか?
HARRISと同世代のいぶし銀のサポート陣に支えられて、ピアノを弾くのが楽しくてしょうがいないというピアニストがここにいる。多分、念願叶ってのニューヨーク録音。
若かりし頃のBARRY HARRISの演奏をより若々しく、より滑らかに弾いて、自分自身も十分楽しんだ。どこか懐かしく、どこか心に沁みるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.07.04)

試聴サイト:http://rippletunes.com/album/Kanji-Ohta/This-Is-No-Laughing-Matter/978801701/t0



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