『メッセージ・イン・ア・ボトル』(Message In A Bottle)
監督 ルイス・マンドキ


 言わんとするところは分かり過ぎるくらいによく解るし、それなりの気分を醸成するうえでは脚本も演出も健闘していて、いい台詞もあったりするのだけれど、これをもって至上の愛の物語というふうにされてしまうと何か根底の部分で、愛ってそういうことなのかな、ちょっと違うんじゃないのかな、という違和感が拭えない気がしてくる物語であったように思う。喪失感とその痛手の痕跡をもって裏づける形で描かれる愛は、確かにある面で人の心の真実を語りはしても、それが至上の愛の物語にはなり得ないにもかかわらず、作り手がこれこそ至上の理想の愛であるかのごとく語ってくるので、ついついその気にさせられつつも、妙に腑に落ちない澱が残ってしまうのではなかろうか。

 この作品で喪失感をキーワードとしてないほうの愛の物語すなわち父と子の関係性のなかには、血の通った生きた愛が感じられて、なかなか素敵だった。それは、なにもポール・ニューマンの演技がとりわけ渋い味わいを見せてくれていたからというだけではない。

 しかしながら、メインストーリーはあくまでケビン・コスナーとロビン・ライト・ペン演ずる、もう若くはない大人の男と女の恋愛である。結局のところ、新しい愛にもう一度踏み出しはしても、二人で人生を生き直す物語としては語られずに終わった。お涙頂戴式のと言われても抗いきれない、紅涙をしぼることを狙った女性向けの娯楽映画にとどまっている。勿論それが悪いのではない。その点ではそれなりに成功していると思えるだけの仕上がりにはなっていた。
by ヤマ

'99. 6.20. 松竹ピカデリー1



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