『レディ・プレイヤー1』(Ready Player One)
『パシフィック・リム:アップライジング』(Pacific Rim:Uprising)
監督 スティーヴン・スピルバーグ
監督 スティーヴン・S・デナイト

 スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』は、お話としての目新しさは然程でもないけれど、さすがスピルバーグというべき“見せる力”に溢れていて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』並みに面白かった。

 永らく映画を観ているせいか、想起させられる数々の映画作品に圧倒されたおかげで、とてもゲーマーとは言えないくらいにしかゲームの世界を知らないのに、ハリデー(マーク・ライランス)の造り上げたヴァーチャルリアリティの世界“オアシス”と創設者ハリデーに心酔しているウェイド【パーシヴァル】(タイ・シェリダン)にすんなりと入りこむことができるようになっていて、約十年前にサマーウォーズを観たときのような気持ちの悪さというか居心地の悪さをつゆとも感じさせられることがなかった。VR世界の持つ価値を積極的に肯定しつつも、現実世界のほうに足場を向ける視座がしっかりしているように感じたからかもしれない。

 それにしても、よくぞ詰め込んだものだ。僕が気づき、想起したものだけでもアバター 『AKIRA』『バットマン』『スーパーマン』『キングコング』『ジュラシックパーク』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『エイリアン』『シャイニング』『サタデーナイトフィーバー』『チャイルド・プレイ』『アイアン・ジャイアント』市民ケーン、ゴジラ映画、ガンダム、と枚挙に暇がなかった。また近頃、すっかり日本から中国にハリウッドの視線が移っているなか、こういうコンテンツの世界では日本が持っている文化的資産の大きさを再認識させられたように思う。

 サマンサ【アルテミス】(オリヴィア・クック)のアバター名は、エンドロールでは「Art3Mis」になっていたように思うけれども、アルテミスとの関係は何なのだろう。また、七人の侍ならぬ五人のプレイヤーだったのに、『レディ・プレイヤー1』となっているのは『レディ・プレイヤー2』を想定してのタイトルなのだろうか、などと思った。そして、脚本を書いた原作者のアーネスト・クラインには、ハリデーにスピルバーグを重ねているようなところがある気がした。

 本作を観たせいで、もう見送ろうかと思っていた『パシフィック・リム:アップライジング』を翌日に観ることにした。五年前に観たパシフィック・リム['13]はなかなか面白かった覚えがあるものの、いわゆる続編ものが好きじゃなく、前作もよく覚えていないし、監督も替わったしで、食指が動いていなかったのだが、『レディ・プレイヤー1』が思いのほか面白かったので、これも観に行きたくなったのだった。

 スピルバーグのスマートさには及ぶべくもないが、けっこう面白かった。ヴァーチャルとリアリティとを繋いでいる部分における身体性というか、アナログ感という本作の一番の持ち味が損なわれていなかったところに満足した。

 それにしても、この五年の年月(映画では十年後だと言ってた気がするが)において、早々と姿を消してしまう日本人の森マコ(菊地凛子)に替わって、中国人の女性社長シャオ(ジン・ティエン)が大活躍する物語になっていた点が、まさにハリウッドが東アジアに向ける視線の変化を如実に語っていて興味深かった。



『レディ・プレイヤー1』
推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-6587.html

『パシフィック・リム:アップライジング』
推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-36cb.html
 
by ヤマ

'18. 5. 1. TOHOシネマズ5
'18. 5. 2. TOHOシネマズ2



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