『セトウツミ』
監督 大森立嗣

ヤマのMixi日記 2016年11月06日23:02

 近年、これほど笑いの込み上げてくる作品は観たことがないように思った。今や遠い高校生時分に僕も放課後、毎日のように「狭く深いのと浅く広いのとではどっちがいいと思うか」などといった、友人とのしょうもない話に時間を費やしていた時期があり、何とも懐かしくなった。

 瀬戸小吉と内海想を演じた菅田将暉と池松壮亮が何と言っても素晴らしい。絶妙の空気感を醸し出し、見事な人物造形を果たしていたように思う。さすが今をときめく若手の実力派だと大いに感心した。

 7話とエピローグで構成された作品のほとんどのタイトルが「○○と△△」という形になっていたのだが、第1話の「セトとウツミ」でいきなりそれぞれのキャラクター描出自体をネタにした掛け合いの上手さと可笑しさに吹き出し、一気に魅了された。タイトル形式の「○○と△△」に倣えば、第1話のサブタイトルは「シナジーとライス」にしたい。

 続く第2話「アメとムチ」も快調に面白く、第3話の「イカクとギタイ」で少し失速したかと思いきや、すかさず第0話に切り替える構成の巧みさがあって、その「内海想の出会い」での食虫植物の話で浮かび上がる二人のキャラに好感を抱いた。第4話「先祖と子孫」、第5話「瀬戸小吉の憂鬱」、第6話「出会いと別れ」は、エピローグの「樫村一期の願い」も含めて、第1話第2話ほどの冴えはなかったように思うものの、もはや二人の会話自体の醸し出す味わいの妙に魅せられていたために、何だかずっと観ていたい気分に誘われていた気がする。

 各話の繋ぎに使われていたタンゴの誘う情感と踊るがごとき流れの良さが鮮やかだった。映画作品として、ある種、集中して観ることのできる環境で接してこそ味わえる微妙で触発力に富んだ味わいに、映画作品ならではの醍醐味を感じた。

 ウツミの読んでいた文庫本のタイトルは『青が散る』だったように思うが、絵に描いたようなドラマチックな青春とは異なる二人のダベる青春もまた、束の間の時として散りゆく掛け替えのないものだということだったのだろうか。

 続編、是非とも観たいものの、もし作られるとしたら、かなりハードル高くなりそうだ(笑)。


コメント談義:2016年11月06日 23:44~2016年11月13日 21:07

(ケイケイさん)
 面白かったでしょう~!!
 この二人、実物はすっかり大人なのに、全く違和感なく、大阪の高校生に成りきってて、感心しました。
 あー、やっぱりこれを今年の邦画の一番にしようかなぁ~。

ヤマ(管理人)
◎ようこそ、ケイケイさん、

 うん、とっても面白かった。ちゅうか、何とも可笑しくて仕方がなかったよ~。大阪ならではのローカル色も多分あるんだろうけど、それをはるかに上回る普遍性があって、ほんとに味わい深かったねー。

 花火もガチャガチャも、あの他愛無さがいいよね。んでもって、「カレー初日やでー」と言うオカンにげんなりしているセトが「晩御飯あるだけ、ええやん」と零すウツミに対して「晩御飯ないって、ウソや…」と思わず呟くのを観るウツミの姿にくらっときたね。

 映画日記、読みましたよ。エエわぁ~、これ! こんなん引き出してくれた映画は、そりゃ「今年の邦画の一番」でしょ(拍手)。

(ケイケイさん)
 『SCOOP!』も大好きなんですが、これも捨てがたいです(笑)。大森監督も好きなんですよ。やっぱ映画は監督ですな(笑)。

ヤマ(管理人)
 ケイケイさんの映画日記では、とりわけ「何故他の同級生と、大して変わらないセトを、ウツミが受け入れたのか?」以下に感心。なるほどなぁ、確かにそうやなとセトがウツミに向ける敬意をなぞらせてもらいました(笑)。

(ケイケイさん)
 ありがとうございます~。
「何でご飯ないか、聞かんほうが良さそうやから、止めとくわ」とセトが言った時、あー、ウツミはこの子のこういう、人を詮索しないところが好きなんだなと思いました。

ヤマ(管理人)
 せやのに、エエとこ10個挙げてって言われて1個しか言えんウツミが可笑しいよね~。

(ケイケイさん)
 あんなに戸惑うことないですよね(笑)。

ヤマ(管理人)
 ウツミは、生真面目と言うか几帳面なんだよ、きっと(笑)。

(ケイケイさん)
 確かに頭堅そうですもんね(笑)。ウツミには、詮索されたくない事が、きっとあるんだなぁと。この作品、面白いだけじゃなく、そういう青春のペーソスの滲ませ方が、すごく上手いと思うんですね。そこが、斬新だけど、やっぱり映画だなぁと思います。

ヤマ(管理人)
 なんでウツミがセトを受け入れたかとか僕は考えんかったんやけど、言われてみたら、ホンマそうやと思う。 噂話好きの事情通っぽい奴が近寄って来たとき「あんなぁ、初対面のくせして距離、近過ぎ」と追い払っていた場面が利いてくる「内海想の出会い」やったね。

 「大人になったら、この羨ましいユルイ時の流れが、許されない」
 ほんま、そうやとしみじみ思いますねぇ。あの放課後無駄話の時間って最高の贅沢やと。

(ケイケイさん)
 ですよね~。若い頃は、有り余るほど時間があったのは、全部自分の事に使えたからなんですよね。それって何よりの贅沢だとわかる頃には、遅かりし由良之助なわけですね。

ヤマ(管理人)
 そうそう!(笑) 当時は決してそうは思うことができんのやけど…(笑)。
 二十年近く前に綴った四月物語』の拙日誌この歳になってみると、そのような時間の使い方が許されることの贅沢さが何とも眩しい。と記したことを思い出した。

(ケイケイさん)
 無駄って贅沢なんですよ。

ヤマ(管理人)
 わりっと贅沢な生き方してきてると思います、僕(笑)。

(ケイケイさん)
 いやいや、充分忙しいですよ。そのなかでゆったり、充足して時間があると思えるのは、ヤマさんが時間の使い方が上手いからですよ。

ヤマ(管理人)
 ありがと。

 「この作品を観たら、この二人以外にキャストは考えられません」
 全く、そのとおり! 僕、映画を観て、この空気感を漫画で出すのは難しいんちゃうやろかと未読の原作漫画のことを思ったりしたくらい(笑)。先に映画を観てしまったから、 今から原作漫画を読んでもきっと菅田池松のセトウツミのイメージで読んでしまうやろなぁ。

(ケイケイさん)
 ここでちらっと原作読めますよ。断然映画のほうがいいです!

ヤマ(管理人)
 まるまる第1話やんか! こりゃ断然、菅田池松版のほうが上やね。

(ケイケイさん)
 でしょう! 他の方にもご紹介したんですが、断然映画やって。

ヤマ(管理人)
 そりゃ、そうやろなぁ(笑)。

(ケイケイさん)
 この二人、あの映画この映画で、ラブシーンから濡れ場から、お尻見せて頑張っているのに、この作品での少年っぽさというか、童貞臭というか(笑)、こんなに演技上手かったのか・・・と改めて思いました(笑)。

ヤマ(管理人)
 なんとゆうても、漫画版にはない愛嬌が菅田池松にはあるもんねぇ(笑)。
 また、誰しも続編のこと、考えるんやなぁと思わぬ一致にニンマリした。mixiにも書いたけど、何やずっと観てたい気分に誘われるからなんやろねー。

(ケイケイさん)
 まだまだこの子たちを見たいヤマさんへ!(笑)。カットされた映像が公式HPで観られます。

ヤマ(管理人)
 ありがとう。いやぁ、エエわ、このアホさ加減(笑)。

(ケイケイさん)
 これも何でカットやろ???と思うくらい、面白いですよ。

ヤマ(管理人)
 ケンダマもタイミングも、スタンディングオベーションも、おもろいけど漫才っぽさが強うなり過ぎててネタっぽいから、ボツにしたんやと思うよ。ええ判断やと思う。編集もなかなかのもんやったんやなぁと改めて感心(礼)。

(ケイケイさん)
 あぁ、なるほど。普通にコントみたいですもんね。映画にあった、ペーソスみたいなのは、カット版にはないから。
 そうか、そういうふうに編集の上手さを見極めるんですね。勉強になりました(*^_^*)。

ヤマ(管理人)
 大阪の子だけ?との問いについては、高知では定型には至ってないって感じかな。僕が彼らの年頃の時分にも「する子」はいた気がするけど、誰もがってほどじゃなく…(笑)。うんうん、見覚えあるってなくらいの感じ。

(ケイケイさん)
 丸山さんが教えて下さったんですが、『あたしンち』という漫画で、やっぱりドヤ顔して娘がタバコ吸う場面があるとか(笑)。全国共通ドヤ顔シーンという事で(笑)。

ヤマ(管理人)
 そうなんやね。ってことは、古いテレビかなんかで誰かがやっとったんやろなぁ。「狭く深いのと浅く広いのとではどっちがいいと思うか」のあいつは、確か、わりとよくやってた気がするけど(笑)。

(ケイケイさん)
 私ね、菅田将輝ももちろんいいんですが、若手俳優のなかでは、だんぜん池松壮亮が好きなんです。この子、レスリー・チャンになれると思いません? ねっ?ねっ?(笑)。

ヤマ(管理人)
 けっこうセンシティヴな感じ、あるもんねぇ。でも、じゃあ、若くして死んじゃうの?(たは)

(ケイケイさん)
 いやいや、それはあかん(笑)。美意識はそんなに高そうじゃないから、池松君は大丈夫じゃないですか?

ヤマ(管理人)
 池松くんはねぇ、僕は紙の月だったなぁ、注目したの。そのあとぼくたちの家族を観て、拙日誌に『紙の月』の光太に通じる味わいの率直さがなかなか印象深く、また効いていたように思うと書いたように、ちょっと贔屓してるんだけどね(たは)。

(ケイケイさん)
 この子ね、若手では映画好きに好かれているみたいです(*^_^*)。

ヤマ(管理人)
 そうなんだ! 知らなかった。

(ケイケイさん)
 まぁ、子供の頃から観ているから、それもあるかな?
 何を演じても上手いんですが、カメレオン的ではなく、「池松壮亮」なのがいいです。ちょっとここらで、芸域を広めるため、同性愛の役もやってもらわねば(笑)。

ヤマ(管理人)
 無伴奏でやってるよ、斉藤工と(笑)。拙日誌も綴ってます。

(ケイケイさん)
 そうなんや(笑)。『ブエノスアイレス』をリメイクするなら、相手役は誰がいいか?と、FBで話が出たんですが、トニー・レオンの役は、斉藤工でもいいかな(笑)。
 芸域と言えば、今日は『ミュージアム』を観てきましたが、妻夫木聡、いいんですよー。もう楽しみながらやっていました。伸びしろがあるという言い方は、彼にはもう失礼ですが、もっと大きくなりますよ。

ヤマ(管理人)
 彼が目に留まったのは、僕は『ウォーターボーイズ』ではなくてジョゼと虎と魚たちだった覚えがあるなぁ。あと涙そうそう

(ケイケイさん)
 あっ、私も「ジョゼ虎」です。その前後、いつまでも高校生の役やらされて、可哀想だなと思ったりね。そう思うと、今は菅田将輝や東出昌宏、佐藤健や岡田将生、染谷将太など、たくさん若手がいますよね。安藤正信も、30くらいまで、高校生やらされてましたもん。

ヤマ(管理人)
 いずれも日誌綴っているばかりか、ケイケイさんとも談義してもらって採録してあるよねー。
 あ、そうそう、悪人もよかったなぁ。

(ケイケイさん)
 あの時分は、掲示板でよくお話しましたね(*^_^*)。
 私も『悪人』観たとき、アイドル的扱いから脱却していくんだと、感じました。それ以降、大人の役者として進境著しいし、彼にとってターニングポイントになった作品は、『悪人』だったように思います。



推薦テクスト:「ケイケイさんmixi」より
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953848532&owner_id=1095496
編集採録 by ヤマ

'16.11. 6. 民権ホール



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