CLAUDIO FILIPPINI TRIO
「売れ線狙い」で来たか!?
"BREATHING IN UNISON"
CLAUDIO FILIPPINI(p), PALLE DANIELSSON(b), OLAVI LOUHIVUORI(ds)
2013年4月 スタジオ録音 (CAMJAZZ : CAMJ 7874-2)
CLAUDIO FILIPPINIのアルバムは今までに3枚紹介している。
デビュー・アルバムが2011年録音のピアノ・トリオ"THE ENCHANTED GARDEN"(JAZZ批評 759.)で、第2弾は同じ年のデュオ・アルバム"THROUGH THE JOURNEY"(JAZZ批評 757.)だった。いずれも怖いものなしのチャレンジ精神に心が惹かれた。
第3弾が今回と同じメンバーによる2012年録音の"FACING NORTH"(JAZZ批評 798.)で、よりセンシティブでリリカルな演奏になった。この辺は老練なスウェーデンのベーシスト・PALLE DANIELSSON参加が影響しているのかもしれない。
DANIELSSONと言えば、CAMJAZZのお抱えベーシストみたいな印象もある。CAMJAZZの看板ピアニスト・JOHN TAYLORの"WHIRLPOOL"(JAZZ批評 535.)などにも参加している。
これら3枚のアルバムがいずれも好評価で日本での認知度も上がってきた。ということは、世界でも人気上昇中、二重丸的な存在になってきているのだろう。
@、C、D、Fの4曲がFILIPPINIのオリジナル。
@"MODERN TIMES #EVOLUTIONS" DANIELSSONの参加以来、グループの味付けが耽美的になってきたと感じるのは僕だけだろうか?ベース音もビートの強さで弾くというよりはアンプの増幅に頼った音だ。DANIELSSONは未だ67歳だというし、そんなに老け込む歳ではないが体力の衰えはいかんともし難いか?
A"AS TIME GOES BY" スタンダード・ナンバー。美しい曲を美しく弾いた・・・ただそれだけと言っては言い過ぎだろうか?
B"POSES" 揺蕩う曲想の佳曲。揺り篭に揺られているような・・・。
C"THE SLEEPWALKER" フリー・テンポのやや抽象画的な演奏でスタートする。後にアルコ奏法に替るが、これがジャズ風ド演歌!アルコの音色も痩せていて箱鳴りの音がしない。
D"BREATHING IN UNISON" ここらあたりまで来るとそろそろ熱くヒートしてよと思ったりする。あくまでもクールなのだ。オーバーダビング(?)でピアノとチェレスタの両方の音が聴ける。
E"NIGHT FLOWER" ベースとのユニゾンでテーマを奏でる。内省的だが美しい曲だ。DANIELSSONのベース・ソロが用意されている。決して熱くなることはないクールな演奏だ。
F"SOUTH MICHIGAN AVENUE" フリー・テンポのインタープレイも緊迫感に欠ける。予定調和とでも言うべき演奏だ。ややたるんだ音色のベース音もいただけない。これがガシッとしたビートのある音色だと緊迫感が出てきて良いのに、残念。
G"A TIME FOR LOVE" J. MANDELの名曲も美しく奏でるだけでインパクトに欠ける。
H"SECRET LOVE" 有名スタンダードも変わり映えしない。
I"AT THE DARK END OF THE STREET" 似たような美メロ路線で段々腹が立ってきた。可愛さ余って憎さ・・・・?
率直に言って、「売れ線狙い」で来たか!と思った。
どれも甘ったるい演奏ばかりで美メロ路線になってしまったのは残念至極。一体、誰がヒーリング・ジャズを求めたのだろうか?
デビュー・アルバムではチャレンジ精神溢れるプレイで好評価を得、人気が出てくると周辺の雑音が増えて本当にやりたいジャズから逸脱していくケースがときに散見される。
FILIPPINIのような若くて才能豊かなピアニストにはリスナーに迎合したり、媚びを売るようなアルバム作りはやめてもらいたいものだ。
残念ながら、本アルバムには丁々発止のインタープレイも飛び散る汗の匂いもしない。次回作では無心でチャレンジ精神溢れるプレイを期待したい。 (2014.04.18)
試聴サイト : http://www.camjazz.com/labels/cam-jazz/claudio-filippini
/8052405141248-breathing-in-unison-cd.html
例によって、CAMJAZZのサイトでは全曲フルに試聴できる
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