独断的JAZZ批評 867.

DANIEL SZABO
ALAN PASQUA TRIOやJULIAN WATERFALL POLLACK TRIOにも通ずるコンテンポラリーなアメリカのジャズ
"A SONG FROM THERE"
DANIEL SZABO(p), EDWIN LIVINGSTON(b), PETER ERSKINE(ds)
2013年7月リリース スタジオ録音 (DSZABOMUSIC 1001)

このアルバム、豊橋のジャズ友に紹介してもらった。
始めて聴くハンガリーのピアニスト。最近はヨーロッパのピアノ・トリオには少々食傷気味であまり食欲は湧かなかったのであるが、試聴サイトで全曲フルに試聴出来て確認することが出来たので購入を決めた。
ヨーロッパのジャズは美メロ、低温度感、饒舌音符過多なんて単語が浮かんできて、少し遠慮気味だった。どちらかと言えば、最近はアメリカのジャズに嵌り気味だ。揺り戻しってやつかもしれない。
翻って、このSZABOは美メロでもなく、低温度感でもなく、饒舌音符過多でもなく、これは良さそうだと思った。それと同時に興味を惹かれたのはベースのEDWIN LIVINGSTON!聴いてみてヨーロッパのベーシストではないだろうと思った。調べてみたら、アメリカのベーシストだった。強いビートでゴツゴツ弾くベース・ワークは堪らない。未だ若そうだし、将来性を感じる。
最近のヨーロッパのベーシストは軟弱傾向でどうも気に入らない。その点、アメリカのベーシストは一時の停滞時期を脱して息を吹き返してきたね。何よりも強いビートを持っているのがいいね。最近のお気に入りのJULIAN WATERFALL POLLACK TRIO(JAZZ批評 861.)のNOAH GARABEDIANやBEN WILLIAMS(JAZZ批評 761.)もそういった一人だ。
ドラムスのPETER ERSKINEについては今更言うこともないが、ここでも素晴らしいサポートを展開している。

@"HUN- FRO BLUES" 先ず、出だしがいいね。ERSKINEの軽快なブラシ・ワークで始まり、LIVINGSTONの太いベースが追い打ちをかける。そこへピアノが雪崩れ込む。スリリングな展開が何とも言えないね。何かを起こしてくれそう期待感が膨らむ。6分と22秒。
A"KID'S DANCE(DEDICATE TO ARON AND JULIA)"
 美しい曲だ。ERSKINEの繊細なシンバル・レガートが効いている。3者のインタープレイも申し分ない。SZABOのピアノも音色が良くて切れている。7分と21秒。
B"EASTYNATO" 
ブロック・コードによるイントロからメロディが始まる。哀愁を帯びたテーマだ。ERSKINEの多彩なドラミングが華を添えている。LIVINGSTONの太くて逞しいベース・ソロが最高!これはいいね。これから色々なアルバムに引っ張りだこになること請け合いだ。8分と42秒。
C"A SONG FROM THERE" 
ピアノのイントロで始まる。少しメルヘンチックなテーマ。3者のインタープレイも素晴らしく、繊細なドラミングを隠し味のように効かしたERSKINEのプレイがいいね。9分と13秒。
D"BARBARO CON BRIO (HOMMAGE A BELA BARTOK)"
 ハンガリーの巨匠・バルトークへのオマージュだという。LIVINGSTONのウォーキングが素晴らしい。こういう躍動感と前に突き進むドライブ感溢れるベースを弾けるようになって初めて一人前のベーシストだと思っているのだがどうだろう?かのRICHARD DAVIS(JAZZ批評 44.)を思い出す。続くERSKINEのドラム・ソロもいいね。ドラマーはシンバル・レガートが上手く叩けるようになって一人前と思っている。3者のめくるめく躍動感を堪能してほしい。5分と39秒。
E"I CROONED IT BEFORE" 
こういう演奏を聴いているとALAN PASQUA TRIO(JAZZ批評 845.)の演奏を彷彿とさせる。因みに、このライナー・ノーツをアルバム制作にも関わったPASQUAが書いている。6分と44秒。
F"HUN-FRO BLUES-ALTERNATE TAKE"
 @の別テークはベースのソロから始まっている。アップ・テンポの4ビートをシンバル・レガートとベースのウォーキングがばく進し、その上にピアノが絡んで進む。

ふたりのアメリカ人とひとりのハンガリー人。どちらかというとアメリカの匂いのするアルバムだ。ALAN PASQUA TRIOやJULIAN WATERFALL POLLACK TRIOにも通ずるコンテンポラリーなアメリカのジャズという感じだ。加えて3者の力量も素晴らしい。
初めて名前を聞いたベースのEDWIN LIVINGSTONは要注目だ。間違いなく、そのうち売れっ子になるだろう。ヨーロッパ・ジャズ華やかかりし頃はクラシックの薫陶を受けたヨーロッパのベーシストには敵わない部分が多かった。最近はアメリカのベーシストも音楽教育を受けて正確な音程や運指が鍛錬されてきた。特に、伝統の強靭な指から弾き出す強いビート感はアメリカならではのものだ。RICHARD DAVIS、LARRY GRENADIERの系譜をなぞるベーシストの誕生は非常に喜ばしい。
ジャズ友の紹介によって、JULIAN WATERFALL POLLACK TRIOやこのDANIEL SZABO TRIOを聴けるようになったことに感謝しつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2014.04.07)

試聴サイト : http://grooveshark.com/#!/album/A+Song+From+There/9550192
          このサイトでは全曲フルに試聴できる



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