JAKOB DINESEN
余計な小細工がなければ、上質感のあるジャズ・アルバムに仕上がったと思う
"P.S. I LOVE YOU"
JAKOB DINESEN(ts), DARIN PANTOOMKOMOL(p:@,B,D,F,H), ANDERS AC CHRISTENSEN(b:@,B,D,F,H),
JAKOB HOYER(ds:B,D,F,), MAGNUS HJORTH(p:E), PER MOLLEHOJ(g:A,C,G), HUGO RASMUSSEN(b:A,C,G), STRINGS QUQRTET(@,B,D,F,H)
2013年?月 スタジオ録音 (CLOUD : DDCJ 4013)
末尾に書いたYouTubeのPVを聴いて、そのしっとり感と上質感、加えて、美しい映像のマッチングを観てゲットしたアルバムだ。コペンハーゲンの美しい街並みの映像と共に何回も繰り返して聴いたものだ。テナーとギター、ベースの変則トリオ。
本アルバムは元々はSTUNT RECORDSから"YASMIN"というタイトルでリリースされたものだが、これにMAGNUS
HJORTHとのデュオをボーナス・トラックとして加え、上記のタイトルでCLOUDレーベルからリリースされた国内盤である。
手に入れてみて初めて分かったのであるが、ライナーノーツによれば、@,B,D,F,HはテナーのDINESENとタイのピアニスト・PANTOOMKOMOLとのデュオ演奏だったらしい。このフォーマットに、デンマークのプロデューサーの一声でアフレコでベース、ドラムス、ストリングスがオーバーダビングされたという。
そもそもアレンジされたストリングスと、インプロヴィゼーションのジャズとは馴染まない性格のもので、これを無理やり後から追加したというのはいかがなものか。「馬子にも衣裳」という意図で化粧まで施してみたのだが、その結果、原曲の心温まるデュオがまるでムード・ミュージックになってしまった!
STUNT RECORDSと言えば北欧の名門レーベル。かつては、STEFANO BOLLANI(JAZZ批評 210.、264.), CARSTEN DAHL(246.), KASPER VILLAUME,(243.) MAGNUS HJORTH(555.)など気鋭の若手を起用して刺激的なアルバムを提供してくれたものだ。あの頃の精神はどこに行ってしまったのだろう?
@"THAT'S ALL" ピアノとテナーのデュオで始まるがオーバーダビングでベースとストリングスが追加された。全く、余計なことをしてくれたもんだ。デュオで十分!
A"YASMIN" DINESENの奥さんと赤ちゃんにに捧げた曲。軽快なボサノバ・タッチ。ベースとギターのトリオだが、ギターがキー・ポイント。
B"ONLYEST WAY" デュオの部分だけ十分。
C"P.S. I LOVE YOU" 何と言っても、本アルバムのベスト。何回聴いても聴き飽きない。ギターがとてもいい味出していて優しくて切ない。
D"LUSH LIFE" これもデュオで十分。ストリングスは余分だ。
E"BETWEEN TWO MOODS" 日本盤のボーナストラック。MAGNUS HJORTH(p)とのデュオ。ピアノとテナーの会話が楽しめる。静かに熱い。流石のMAGNUS。
F"TENDERLY"
G"BUSH BABY" ベースがワルツを刻みギターがバッキング。ユーモアのあるDINESENのテナーが聴ける。
H"THE BAND" オーバーダブじゃあ、名手CHRISTENSENだって興が乗らないでしょう!
最初にも書いたが、本アルバムのベスト・トラックはテナーとギター、ベースのトリオによるタイトル曲"P.S. I LOVE YOU"。優しくて切なくて何回も聴き返したものだ。
偶数トラックはトリオとデュオで構成されているが、奇数トラックはオーバーダビングでベース、ドラムス、ストリングスなどが追加されている。美味しいワインと料理を嗜みながらバックグランドで聴けばより一層料理を引き立ててくれるだろう。
欲を言うと、余計な小細工がなければ、上質感のあるジャズ・アルバムに仕上がったと思う。それが惜しい! (2014.07.16)
試聴サイト : https://www.youtube.com/watch?v=24mRAjWmbCQ
http://politiken.dk/kultur/musik/cd-jazz/ECE2324923
/mainstream-udgivelser-faar-jazzen-til-at-spire-af-liv/
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