独断的JAZZ批評 759.

CLAUDIO FILIPPINI
1曲あたりの演奏時間が短いながらも、色々な味付けを賞味させてくれた
"THE ENCHANTED GARDEN"
CLAUDIO FILIPPINI(p, keyboards), LUCA BULGARELLI(b), MARCELLO DI LEONARDO(ds)
2011年2月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7839-2)

前々掲のCLAUDIO FILIPPINIとFULVIO SIGURTAとのデュオ・アルバム、"THROUGH THE JOURNEY"(JAZZ批評 757.)が2011年の11月録音だったのに対して、このアルバムは遡ること9ヶ月前の2月の録音だ。同じCAM JAZZからのリリースで、1年に2枚もアルバムをリリースできるというのはその才能を買ってのことだろう。ましてや、このアルバムではENRICO PIERANUNZIがライナー・ノーツを書くという力の入れようだ。
それも尤もと頷けるのはこのアルバムと既掲載の"THROUGH THE JOURNEY"を聴けば理解いただけると思う。
このアルバムはオーソドックスなピアノ・トリオ。

@"IL FIORE PURPUREO" リリカルなピアノのイントロで始まるが、待ってましたとばかりにベースが太い4ビートを刻み3者が一体となったプレイを展開する。けれん味がなくていいね!
A"VERSO SERA" 
ベースとピアノとドラムスの楽器を通した会話。
B"ART OF SURVIVAL" 
ANTONIO CARLOS JOBIM亡き後のブラジル音楽界を代表する作曲家でもあり歌手でもあるIVAN LINSの書いた曲。ベースがテーマを弾く。このLUCA BULGARELLIはとても良いベーシストだ。確かな技術と歌心がある。
C"FLYING HORSES" 
一転してリズミックな演奏。ここではキーボードやエレキ・ベースに持ち替えて多重録音を施している。激しいリズムと重厚感がいいね。
D"CORALLI" 
今度は美しい音色のアルコを奏で、ピアノが絡む。
E"WATERFALLS" 
BULGARELLIのベースが堪能できる。ビートのある太い音!
F"THE BEAST INSTINCT" 
ベースとピアノのユニゾンで始まり徐々に高揚感を増していく。BULGARELLIがテクニシャン振りを披露している。
G"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
MICHEL LEGRANDの書いた佳曲。たっぷりと情感を込めたピアノ。最後にテーマが奏でられる。
H"FEUILLET D'ALBUM OP 45 N.1" 
ロシアの作曲家、ALEKSANDR SKRJABINの曲。
I"UNDER THAT SKY" 
3者の緊密感、一体感を感じる。何気ない演奏だけど、何気にいいね。
J"13 DEATH MARCH" 
ヴィブラホーン奏者でもあったGARY MCFARLANDの曲。大変調子のよい曲で一度聴くとそのメロディが頭の中に余韻として残る。
K"WISE WOLF" 
L"DJANGO" 
最後はJOHN LEWISの名曲をしっとりと。

全13曲と少々多めで1曲あたりの演奏時間も平均4分くらいで短めであるが、そういうことを意識させない濃密感がある。とは言いつつも、やはり短い。これだけ内容充実の演奏ならもっと長く聴いていたいというのが僕の本音である。せいぜい10曲くらいにして1曲あたりの演奏時間を増やしてもらったら、更に嬉しかった。
このアルバムの3人はいずれ劣らぬ技量を持ち、コンビネーションも申し分ない。
このFILIPPINIは非凡な才能の持ち主だと思うし、これからの更なる活躍も期待できそうだ。1曲あたりの演奏時間が短いながらも、色々な味付けを賞味させてくれた。どの演奏もリスナーの心を捉えて離さないセンスの良さがあるということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
蛇足ながら、下記の試聴サイトでは全曲フルに試聴できるのでお試しを。   (2012.06.14)

試聴サイト : http://www.camjazz.com/labels/cam-jazz/claudio-filippini/8052405140296
-the-enchanted-garden-cd.html




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