独断的JAZZ批評 761.

PAT METHENY
全ては、Fを受け入れられるかどうか
この演奏を聴いて、この4人が集まった意味が分かったような・・・壮大な音宇宙を満喫されたい
"UNITY BAND"
CHRIS POTTER(sax, b-cl, ss), PAT METHENY(a-g, e-g, guitars sinth, orchestrionics),
BEN WILLIAMS(b), ANTONIO SANCHEZ(ds)
2012年2月 スタジオ録音 (NONESUCH : 7559-79615-0)


PAT METHENY、久しぶりのバンドである。その名も"UNITY BAND" 
兎に角、メンバーが凄い。今や全員がニューヨークのジャズ最前線を行くプレイヤーたちである。CHRIS POTTER然り、ANTONIO SANCHEZ然り。僕はあまり管モノは聴かないのだけど、POTTERと言えば、"LIVE AT THE 2007 MONTEREY JAZZ FESTIVAL"(JAZZ批評 584.)で豪快なテーナーを吹いていたし、SANCHEZは今年になってENRICO PIERANUNZIとのトリオ・アルバム"PERMUTATION"(JAZZ批評 746.)がリリースされた。いずれも豪快なプレイを売り物にするツワモノたちだ。ベースのBEN WILLIAMSは新進気鋭のベーシストだ。2010年録音の山中千尋の"FOREVER BEGINS"(JAZZ批評 653.)に参加していたのは記憶に新しい。
さて、このツワモノ達が集まって、どんな音楽を聴かせてくれるのだろうか?
曲は全てMETHENYのオリジナル。

@"NEW YEAR" 美しいクラシック・ギターの音色で始まるが、イントロが終わると図太いテナー・サックスの音色がしゃしゃり出てきて驚かされる。このギャップに正直驚いたし、違和感を感じたものだ。テナーとクラシック・ギターという取り合わせは珍しい。続いて、WILLIAMSのアコースティック・ベースが登場。メロディックなベース・ラインに好感が持てる。ドラムスのSANCHEZのプレイに遠慮はない。ガシガシ叩いている。
A"ROOFDOGS" 
METHENYの音楽ってシンセサイザーやORCHESTRIONICSと呼ぶ、いわば自動演奏装置を多用しているので、ライヴなのかオーバーダビングなのか良く分からないが、これこそMETHENY SOUNDだ。詳しくは"http://www.patmetheny.com/orchestrioninfo/ "をご覧ください。
B"COME AND SEE" 
WILLIAMSがアコースティック・ベースで頑張っているね。こういうサウンド作りならエレベの方がどんなに楽だろうに。この拘りがいいね。この人にはアコースティック一本で頑張ってもらいたい。
C"THIS BELONGS TO YOU" 
ロマンチックなメロディで始まり、ロマンチックに終わる。
D"LEAVING TOWN" 
E"INTERVAL WALTZ" 
F"SIGNALS (ORCHESTRION SKETCH)" 
ORCHESTRIONICSを使用した演奏なのだろうか?アブストラクトな演奏が終わると、イン・テンポになって進む。徐々にアンサンブルの厚みが増し来て、重厚で壮大な音宇宙へと拡がっていく。このスケールの大きな演奏はMETHENYらしい。これはいいなあ!この演奏を聴いて、この4人が集まった意味が分かったような・・・。
G"THEN AND NOW" 
一転してバラード調の演奏になるが、ここではWILLIAMSが存在感を示している。どんどん高揚感を増していくそのさまがいいね。
H"BREAKDEALER" 
SANCHEZのためにあるような曲。もうこの叩きっぷりに唖然とするしかない。

何と言っても、このCDの価値はFを受け入れられるかどうかで決まりでしょう。Fの演奏は凄いと思う。それとGもいいね。それ以外はその2曲のための伏線みたいなものだ。だけどそれを聴かないとFに辿り着かないという感じ。
少し迷ったっけど、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。この壮大な音宇宙を満喫されたい。   (2012.07.08) 

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=PRbck3DzDs0&feature=related



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