独断的JAZZ批評 888.

TERUO GOTO & JUN SATSUMA
これほどシンプルで心に染み入る演奏もそうそうないだろう
"BUT BEAUTIFUL"
後藤輝夫(ts), 佐津間純(g)
2012年2, 3, 5月 スタジオ録音 (KAMEKICHI RECORDS : KAME011)

前掲の"P.S. I LOVE YOU"(JAZZ批評 887.)のテナーサックスとギターの組み合わせというのもなかなか良いもんだと思っていた矢先に、フッと出現したのが本アルバム。全く知らないプレイヤー二人だったが、YouTubeの試聴サイトを聴いたら購入する気になった。
兎に角、録音が素晴らしい!第20回日本プロ音楽録音賞ベストパフォーマー賞を受賞したアルバムらしい。実にオーソドックスなテナーとギターのデュオ・アルバムである。二人の演奏以外に何も加えないし、何も引かない録音だ。
温かみのあるテナーサックスと優しさとオーソドックスなギターがいいね。これほどシンプルで心に染み入る演奏もそうそうないだろう。
それと選曲が嬉しいではないか。バラード系のスタンダードがズラリと並んだ。美味しいワインでも口に含みながら聴いていたい!


@"TEACH ME TONIGHT" 目を閉じてじっくり聴いてみよう!これだよね!解説必要なし。デュオってこんなにも心通うモノなんだ。
A"MOONLIGHT IN VERMONT" 
この曲を聴くとWYNTON KELLYの"COMPLETE BLUE NOTE TRIO SESSION"(JAZZ批評 423.)に入っている演奏を思い出す。
B"MY ONE & ONLY LOVE" 
ギターの音色が沁みるなあ!
C"OUR LOVE IS HERE TO STAY" 
学生時代のバンドのテーマ曲だった。そっと寄り添う佐津間のバッキングが最高!
D"BUT BEAUTIFUL" 
この曲というと、KENNY WERNERとJENS SONDERGAARDの"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)の中に入っている演奏も併せて聴いてもらいたい。
E"LIKE SOMEONE IN LOVE" 
一音一音を味わってほしい。
F"THE THINGS WE DID LAST SUMMER" 
嬉しいなあ!この選曲は。奇を衒わない佐津間のギターがいいね。こういうのがいいんだ。
G"ROUND ABOUT MIDNIGHT" 
H"TRES PALABRAS" 
ド演歌になる一歩手前でグッと堪えたのは佐津間のギターのお蔭かな?
I"BODY & SOUL" 
自然体なり。
J"LITTLE GIRL BLUE" 
K"DANNY BOY" 
最後を締めるに相応しい「ダニー・ボーイ」 ただただシンプル。これがいい。

60歳を超えたサックスプレイヤー後藤輝夫と30歳を少し超えたギターリスト佐津間純のデュオは野性と知性の組み合わせでもある。
本アルバムには良い音色で良いデュオ演奏を記録したいという制作者とプレイヤーの意気込みを感じる。シンプルでひたすら良い音色を追求した結果の産物である。
日本にはこうしたアルバム制作が散見される。最近では、大石学の自主制作のアルバム"EARTH SONG"(JAZZ批評 863.)や後藤浩二の"ONTOLOGY"(JAZZ批評 875.)もそうした一枚であろう。
そんなに数多くは売れないかもしれない。「売れる」ことよりも「いい音色のいい音楽を世に出したいという一心が優先されているアルバム」ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
CD価格3000円は少々高いと感じるが、それに余る価値を感じさせてくれるアルバムでもある。   (2014.07.26)

試聴サイト :
 https://www.youtube.com/watch?v=B6OAvxQBKXw



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