PHRONESIS
他に類を見ない個性的なグループ、個性的な演奏である
"ORGANIC WARFARE"
MAGNUS HJORTH(p), JASPER HOIBY(b), ANTON EGER(ds)
2007年2月 スタジオ録音 (LOOP RECORDS : LOOP1003)


このアルバムはベーシストのJASPER HOIBYがリーダーであるが、僕が注目したのはピアニスト、MAGNUS HJORTHだ。つい先日、紹介したHJORTHの"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)をご記憶の方も多いと思うが、そのHJORTHがサイドメンとして参加しているアルバムだ。先の"LOCO MOTIF"が2006年の12月録音に対して、このアルバムは3ヵ月後の2007年2月に録音されている。
全ての曲がHOIBYの書いた曲で、しかも、HOIBYがリーダーなので、ここでの演奏はHOIBY色に染まっているといってよいだろう。

@"UNTITLED#1" 
2分強のイントロ的導入部。これからの60分間を期待させるに十分なイントロだ。
A"ORGANIC WARFARE" 
難しいテーマだ。こんなの口ずさめたら、そりゃあ、天才的だ。往々にしてこういう難しいテーマの後はアドリブも無機質な演奏になったりするものだが、3者の躍動感がそれを凌駕している。
B"FRENCH" 
これも難しいテーマだ。全然メロディックでないので口ずさもうなんて「夢のまた夢」だ。ハードボイルドを地でいったようなベース・ワークが逞しい。
C"MELODY" 
ピアノとベースのユニゾンで奏でるタイトル通りのメロディックなテーマ。少々手数の多いドラミングではあるが効果的な装飾を与えている。
D"SMOKING THE CAMEL" 
ダイナミズム溢れる演奏。EGARのドラム・ソロが用意されているが、メロディックで多彩なドラミングを披露している。続くHOIBYのベース・ソロもグルーヴィだ。太くて重いアコースティックな音色がいけるね。

E"SEVEN FOR SAMBA" 
抽象画的インタープレイから清涼的アンサンブルにシフトしていく。
F"THREE BAR LOOP" 
数えてはいけない。流れ出る音楽に身を任せよう。
G"MOURNFUL" 
これも変拍子。
H"'4 NOW'" 
こういう曲が最もこのグループらしい演奏といえるかも。ダイナミックなテーマ、力強くも透明感のある演奏。決め事もピタリと決まり、それでいて、3者の個性も見事に発揮できている。
I"UNTITLED#2" 
陰影が深くて哀愁のあるテーマ。ベースの力強いソロにピアノとドラムスが絡み始めると躍動感が増して、スリリングな展開となる。
J"NATIVE TUNE"
 

ベースがリーダーのアルバムなので、ある程度、ベースが前面に出てくるのは仕方のないことだろう。このHOIBYは太い音色と強靭なピチカートが魅力だ。全ての曲がHOIBYの曲ということで、アルバムとしての統一感はあるものの似たような曲想が多い。いわゆる4ビートジャズは皆無だ。モーダルで変拍子、しかも、3者の決め事が多いアレンジとなっているが、どれもピタリと嵌っている。
リラックスして「ながら聴き」するようなジャズとは言えない。むしろ、真正面から対峙して欲しいアルバムで、その分、聴き疲れする。体力、気力が充実していないと途中で放り出したくなるかも・・・。
僕が注目したピアニスト、MAGNUS HJORTHはどちらかというと控えめではあるが、与えられたHOIBYの制約の中で存在感豊かな演奏をしている。そのことはドラムスのEGERにも言え、3者が共通の時空の中でそれぞれの個性を発揮している。何回も何回も繰り返し聴いていく中で、その良さがジンワリと身体に沁み込んでいく様な感覚がある。その点は、先に紹介した"LOCO MOTIF"とも共通した感覚だ。このアルバムはHOIBY WORLDともいえるもので、他に類を見ない個性的なグループ、個性的な演奏だということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.03.03)

試聴サイト : http://www.myspace.com/jasperhoiby



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独断的JAZZ批評 541.