独断的JAZZ批評 945.

ROBERT GLASPER
まるで気の抜けたビールのようだ
"COVERED"
ROBERT GLASPER(p), VINCENTE ARCHER(b), DAMION REID(ds)
2014年12月 スタジオ・ライヴ録音 (BLUE NOTE : 0602547245700)

第55回グラミー賞、第57回グラミー賞を立て続けに受賞したROERT GLASPERの最新アルバム。「久しぶりにピアノが恋しかった」ということでアコースティックなピアノ・トリオの編成となっている。
一方で、メインストリームのR & Bのファンも失いなくないということで「二兎を追った」アルバムとなっている。どちらかというと手の届かないところの存在だったGLASPERがジャズ・シーンに歩み寄ったということだろうか。
ニューヨークのミュージック・シーンの革命児と言われようが、どんなに賞を取ろうが、今この目の前の作品が良いか悪いか?それが全てだ。

@"INTRO" 
A"I DON'T EVEN CARE" 柔らかいトーンのピアノ。増幅でモゴモゴのベース音。まるでエレキ・ベースだ。
B"RECKONER" 
盛り上がることなくフェード・アウト。
C"BARANGRILL" 
ちょっと拍子抜けするほどリリカルで穏やかな演奏が続く。
D"INCASE YOU FORGOT" 
今度は抽象画風のアプローチ。途中で美しいメロディが挿入されるが瞬時に抽象的プレイに戻る。おちょくってるわけではないよね?REIDの長めのドラム・ソロがフィーチャーされる。
E"SO BEAUTIFUL" 
確かに美しい曲だ。
F"THE WORST" 
タイトルほどに最悪ではなくて、これもリリカルな美しい曲だ。
G"GOOD MORNING" 
なんて爽やかな演奏なのだ。ヒップ・ポップやR & Bの片鱗も感じない。まるでポップスのよう。フェード・アウト。
H"STELLA BY STARLIGHT" 
スタンダード・ナンバーを一捻り。
I"LEVELS" 
哀愁を帯びたリリカル演奏だ。
J"GOT OVER (FEATURING HARRY BELAFONTE)" 
聞こえるのはHARRY BELAFONTE本人の肉声らしい。
K"I'M DYING OF THIRST"
 今度は女の子の声だ。

一体このアルバム、何なの?というのが偽らざる心境だ。これがニューヨーク・ミュージック・シーンの最先端の音楽なのか?
全編、心地よい穏やかな演奏に覆われている。実に耳に優しい音楽だ。まあ、通常のピアノ・トリオという枠を確かに外れている。故に、革命児なのか?
多分、賛否両論あるだろう。「好き」と「嫌い」に二分されるに違いない。僕?勿論、後者。何故なら、美しいだけで燃えたぎる躍動感も心通わす親密感もない。まるで気の抜けたビールのようだ。
トリオと言いつつもGLASPERのワンマン・トリオだ。ベースとドラムスは、ROBERT GLASPERを支えるサポート役に過ぎない。   (2015.07.01)

試聴サイト:https://www.youtube.com/watch?v=Lsl4TW3Hm1o



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