独断的JAZZ批評 868.

PETER ERSKINE/ALAN PASQUA/DAVE CARPENTER
温かみがあって知的で琴線を刺激するアメリカのピアノ・トリオ
"BADLANDS"
ALAN PASQUA(p), DAVE CARPENTER(b), PETER ERSKINE(ds)
2001年8月 スタジオ録音 (FUZZY MUSIC : PEPCD011)


松山のジャズ友にALAN PASQUAを紹介してもらったのが昨年末だった。それ以来、4枚のアルバムをゲットした。1枚目が1999年録音の"LIVE AT ROCCO"(JAZZ批評 845.)で、2枚目が2007年録音の"STANDARDS"(JAZZ批評 848.)。3枚目が2011年録音のソロ"TWIN BILL"(JAZZ批評 853.)だ。いずれも甲乙付け難い素晴らしいアルバムであった。
本アルバムは前2作と同じトリオのメンバーだ。3者のコンビネーションは素晴らしく、とりわけ、DAVE CARPENTERの存在がキー・ポイントだった。残念なことに、CARPENTERは2008年に急逝してしまい、今ではこのトリオを聴くことが出来ない。
ポーランド出身のDAREK OLESZKIEWICZがベースを弾いているアルバムもあるようだが、暫くは聴く気にはならない。
Iを除く全ての曲が3人のオリジナル。

@"SURRENDER" 何て言ったらいいのだろう?実に心地よいピアノの音色で始まる。単に美しいというだけでなくて、心を揺さぶる美しさなんだなあ!それに絡むCARPENTERの太いベース音と溶け込むようなERSKINEのブラシ・ワークが素晴らしい。
A"DADDY, WHAT IS GOD'S LAST NAME?" 
慈しみに溢れる演奏。こういうのもPASQUAの人となりが出てるんだろう!
B"PUSH/PULL" 
ERSKINEがスティックを握っている。太くて良く歌うベース・ソロ、配慮の利いたドラミング・・・3人の一体感が素晴らしい。
C"ON THE LAKE" 
静けさが湖面を波紋のように伝わっていく・・・
D"MY MOST BEAUTIFUL, NOS. 1, 2 & 3" 
タイトル通り。PASQUAの最も美しい曲のひとつ。このアルバムの中の白眉とも言えるだろう。
E"BOOGIE SHUTTLE STOP" 
F"BADLANDS" 
PASQUAの書く曲は人々の琴線に触れる佳曲揃いだ。美しくて親しみのある曲想は聴く人と聴く時を選ばない。いつでも心地よい。
G"SUMMER'S WALTZ" 
CARPENTERの書いたこの曲も親しみのある佳曲。サクサクとしたブラシのワルツに乗って気持ち良さげにピアノが歌っている。
H"MEANWHILE" 
I"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" 
このアルバム中、唯一のスタンダード・ナンバー。テーマ崩しで始まるも、アドリブではミディアム・ファーストの4ビートを刻んで進む。続いて、CARPENTERのベース・ソロ。やはり、このグループにはCARPENTERが必要だ。かえすがえすも急逝されたのが残念でならない。

一連のアルバムはPETER ERSKINEが名義の筆頭になっているが、連名になっているところをみても、3人が均等にトリオとしての役割を担っていると言って良いだろう。
その中で、主役はやはりピアノのALAN PASQUAだ。この人のピアノは単に美しいだけでなく琴線に触れる優しさや温かさがある。そして、DAVE CARPENTERの太くて温かみのあるベース、影のようにそっと寄り添うERSKINE、3人が織りなす一級のトリオ・アルバムである。それが証拠に、この3人の奏でた今までのどのトリオ・アルバムも外れがない。本アルバムも然りである。
ヨーロッパのピアノ・トリオとも違う、温かみがあって知的で琴線を刺激するアメリカのピアノ・トリオということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.04.11)

試聴サイト :
 https://www.youtube.com/watch?v=0sWGQGOyZpA



.