独断的JAZZ批評 757.

CLAUDIO FILIPPINI / FULVIO SIGURTA
美しさ、躍動感、緊密感に溢れている
上質なデュオを聴いたという感じ
"THROUGH THE JOURNEY"
FULVIO SIGURTA(tp, flh), CLAUDIO FILIPPINI(p, celesta)
2011年11月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7851-2)

このジャケットでは左に写っているのがFULVIO SIGURTA、右のサングラスがピアニストのCLAUDIO FILIPPINIだ。二人とも新進気鋭のイタリアのミュージシャンだ。
このFILIPPINIのCAM JAZZ第1弾アルバム"THE ENCHANTED GARDEN"(現在、注文中)ではイタリアの巨匠、ENRICO PIERANUZIがライナー・ノーツを書くほどの力の入れようだったという。PIERANUNZIの期待のほどが窺い知れる。
FILIPPINIは1982年生まれ。今年30歳になる。そして、これが第2弾。今度はトランペット、フリューゲルホーンとのデュオだ。
ピアノとトランペットのデュオというと、DADO MORONIとTOM HARRELLのデュオ・アルバム"HUMANITY"(JAZZ批評 546.)を思い出すが、これも良いアルバムだった。

@"DROPS OF HOPE" 波間にたゆたう小舟のイメージ。静寂の中に波紋を広げるような・・・。
A"OBALOKE" 
一転して「動」。プリペアド・ピアノと言われるゴムなどで弦の響きを抑え打楽器的な効果を出す手法を採用している。心地よい躍動感がいいね。
B"FROM THE WINDOW" 
フリー・テンポの会話

C"EASTERLY" 
静かなフリューゲルホーンの挿入部から次第に高揚感を増していく。
D"QUIET TIME" 
メルヘンチックなピアノのイントロで始まるワルツ。心和むトラック。
E"ALMOST BLUE" 
これも静かな出だしだ。フリー・テンポの会話。切ないなあ!
F"IMMEDIATE BOARDING" 
ピアノが躍動感あふれるリズムを刻み、ペットが空間を鋭く突き抜けていく。
G"THROUGH THE JOURNEY" 
とてもいいピアノだ。メリハリもあって音符も過剰に多くない。PIERANUZIが推したくなる理由が頷ける。
H"WHERE'S MY LUGGAGE?" 
ミュートのペットとユーモラスな会話。ここではチェレスタというアップライト・ピアノのような楽器を使用して、まるでヴィブラホーンのような音色を提供している。
I"WESTERLY" 
美しいバラード。哀しくも切ない。
J"GOING HOME" 
これもチェレスタのようだ。
K"INTO THE SUNSET" 
最後はゆったりとした大船に乗っているような大らかさで終わる。

Eを除くすべての曲が二人のオリジナル、もしくは共作でで構成されている。どちらかというと静的な楽曲が多いが、躍動感あふれるプレイも含まれていてメリハリがある。
ここにあるのはピアノとペットを通した二人の会話。美しさ、躍動感、緊密感に溢れている。上質なデュオを聴いたという感じ。
下記の試聴サイトでは全曲フルに試聴することが出来る。CAM JAZZではこういうスタイルが確立されているようで、リスナーにとっては大変有難いサービスだ。ついでに言うと、CDケース、および、ライナー・ノーツの類もイタリアらしいセンスと質感に溢れるもので所有欲を満足させてくれる。このアルバムを聴いてFILIPPINIの第1弾が聴きたいと思い、注文を出したところだ。・・・と大いに満足感を覚えながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加したのは言うまでもない。   (2012.06.03)

試聴サイト : http://www.camjazz.com/home/8052405140593-through-the-journey-cd.html



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