独断的JAZZ批評 893.

IGNASI TERRAZA TRIO
上手く言えないが、整理整頓が行き過ぎた感じと言っていいだろうか!?
"IMAGINANT MIRO"
IGNASI TERRAZA(p), HORACIO FEMERO(b), ESTEVE PI(ds)
2014年2月 スタジオ録音 (SWIT RECORDS : REF. SWIT17)


IGNASI TERRAZAのアルバムとしては2003年録音の"IT'S COMING"(JAZZ批評 192.)を以前、紹介している。スペインのピアニストらしくバルセロナの空のように青く澄み切った演奏だった。
実は、このTERRAZAは盲目のピアニストなのだが、天性の陽気で明るい性格なようでどのトラックでも憂いのない演奏を聴かせてくれる。
本アルバムは、ワシントンで開催されたモノグラフィック展覧会においてJOAN MIROの絵画作品からインスパイアーされたオリジナル曲で構成されたという。その模様を写したYouTubeによれば、メンバーが手を携えて盲目のTERRAZAを導いている様子が映っている。目が見えなくても耳や指からの感触で全11曲を描き切ったのであろう。11曲全てがTERRAZAのオリジナルで、アレンジも全てTERRAZAが手掛けた。

@"IMAGINANT MIRO" アドリブでのミディアムテンポの4ビートが実に心地よい。こういうスイング感は捨て難い。ジャズの原点だ。
A"EL SEGADOR" 
フォークソングのようなテーマ。躍動感のある演奏だ。
B"NOCTURN" 
手を変え品を変えて色々な曲想にチャレンジしている。
C"POLARITATS" 
今度はベースでスタート。メランコリーな曲想のブルース。こういう1曲が用意されているのは嬉しい限りだ。
D"NOIA, JACINTS I FUTBOL" 
と思えば、高速4ビートでベースとドラムスもちゃんと引き立てている。
E"VAN GOGH" 
勿論、バン ゴッホからのインスパイアであろう。やけに格好いいテーマとアレンジなのだ。
F"IMPROVISACIO SERIAL" 
3人による抽象画的インプロビゼーション。
G"DANCA TRIBAL" 
愛らしさを持ったテーマ。ベースのFEMEROが良く歌っているし、素手で叩きだすPIのプレイも楽しい。
H"CARICIES SINUSOIDALS" 
揺蕩うメロディーと美しいアンサンブル。ハンモックに揺られながら聴いてみたい!
I"ESPIRALS COSMIQUES" 
一癖あるテーマから、アドリブでは高速4ビートを刻んだかと思うとテンポダウンしてなかなか面白い。
J"DUKE'S VISIT" 
DUKEとはELLINGTONのことだろうか?最後を締めるバラード。 

本アルバムはいっぺんに色々な味付けを楽しめるバイキング料理みたいなものだ。
明るさと屈託のない伸びやかな演奏はTERRAZAの真骨頂とも言えるだろう。3者のバランスも良いし、コミュニケーションも良い。アレンジに相当拘った演奏だ。
一方で、てんこ盛りの感じがしないとは言えない。とても良いアルバムだとは思うのだけど、もうひとつ掘り下げた深みというか、逆に、本能の赴くままの素の演奏を聴いてみたいとも思った。少々、頭でっかちにあれやこれやを詰め過ぎたのかもしれない。上手く言えないが、整理整頓が行き過ぎた感じと言っていいだろうか!?   (2014.08.27)

試聴サイト : http://www.amazon.com/Imaginant-Mir%C3%B3-Ignasi-
Terraza-Trio/dp/B00L6GFT8U

        



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