独断的JAZZ批評 861.

JULIAN WATERFALL POLLACK TRIO
アメリカ・ジャズシーンに彗星の如く現れた逸材だ!
"WAVES OF ALBION"
JULIAN WATERFALL POLLACK(p), NOAH GARABEDIAN(b),
EVAN HUGHES(ds) 
2012年8月 スタジオ録音 (BERTHOLD RECORDS)


JULIAN WATERE POLLACKのような優れた若手プレイヤーがアメリカのジャズシーンから生まれてきたのは嬉しい限りだ。
前作は2010年録音の"INFINITE PLAYGROUND"(JAZZ批評 854.)で、僕は「もしかすると、ポストBRAD MEHLDAUに成りうる逸材かも知れない」と書いた。個の力量もさることながら、トリオとしての完成度も高い。MEHLDAU トリオのGRENADIERのように強靭なビートを弾き出すNOAH GARABEDIANのベース・ワークも実に頼もしい。
それと、グループのオリジナルだけに固執するわけでなく、幅広くスタンダード・ナンバーにも取り組んでいる姿勢も好感が持てる。
本アルバムではアメリカに古くから伝わる愛唱曲"AMAZING GRACE"や"SHENANDOAH"が含まれているのが嬉しいではないか!

@"FLUME" イントロからテーマへの入り方がいいね。スローロック風の渋い演奏だ。ロック・ミュージシャンのBON IVERの曲だという。シンプルで美しい曲だ。GABARADIANのゴツゴツしたベースが効いているし、3人のアンサンブルもグッドだ。
A"FRESNO INTERLUDE" 
この演奏も多ビートだけど、メロディアスな曲で無機質な印象はない。
B"AMAZING GRACE" 
アイルランドかスコットランドの、あるいは、アメリカの民謡だと言われている。日本人のミュージシャンが好んで演奏している。例えば、熊谷ヤスマサ(JAZZ批評 646.)、安カ川大樹(JAZZ批評 699.)、海野雅威(JAZZ批評 734.)、大石学(JAZZ批評 745.)などなど。不思議なことに、これらのアルバムはどれも5つ星を献上している。
この演奏もしっとり感があっていいね。

C"SHENANDOAH" 
「シェナンドー」はアメリカの国立公園でもあるが、この曲は舟歌として歌い継がれてきたものらしい。何気にこういう曲が入っているのは憎いね。徐々に高揚感が増してきて、POLLACKの高速パッセージを聴くことが出来る。どんなに早くても「間」を持っているのがいいね。
D"SAD SONG" 
ドラムスがスローな2ビートを刻み、ピアノが哀しげなテーマを奏でる。
E"WHAT SARAH SAID" 
"DEATH CAB FOR CUTIE"という名のインディーなポップ・グループの曲。アルペジオ奏法でテンションを高めていく。エンディングがスリリングでピタッと終わる。
F"I DON'T BELIEVE IN LOVE ANYMORE" 
これもスローなバラード。フォーク的な、あるいは、牧歌的な美しい曲だ。余分なものはひとつもない。
G"WAVES OF ALBION" 
"ALBION"というのはグレートブリテン島(イギリス)の古名だというが、この場合はPOLLACKが育ったカルフォルニアのアルビオンという故郷のことだ。この曲もメランコリックで美しいバラードだ。

前アルバム"INFINITE PLAYGROUND"でも書いたが、POLLACKはアメリカ・ジャズシーンに彗星の如く現れた「逸材」だと確信する。
アメリカ民謡の2曲とインディーなポップスが2曲。POLLACKのオリジナルが4曲という構成であるが、どの曲も奏でるテーマが美しくてシンプル。「いいテーマにいいアドリブ」を具現化してくれた。
POLLACK自身も、アメリカのフォークソングやロックはシンプルな素材で、これに自分流の味付けを加えていきたいと語っている。
未だ26歳という年齢もさることながら、その才気あふれる演奏ぶりに唸ってしまう。もっともっと聴いていたい!ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。早く、次のアルバムがリリースされないかなあ!   (2014.03.18)

参考サイト : https://www.youtube.com/watch?v=JaSfbOiiTPo&list=PLTiQWdd0C_0qeHUAS_X7P4sKy_W1GZGC7&index=4
          http://www.youtube.com/watch?v=Cdp7AU6O8KI
          http://www.julianpollack.com/waves-of-albion/
           



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