独断的JAZZ批評 894.

STEFANO BOLLANI
意外と「するめ盤」かもしれない
"JOY IN SPITE OF EVERYTHING"
STEFANO BOLLANI(p), JESPER BODILSEN(b), MORTEN LUND(ds)
MARK TURNER(ts), BILL FRISELL(g)
2013年6月 スタジオ録音 (ECM : ECM 2360 3784459)

STEFANO BOLLANI名義の久しぶりのアルバムである。前回紹介したのが、2008年録音のトリオ作"STONE IN THE WATER"(JAZZ批評 578.)以来であるから、なんと6年ぶりということになる。その間には、CHICK COREAとのデュオ・アルバム、2010年録音の"ORVIETO"(JAZZ批評 719.)があるが・・・。
BOLLANI〜BODILSEN〜LUNDのトリオ作では何と言ってもBODILSEN名義の"MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.)と3者連名の"GLEDA"(JAZZ批評 264.)を推挙したい。いずれも3者の躍動感あふれる濃密なインタープレイが聴ける。
翻って、本アルバムではサックスのMARK TURNERとギターのBILL FRISELLが共演という異色のクインテットだ。

@"EASY HEALING" あっと驚くカリプソ風!このメンバーからこんなサウンドが出てくるとは夢にも思わなかった。確かに「癒し系」だね。何とも、ハッピーな雰囲気だ。
A"NO POPE NO PARTY" 
"POPE"とは「ローマ法王」のことらしい。何やら、ユーモアと剽軽な音楽に仕上がっているが、演奏自体は4ビートをズンズン刻んで進む。丁々発止のインタープレイもあり楽しませてくれる。
B"ALOBAR E KUDRA" 
これはトリオの演奏。BOLLANIの変幻自在で伸びやかな演奏が聴けていいね。
C"LAS HORTENSISAS" 
ベースとブラシとピアノにテナーが絡むバラード。このトラックの主役はベースのBODILSEN。この後、テナーがフィーチャーされるが、曲自体が手の込んだ曲なのでメロディアスなテナーとはならない。ギター・レス。
D"VALE" 
ギターを加えたクインテットの演奏に戻る。静かな曲であちらこちらに空間があって、その空間をひとつひとつ埋めていくかのようだ。本アルバムの最長トラックで12分と20秒。
E"TEDDY" 
FRISELLとBOLLANIのデュオ。メロディアスな面とアブストラクトの中間を行くような演奏だ。段々興が乗ってきて、テンションが高くなっていくのが分かる。
F"ISMENE" 
テナー・レスのカルテットの演奏だ。ギターがフィーチャされた素晴らしいアンサンブルは大河の流れのようでもある。
G"TALES FROM THE TIME LOOP" 
この演奏を聴いていると、PAT MRTHENYのUNITY BANDやUNITY GROUPの演奏を想起してしまう。編成もよく似ているし、恐らく、それは意識されているだろう。
H"JOY IN SPITE OF EVERYTHING"
 トリオで躍動してグイグイ突き進む。このドライヴ感がいいね。やはり、百戦錬磨のトリオの演奏がキラリと光っている。BOLLANIの真骨頂とも言うべき演奏で、本アルバムのベスト。

75分を超える長尺のアルバムである。1曲平均8分以上というのは珍しいほどの長さではなかろうか?1時間15分もあるので、兎に角、長いという印象が先に立ってしまう。半分くらいずつに分けて聴いた方が良いかもしれない。また、フォーマットもデュオ、トリオ、カルテット、クインテットと色々。
全体を俯瞰してみるとECMレーベルにしてはやけに明るい。陽気で破天荒なBOLLANIの明るさが乗り移ったのかもしれない。
本アルバムは意外と「するめ盤」かもしれない。何回も繰り返し聴いているうちに段々良くなってきた。   (2014.08.31)

試聴サイト : https://www.youtube.com/watch?v=aHVjqpdOnBE
参考サイト : https://www.youtube.com/watch?v=bNnkHRLl3_0



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