PHRONESIS
"PHRONESIS"をネット検索したらインテリジェンス辞書に「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」とあった
まさに、そのことを具現化したグループと言えるだろう
"GREEN DELAY"
IVO NEAME(p), JASPER HOIBY(b), ANTON EGER(ds)
2009年6月リリース スタジオ録音 (LOOP : LOOP1008)


デンマークのベーシスト、JASPER HOIBYがリーダーのPHRONESIS、2枚目のアルバム。ファースト・アルバム"ORGANIC WARFARE"(JAZZ批評 541.)ではピアノがあのMAGNUS HJORTHだった。MAGNUS HJORTHといえば自己のトリオで"LOCO MOTIF"(JAZZ批評 537.)と"OLD NEW BORROWED BLUE"(JAZZ批評 555.)という傑作をリリースしているし、MARIUS NESET(ts)率いるカルテットでは"PEOPLE ARE MACHINES"(JAZZ批評 562.)という凄いアルバムを出している。
このアルバムではピアノがMAGNUSからIVO NEAMEに代わっている。IVO NEAMEは既に自己のピアノ・トリオ・アルバムをリリースしている一方で、サックス奏者としても活躍しているらしい。
ドラムスは前回と同様、ANTON EGER。そして、全ての曲はHOIBYの作。

@"ABRAHAM'S NEW GIFT" テクニック抜群のHOIBYの野太いベースで幕を開ける。ベースが唸っているものね。ベースが定型パターンを刻んでいくが、「決め」はビシリと決まっている。
A"BLUE INSPIRATION" 
これもベースの定型パターンにのってピアノがテーマを奏でる。このグループにはこういうパターンが多いのであるが、独特な味わいを出している。すっきり系のNEAMEのピアノも融合している。途中にピアノとベースのインタープレイが入り、緊張感溢れる展開にドラムスが加わり昂揚感を増していく。フリーな展開からベースの定型パターンに移行してテーマに戻る。
B"BLACKOUT" 
ピアノ、ベース、ドラムスが見事に有機的に結びき緊迫感溢れる演奏。まるで先の読めない展開にこのグループの「らしさ」がある。
C"GREEN DELAY" 
これもベースとピアノのユニゾンで定型的なパターンを繰り返していき、その上をピアノがメロディを奏でる。
D"RUE CING DIAMANTS" 
これまた、ベースが2小節の定型パターンを繰り返していく。ここではEGERのドラムスがフィーチャーされている。何とも不思議なPRONESISワールドなのだ。
E"LOVE SONG" 
ベースが倍音をうまく使いながらソロを展開し、やがて7拍子の定型パターンを刻みだす。1拍足りないので不安定感が緊張感を呼び起こしている。
F"HAPPY NOTES" 
珍しくピアノのソロで始まる。やがて、ベースが絡み、ドラムスが絡む。ブラッシュ・ワークも軽快に、陽気に演奏している。これは珍しい!
G"FIVE SONGS SIX WORDS" 
このグループのスタイルを象徴するような演奏。HOIBYのベース・ソロがフィーチャーされているが実に良い音色だ。
H"SUMMERSAULT"
 ベース・ソロで始まるが、このソロも凄いね。兎に角、音色が抜群。木の箱が鳴っているもの。続くEGERのドラム・ソロもいいね。"PEOPLE ARE MACHINES"でもEGERが叩いているけど、この人なくてこのグループは存在しない。PHRONESISにも欠くことの出来ないドラマーだ。

前作"ORGANIC WARFARE"では「他に類を見ない個性的なグループ、個性的な演奏である」と書いたが、今作も同じような印象を持った。このグループの演奏はベースの定型パターンを多用しているのであるが、途中、フリーな展開になったりしても決め所はビシリと決まっているので、まるで譜面を見ながら弾いているのではないかと思うほどだ。
"PHRONESIS"をネット検索したらインテリジェンス辞書に「
個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」とあった。まさに、そのことを具現化したグループと言えるだろう。やはり、これは「manaの厳選"PIANO & α"」に追加しないといけないでしょう。
毎日聴くには疲れるが、たまに聴きなおすと超刺激的だ。   (2009.07.08)

試聴サイト : http://www.myspace.com/phronesismusic



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独断的JAZZ批評 567.