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『VORTEX ヴォルテックス』(Vortex) | |||||
監督・脚本 ギャスパー・ノエ | |||||
これまでに『カルネ』『カノン』『アレックス』『CLIMAX クライマックス』『エンター・ザ・ボイド』『LOVE』と観てきているギャスパー・ノエ作品というのは、何らかの企みと挑発が仕込まれているものとの思いがあったから、予告編を観て、この宗旨替えは一体なんだろうという気がしていた。だが早々に、スプリットスクリーンの画面分割によって、一つ屋根の下に暮らしていても、交錯する時間も共有する時間も、寝ている間のほかには殆どないことが、二つの画面で夫婦それぞれを並行して追いながら映し出されるスタイルを採っていることに感心した。こうこなければ、やはりギャスパー・ノエ作品ではないと思ったわけだ。 ところが、人は心臓が壊れる前に頭のほうが壊れるものだとのクレジットから始まった物語はドキュメンタルなスタイルを延々と続け、挑発をしてこない。それこそが「企み」で、最後にかの『カノン』を想起させるようなキツイ一発が来るのかと思っていたら、それもなくて拍子抜けした。前日に観たカラーとモノクロの二面構成で来た『オッペンハイマー』は、三時間。今日のスプリットスクリーンによる『ヴォルテックス』は、二時間半。どうしてこれだけの長尺が要るのかとの思いの拭えない“巨匠”然とした作りに萎える。 元精神科医の認知症者である妻(フランソワーズ・ルブラン)が詰まらせてしまってヴォルテックスの失われた便器に溜まった水のように澱んだ印象の残る作品だった。先のガスの元栓の締め忘れとも通じるような、故意とも過失とも取れる妻の暴挙によって書き溜めていた原稿を失ったことが夫(ダリオ・アルジェント)の死期を思いがけず早めたような気がしてならなかった。それにしても、ステファン(アレックス・ルッツ)は本当に、だらしのない息子だったように思う。 | |||||
by ヤマ '24. 4.20. あたご劇場 | |||||
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