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『セイフ ヘイヴン』(Safe Haven)['13] 『かけがえのない人』(The Best Of Me)['14] | |||||
監督 ラッセ・ハルストレム 監督 マイケル・ホフマン | |||||
二十年近く前に観た『きみに読む物語』['04]のヒットの後、2010年代前半に映画化ラッシュだったニコラス・スパークス原作の未見映画を続けて二本観た。 先に観た『セイフ ヘイヴン』は、何だかありきたりな話を手堅く見せているなと思いながら観ていたら、最後にそこまでやるかの「TO HER」の手紙が出て来て感心し、『死ぬまでにしたい10のこと』['03]を想起したところに、呆気に取られるような森の隣人ジョー(コビー・スマルダーズ)の写真が現われて、ヘイヴンってそういうことだったのかと合点がいった。手元にあるチラシの裏面に記されているように、原題自体の意味は【安心できる居場所】なのだろうが、成程ねと得心した次第。 その点では、ありきたりな話ではなく、最後にとんでもなく奇抜な話に転じていた。ケヴィン刑事を演じたデヴィッド・ライオンズの実に危なさそうな感じがなかなかのものだったような気がする。ケイティことヘレンを演じたジュリアン・ハフも好い感じだった。 ラッセ・ハルストレム監督は、三十年余り前に自分たちで上映した『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』['85]で記憶し、『サイダーハウス・ルール』['99]などが印象深い作り手だが、人の生の不可思議な機微に触れる作品が多い気がする。ニコラス・スパークス原作映画は、本作以前に『親愛なるきみへ』['10]を撮ってもいるので、その点では、相性が良いのかもしれない。 一週間後に観た『かけがえのない人』は、高校生時分に巡り合ったアマンダ以上の「The Best Of Me」には出会えなくて独り身を続けていたという海洋油田プラント工夫ドーソン・コールが漏らす「君といると自分が好きになれる」との台詞が、彼の育った境遇に射した光として沁み入るところのある映画だったように思う。ニコラス・スパークス原作ものとして最初に観た『メッセージ・イン・ア・ボトル』['99]の二十四年前の日誌に綴っているところから、ほんの1mmもブレることのないスパークス世界だった気がする。 映画作品の運びとしては、『セイフ ヘイヴン』が何だかありきたりな話を手堅く見せ、最後に唖然とさせていたのに比べて、こちらのほうは、これは一体どういう話なのかと、いかにも訳あり気に二十一年前の回想と現在を織り交ぜて見せた挙句、最後にやはりそう来るかと今さら驚くこともなくなった、予想通りの“運命の因縁”が語られていたが、これはこれで飽くことなく観ることができた。 若き日のアマンダ・コリアーを演じたリアナ・リベラトが実に活き活きと眩しく、大学時分の不慮の妊娠でフランク(セバスチャン・アーセルス)と結婚したのち十八年が経ちアラフォーとなったアマンダ・レイノルズを演じたミシェル・モナハンの揺らめきが切なかった。それにしても、ドーソン・コール【高校生:ルーク・ブレイシー、アラフォー:ジェームズ・マースデン】の父親トミーの酷さが腹立たしく、演じたショーン・ブリジャースに感心した。 スパークス原作映画は、これまでに他には『最後の初恋』['08]を観ているが、これぞ虚構世界とも言うべき現実離れした物語が、ある種の真実と願望を湛えて繰り広げられるという感じがある。小説自体は一冊も読んだことがないが、映画化作品からは、手紙が重要な役割を果たす物語を綴る作家だという印象があり、今回観た二作品においても最後を締めているのは、『セイフ ヘイヴン』でのアレックス(ジョシュ・デュアメル)の亡妻からの手紙であり、『かけがえのない人』でも、九十二歳で亡くなった恩人タック・ホステトラー(ジェラルド・マクレイニー)の遺した手紙だった。 | |||||
by ヤマ '23. 7.26. BS松竹東急よる8銀座シネマ録画 '23. 8. 2. BS松竹東急よる8銀座シネマ録画 | |||||
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