CLAUDIO FILIPPINI
あくまでも繊細で抒情的である
そこへ骨太なDANIELSSONのベースが加わり、程よいアクセントが付いた
"FACING NORTH"
CLAUDIO FILIPPINI(p), PALLE DANIELSSON(b), OLAVI LOUHIVUORI(ds)
2012年1月 スタジオ録音 (CAMJAZZ : CAMJ 7854-2)
CLAUDIO FILIPPINIは最近のお気に入りピアニストである。このアルバムを遡ること1年前の2011年2月録音の"THE ENCHANTED
GARDEN"(JAZZ批評 759.)では、イタリアの巨匠、ENRICO PIERANUNZIがライナー・ノーツを書くほどの力の入れようだった。その後、同じ年の11月にはFULVIO
SIGURTA(tp, flh)とのデュオ・アルバム"THROUGH THE JOURNEY"(JAZZ批評 757.)を残している。いずれ劣らぬ傑作アルバムだった。
今度のアルバムはメンバーをガラリと替え、ベースにPALLE DANIELSSON、ドラムスにOLAVI LOUHIVUORIを迎えている。DANIELSSONと言えば、JOHN
TAYLORと組んだ"WHIRLPOOL"(JAZZ批評 535.)が思い起こされる。内省的ではあったが上質感を伴ういいアルバムだった。
今回のアルバムにはPIERANUNZIのライナー・ノーツはない。もはや、そういうことが必要ないほど広く認知されたピアニストと言えるだろう。
@"NOTHING TO LOSE" 抒情的で美しいテーマ。DANIELSSONのベースがピタリと嵌っている。見事な聴きどころを作っている。多過ぎず、少な過ぎないピアノの音数にゆったりと聴き惚れたい。揺蕩う時間の流れに身を任せるような・・・。。
A"SCORPION TAIL" ベース・ソロで始まり、やがて、ピアノとドラムスが合流する多ビートの複雑な曲だ。
B"FACING NORTH" いきなりのインタープレイがいいね。テーマに移りベースがテーマを弾く。FILIPPINIのオリジナルだけど、今回もいい曲を書いている。甘からず、辛からず、いい塩梅だ。こういう曲ではDANIELSSONの真骨頂ともいえるベース・ワークが堪能できる。
C"LANDSCAPE" 今度は幻想的とも言えるアルコ奏法。まさに北欧の風景を連想させる美しくて広大な世界。そして、心地よい。
D"SONATINA" チェレスタの響きが斬新。先の"THOUGH THE JOURNEY"でも使用している。
E"EMBRACEABLE YOU" スタンダード・ナンバーからのピアノ・ソロ。かなりアレンジしてあるので聞き耳を立てないとそれと分からない。
F"GOD ONLY KNOWS" 「神のみぞ知る」か・・・。
G"CHASING PAVEMENTS" スロー・ロック的なノリでとても聴き易い。無駄のない音使いで余分なもの、無駄なものを感じさせないのはさすが。
H"SOAKING AND FLOATING" ここでもチェレスタを効果的に使用している。DANIELSSONのベース・ソロも良く歌っている。
I"MODERN TIMES"
このアルバム、誰が聴いても好感を持つ音楽ではないだろうか?
強烈な個性には乏しいが、押しつけがましさがない。3人のバランスもよく心が通い合っている。ただ、グルーヴィな演奏を期待していると肩透かしを食うだろう。あくまでも繊細で抒情的である。そこへ骨太なDANIELSSONのベースが加わり、程よいアクセントが付いた。
今回の肝は何と言っても、DANIELSSONの参加だが、ベース・ソロでは見事にその存在感を示しているし、何よりも、トリオの中に上手く溶け込んでいる。(でしゃばり過ぎていないのがいいね)
そして、主役のFILIPPINIのセンスの良いピアノがきらりと光る。
幸いにして下記のURLでは全曲フルに試聴できるから、購入する前にチェックされることをお勧めする。(CAMJAZZのこのサービスは大変ありがたい!)
ファースト・アルバム、"THE ENCHANTED GARDEN"(JAZZ批評 759.)のトリオ・アルバムと甲乙付け難い出来栄えで、またしても、僕を虜にしてくれたということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
このFILIPPINIは、5月下旬にFABRIZIO BOSSO QUARTETでの来日公演があるというので、早速、予約を入れた。今から楽しみ。 (2013.04.02)
試聴サイト : http://www.camjazz.com/labels/cam-jazz/8052405140791-facing-north-cd.html
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