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『ベルファスト』(Belfast) | |||||
監督・脚本 ケネス・ブラナー
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二年前に観た『ジョジョ・ラビット』には及ばないながらも、なかなかいい作品だと思った。それには、本作の九歳の少年バディ(ジュード・ヒル)と同い年のケネス・ブラナーが僕と二歳しか違わなくて、カラーのラクエル・ウェルチ【『恐竜100万年』['66]】にも、モノクロのジョン・ウェイン【『リバティ・バランスを射った男』['62]】やゲイリー・クーパー【『真昼の決闘』['52]】にも、サンダーバードにも、『猿の惑星』['68]にも、バディと同じような親近感を抱いていることが作用しているのかもしれない。 幸いにして僕は、政教が一体化した分断と抗争には巻き込まれたことがないけれども、根底に貧困が横たわった荒みによって暴力的捌け口を求めるようになる人々の有様が何ともやりきれないだけに、バディのパパ(ジェイミー・ドーナン)が「深い人だった」と偲んでいた祖父ポップ(キアラン・ハインズ)の人物像が、とても渋く印象に残った。僕はまだ彼の歳には至っていないように思うけれども六人の孫のうち半分はもう九歳を超えているものだから、子や孫から「深い人だった」と言ってもらえるようになれれば本望だと思ったりもした。ダンスはできないので、彼が老妻(ジュディ・デンチ)の手を取ってバディに見せたような範は示せないのが残念だ。 それにしても、普段の暮らしの傍らに暴動や襲撃、銃撃があって顔見知り同士が諍う日常などとは無縁のまま今現在を迎えられていることの幸いを改めて思う。父方母方両方とも祖父は、僕が生まれたときには既に亡くなっていたから、話をしたこともないけれども、祖父を知らないことにも代え難い平和な日常があったことをありがたく思う。 小学三年を終えて転校をしたのは、僕もバディと同じだ。僕はそのとき父方の姓から母方の姓に苗字が替わったのだけれども、亡父はその件について、バディのパパが移住についてきちんと子供の意見を訊いていたように、僕の同意を取る手続きを怠らなかったことをよく覚えている。西部劇の好きな父で、その影響で僕も西部劇を愛好し、映画好きになったのだった。映画好きには、堪えられない設えになっている作品だったように思う。 推薦テクスト:「ケイケイの映画日記」より http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20220414 | |||||
by ヤマ '22. 3.31. TOHOシネマズ1 | |||||
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