心の内側から楽しさが染み出てくる1枚
"CONFIRMATION"
BARRY HARRIS, KENNY BARRON(p), RAY DRUMMOND(b), BEN RILEY(ds)
1991年9月 ライヴ録音 (CANDID TECW-20710)

このアルバムは2ピアノのカルテットという構成になっている。僕の大好きなBARRY HARRISとKENNY BARRONがいっぺんに聴けてしまうという有難さ。
BARRY HARRISは40年以上もジャズ・ピアノに君臨するハード・バップの大御所だし、KENNY BARRONも最近、絶好調で、楽しみな組み合わせとなっている。録音は1991年であるから、KENNY BARRONについて言えば、今ほど売れていなかった。丁度、この年の8月に今をときめく"THE MOMENT"(JAZZ批評 26.)を世に出しており、以降、脚光を浴びることになる。リズム陣は同年1月に録音された"LEMURIA-SEASCAPE"(JAZZ批評 61.)と同じRAY DRUMMOND(b)と BEN RILEY(ds)がサポートしている。

このアルバムは2台のピアノ演奏が同時に聴ける、いわば、ピアノ・バトルが楽しめるアルバムになっている。センターを中心に少し右チャンネルから聞こえるのがKENNY BARRON。音に艶があり明るく軽快。対して少し左チャンネルから聞こえるのがBARRY HARRISで、無骨ながらもバップスタイルを貫いている。
いわば、ジャズの定番ともいえるスタンダードがたっぷりと入っており、ライヴ録音と相俟ってリラックスした演奏が楽しめる。"ANNUAL RIVERSIDE PARK ARTS FESTIVAL"とあるのでフェスティバルでのライヴ録音である。
こういったライヴというのは、聴衆は演奏が始まるまでに充分テンションが高揚した状態になっているが、CDのリスナーの場合はそうはいかない。このギャップを埋める作業が必要だと思う。手っ取り早いのはアルコールを一杯グイッとやることだ。自らのテンションを高めて聴けば、このライヴの雰囲気もノリも堪能できるというものだ。                    

@"CONFIRMATION" C.PARKERの名曲。聴く側のテンションが低いと、うるさいとか、やかましいという評価になってしまう。最初のうちは、確かにピアノが2台というのはベース、ドラムスの1台に対してバランスが悪いと感じてしまう。
A"ON GREEN DOLPHIN STREET" 心地よい4ビートが刻まれるようになって、ホッとする。
B"TENDERLY" 聴く方もそろそろノッテきた。ミディアム・テンポの4ビートに乗って小粋な曲の小粋な演奏を楽しみたい。

C"EMBRACEABLE YOU" メロディをとるピアノがころころ変わるが、BARRONのバッキングがお洒落だ。この辺の引き立て方は実に上手い。アドリブではHARRIS→BARRONの順に進むが、HARRISが哀愁のあるソロをとり、その後、BARRONが艶と切れのあるソロをとる。エンディングではユーモラスな二人の掛け合いに聴衆の笑い声が聞こえてくる。
D"ALL GOD'S CHILLUN' GOT RHYTHM" ブギウギ調の楽しいイントロでスタート。アップ・テンポに乗ってゴリゴリ演奏する。
E"BODY & SOUL" ここでもリラックスしたイントロの後にピアノの会話が始まる。BARRONのノリノリのソロが良い!小粋なBARRONと渋さのHARRISといったところか。

F"EAST OF THE SUN" この辺まで来ると2ピアノの快さに酔いしれることが出来る。リズム陣の堅調なサポートにのって、歌いまくる。ライヴならではの遊び心もたっぷり。
G"OLEO" 超高速の演奏。RILEYのドラム・ソロもご機嫌だ。拍手鳴り止まず。
H"NASCIMENTO" 聴衆と一体になったステージ。ついには全員で歌まで歌いだす。
 
聴衆と一体となったリラックスした演奏が楽しさを倍増させてくれる。こういう演奏に対処するには聴く側もハイテンションになること。アルコールを一杯入れるのもいいだろう。これ、楽しく聴く秘訣。心の内側から楽しさが染み出てくる1枚。   (2004.03.21)



.
BARRY HARRIS / KENNY BARRON

独断的JAZZ批評 186.