独断的JAZZ批評 879.

MIKE DiRUBBO & LARRY WILLIS
聴き慣れてくるとかえって味の良いデュオに変貌していた
"FOUR HANDS, ONE HEART"
MIKE DiRUBBO(as), LARRY WILLIS(p)
2010年5月 スタジオ録音 (KSANTI RECORDS : KSR001)


かつて、"SIX HANDS THREE MINDS ONE HEART"(JAZZ批評 322.)という大傑作があった。リーダーはベースのMADS VINDINGでピアノがCARSTEN DAHL、ドラムスがALEX RIELという布陣で丁々発止の演奏を聴かせてくれた。あまりにタイトルが似ているので紹介したが、フォーマットが違っても"ONE HEART"であることが二つのアルバムの共通認識だ。
MIKE DiRUBBOは初めて聴く。DiRUBBOは1970年のアメリカ生まれ。最初はクラリネットから初めてアルト・サックスに持ち替えたという。このプレイヤー、JACKIE McLEANに師事したというが兎に角、音色がいい!これはDiRUBBOにとっては大きな武器だ。
ピアノのLARRY WILLISは1942年生まれというからもう72歳になる。ジャズ、フュージョン、ロック、はてはアバンギャルドまでこなすベテラン・ピアニストだ。

@"INTROSPECTION" 先ず、DiRUBBOのアルト・サックスの音色がいいね。御大JACKIE McLEANに師事したというが、若々しくて艶のある音色だ。この音色こそ、このプレイヤーの武器だ。最初のうちは少々無骨なWILLISのピアノとは違和感を感じていたが、何回も聴いているうちに馴染んできた。
A"PRISTINE" 
J. COLTRANEの曲。朗々と歌い上げるアルトが逞しい!流麗とは言い難いWILLISのピアノがDiRUBBOのアルトを際立たせているのかもしれない。
B"THE MAJI" 
今度はWILLISの曲。デュオというフォーマットは余分なものが多すぎてもいけないし、少な過ぎてもいけない。丁度良い塩梅で語り合うことが必要なフォーマットだと思っている。その絶妙な加減がいいね。
C
"'ROUND MIDNIGHT" T. MONKの大傑作チューン。極端なテーマ崩しは行っていない。ここではWILLISが味のあるプレイを披露している。デュオとしては長めの11分半。
D"STAR EYES" 
こういうスタンダードが入っているのが嬉しい!伸びやかなアルトの音色に身を任せよう!
E
"PEACE" スタンダード化されつつあるH. SILVERの佳曲。美しいバラードを小細工なしに堂々と歌い上げている。心に沁みる10分!
F"MILESTONE" 
M. DAVISの曲まで入っいて、嬉しいね。思えば、ジャズを聴きだして最初に買ったLPがM. DAVISの"MILESTONES"だった。もう45年も前の話だけど・・・。懐かしさが込み上げてくる。
進むほどにテンションが高くなってきて丁々発止の掛け合いとなる9分と30秒。
G"ALONE TOGETHER" 最後を締めるスタンダード。アーシーなイントロで始まる。テーマのアルトに絡むピアノのアレンジに味がある。あっという間に終わってしまう11分と40秒。

基本的にデュオは好きなフォーマットだ。
サックスとピアノのデュオというと、少し前のGEORGE ROBERT & KENNY BARRON "PEACE"(JAZZ批評 147.)や、KENNY WERNER & JENS SONDERGAARD "A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)を、最近ではGIANLUCA LISI & JOEL HOLMESのデュオLOOSE"(JAZZ批評 788.)が思い起こされる。
本アルバムはデュオの割には曲数が少なくて1曲あたりの演奏時間が長めだ。10分以上の演奏時間が
CEGの3曲もある。だからって聴き飽きることはない。
最初は少々の違和感を感じていた
「流麗とは言い難い」WILLISとの組み合わせも、聴き慣れてくるとかえって「味の良いデュオ」に変貌していたということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。    (2014.06.07)

試聴サイト : http://mikedirubbo.bandcamp.com/album/four-hands-one-heart 
    
      このサイトでは全曲、フルに試聴できる。



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