『エデンより彼方に』をめぐって | |
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◎掲示板『間借り人の部屋に、ようこそ』過去ログ編集採録 4007 合宿した気分ですね 2003/12/11 12:09 4011 「エデンより彼方に」 2003/12/12 12:15 (TAOさん) ヤマさん、みなさん、こんにちは。 前回の更新では、『エデンより彼方に』についても触れたかったのに、『トーク・トゥ・ハー』にかかりきりですっかり忘れてました(笑)。合宿した気分ですね。 ヤマ(管理人) ようこそ、TAOさん。 これまた、ジェンダーもコミュニケーションも大きな主題となっている作品ですものねー。楽しみにしてます。 日誌を再読してみたんですけど、褒めすぎですかね(苦笑)。 (TAOさん) ふふ、予告なんかしたので、ヤマさん、脅えていますね(笑)。 ヤマ(管理人) そりゃあ~~~もう!(笑) TAOパンチ炸裂か?!っと(笑)。 (TAOさん) いえいえ、反論ではありません。 ヤマさんの日誌からは、ヒロインを当時としてはとてもリベラルで勇気のある女性として描いている作品だという印象を受けました。それで、あれ?と思ったのです。 ヤマ(管理人) そうですよ、だって、ムーア=慶子さんなんですもの。「リベラルで勇気のある女性」なんです(笑)。 (TAOさん) 私には、むしろシニカルな印象が強かったんですよ。恵まれた中流家庭の奥様の美質なんてものは、いかに欺瞞であり、… ヤマ(管理人) おおー、来ましたね、TAOパンチ!(笑) 勿論そういうふうにも解釈できますね。 ですが、キャシーは分別は欠いてますが、筋は通したように僕は思うんですよ。だから、欺瞞は酷かなって(笑)。 (TAOさん) リベラルだと言っても所詮底が知れた中途半端なもので、世間に対して無知だからできることで、なまじ善意による行動がいかに始末が悪いことになるか、とか(笑)。 ヤマ(管理人) 一言も返す言葉ありません。そのとおりです。僕が「ある意味、罪深かったのかもしれない」と綴ったことには、そういったことも含まれていると解していただいて結構です。異議な~し(苦笑)。 (TAOさん) 映画としても、美しい見かけに合わず、ずいぶん怖い映画だなあと思ったのです。 ヤマ(管理人) ふむふむ、なるほど。 (TAOさん) この監督、『ベルベット・ゴールドマイン』では、グラムロックの精神をワイルドの系譜に位置づけたい気持ちはわかるものの、ちょっと強引すぎてまとまりつかず失敗してましたが、今回はずいぶん腕を上げたもんですね。 ヤマ(管理人) でしょ、だから、欺瞞まではな~ってちょび懐疑(笑)。 (TAOさん) とにかくかなりシニカルな視点が底流にあって、それがこのメロドラマをただの懐古趣味や退廃に終わらせず、スリリングで今日的な作品にしている気がしました。 ヤマ(管理人) 作り手に対しては、こう解するほうがより高い評価を与えることになりますね。でも、『ベルベット・ゴールドマイン』から察して、そこまではいかないんじゃないかと、 (TAOさん) 納得納得(笑)。 ヤマ(管理人) 僕は、むしろ作り手に対してシニカルだったのかもしれませんね(笑)。まぁ、キャシーとトッド、どっちに対してシニカルに臨む気になるかと言えば、そりゃあもう、僕のなかでは迷いはありませんよ(笑)。 (TAOさん) いいなあ、ヤマさんは迷いがなくて(笑)。でも、慶子さんに理解を寄せる男性って貴重ですよ。 ヤマ(管理人) そうなんですか?(およ) 僕、『卓球温泉』でもNHK大河の『毛利元就』でも、『さくや妖怪伝』でも見惚れてましたが…。もっとも、なかにし礼プロデュースの写真集を求めるほどには入れ込んでませんでしたけど(笑)。 (TAOさん) やだなー慶子さんって、松坂慶子のことだったんですね。 ヤマ(管理人) 僕においては慶子は、松坂慶子以外に認知しておりません! 恵子なら、高橋恵子(笑)。 (TAOさん) さんづけだったので、私はてっきり「花田景子さん」のことかと…(笑)。 ヤマ(管理人) これはまた、大ぼけどころかウルトラぼけですねー(大笑)。僕、花田景子さんって名前は判るけど、風貌が思い浮かびません。貴関の奥さんでしたっけ? (TAOさん) あ、ジュリアン・ムーア=松坂慶子説、わかりますよ。あのポチャポチャっとしたジューシーな女っぷりが似てますね。 ヤマ(管理人) それ!それ! それですよ。 (TAOさん) えーん、字が違ってるのに気づかない私が大ぼけでした。あれも、いちおう筋は通したといえるのかなあ、ヤマさんってなんて寛容なんだろうと感心したんです。 じゃあ、私はトッドを信用すると言うよりは、偶然の巡り合わせを祝福することにしようかな。脚本と監督の資質と役者の巡り合わせによって、実力以上のものがたまたまできてしまった、ってことに(笑)。 ヤマ(管理人) そういうことって、ホント、ままあるような気がしますよね。映画にも限りませんけど。 (TAOさん) シニカルといっても、ヒロインを哀れな女と見下してるのではないんですよね。下手すると共感すらできそう。 ヤマ(管理人) ええ、僕はシンパだと白状します(笑)。 (TAOさん) シニカルで冷静な視点が、スパイスとしてピリッと効いてるんです。 ヤマ(管理人) トッド、感涙の図ではありませぬか!(笑) (TAOさん) つまり、着るものや食べるものにあーだこーだとこだわり、消費生活をご気楽に楽しみながら、ときには社会の矛盾を憂えたりする自分は、このヒロインとどこがちがうのか、ということに思い至ってしまう。 ヤマ(管理人) ここに思い至るのが流石ですね。僕は所詮ただのシンパで、我がことのように内省する視点を持てないままでしたから。 (TAOさん) それはたぶん、仕事柄のせいもありそうです。偽善云々よりも、スタイル優先的な部分でですが。 ヤマ(管理人) なるほど。ちょっと舞台裏が透けて見えてる分、敏感になっちゃうんですね。 (TAOさん) 考えてみると、80年代に社会人になって以来、ライフスタイル提案と称したコマーシャリズムの先棒を担いできたわけで、キャシーの絵に描いたような素敵な暮らしに、必要以上の空虚さを感じてしまうんですよねえ。 ヤマ(管理人) なるほどね。そのへんは僕にもありますよ。ただし、僕の場合、貧者の僻みじゃないのかって説もありますが(笑)。にしても、二十年に渡ってというのが凄いですね。そーか、特に女性のライフスタイルというのが、いかにコマーシャリズムによって誘導されているものなのかってことに、敏感にならざるを得ないってことですか。 (TAOさん) そのくせ、うーん、このスカーフとドレスの色合わせは完璧!とか、毛皮の襟巻きとサテンの長い手袋が素敵!とか、本気でうっとりしている自分もいて、シニカルにならざるを得ないのです(笑)。 ヤマ(管理人) あはは、これ、意識を過剰に働かせてしまわざるを得なくなる、シニカルの循環亢進の見本みたいなもんですね(笑)。 (TAOさん) これを計算尽くで演出したのだとしたら、トッドもたいしたものなのですが。 ヤマ(管理人) そうですねー(笑)。 (TAOさん) だって、『ベルベット・ゴールドマイン』はスタイル至上主義への礼讃だったわけですから、意図的だったとしたら、したたかですよね。 ヤマ(管理人) なるほど! だから意図してないとも限らないと。映画の作りにおいては今回も凄くスタイリッシュですものねー。 (TAOさん) とはいえ、私もそこまで買いかぶる気はしません(笑)。 ヤマ(管理人) やはり幸福な出会いだったと(笑)。 僕、トッドにこれ見よがしの趣味に走るだけにはさせない自重を促したのが、実はジュリアン・ムーアの演技と笑顔だったのじゃないかと語って思わず失笑を誘ったんでした(笑)。ムーア買いかぶり?(苦笑) (TAOさん) いえいえ、私もその線はありだと思いますねえ。 ヤマ(管理人) トッド悩殺の図(笑) (TAOさん) ジュリアン・ムーアは何をやっても凄いなと思いますよ。花も実もある役者さんで、今が遅咲きの旬なんでしょうね。『ハンニバル』みたいなすでにイメージの固まった損な役でも引き受けちゃうところも好きです。 ヤマ(管理人) そうですね。あれ、誰もやりたがらなかったって話でしたよね、よく知りませんけど。 (TAOさん) 損と言えば、シャロン・ストーンの『グロリア』も損な役ですよね。 ヤマ(管理人) そーだ、そーだ、『グロリア』だった! ジーナ・ローランズのやった役を演じて、ヒールのせいでへっぴり腰になった婆ぁさんスタイル、かなりトホホでしたね。 (TAOさん) シャロン・ストーンが『デブラ・ウインガーを探して』で、「私だって(ジュリアン・ムーアやケイト・ブランシェット)に負けずにがんばるわ」と言ったのには、のけぞりましたけど(笑)。頼むから、あんたは役者をやめなさい、と私は言いたい。 ヤマ(管理人) TAOパンチ、炸裂どころか、爆裂ですな(笑)。 (TAOさん) ヤマさん、『デブラ・ウインガーを探して』の映画日誌に「シャロン・ストーンの貫禄に感心しつつ、彼女が女優として自分を落ち込ませるような演技巧者の名に挙げたジュリアン・ムーアとケイト・ブランシェットに納得を感じた」とお書きですが、あれは「貫禄」なんてものじゃなく、ただの恥知らずです(笑)。 ヤマ(管理人) これは、これは(たはは)。 (TAOさん) ジェーン・フォンダはまさに貫禄でしたね。 ヤマ(管理人) あ、これと比較するから爆裂パンチになるんだ! シャロンをジェーンと並べちゃ、そりゃ酷というもんですよ(笑)。 (TAOさん) 自分にスポットライトを集めようとするあのパワー、女優ってやっぱり怖い。 ヤマ(管理人) 怖いっていうよりゃ、僕は感心してましたけどね~。でも、怖いくらいのパワーであることは間違いないですね。 (TAOさん) 私は謹んで敬遠させていただきましたが(笑)、 ヤマ(管理人) あのへっぴり腰走り、それはそれで笑える見物なのに(笑)。 (TAOさん) シャロン好きの映画評論家・秋本鉄治さんが公開前に「共に石つぶてを受ける覚悟」と悲壮な決意を表明していたのには、じつにあっぱれと思いました。 ヤマ(管理人) これ、妙に可笑しいけど、なかなか天晴れですね、確かに。僕にそういう支持作品ってあったっけな?(笑) (TAOさん) じつは私も『ラストサムライ』はその覚悟で臨むつもりだったのに、 ヤマ(管理人) トムくんですね、トムくん。『アイズ・ワイド・シャット』の座談の最後は、確かトム談義だったような気が(笑)。 (TAOさん) 蓋を開けてみると意外や評判がいいので拍子抜けしました。うれしいような、ちょっとさびしいような…(笑)。 ヤマ(管理人) 確かに。『ラストサムライ』、かなり評判ですよね。トムくん出てる、日本への勘違いありそう、鳴り物入りって、ケナシを誘う三拍子が揃っているようなものですもんね(笑)。悲壮な決意が空回りしたんなら、落ち着きどころにしばし狼狽えますねぇ(笑)。 (TAOさん) 『エデンより彼方に』が偶然なのか、意図的なものなのかは、次回作を見て決めるとしましょう。 ヤマ(管理人) おおー、これまた次作が楽しみな監督になってきましたね、僕も(笑)。 4013 デブラ・ウィンガーを探して 2003/12/12 14:19 (グロリアさん) シャロン・ストーン、可愛らしさが出ててよかったですよね! ヤマ(管理人) ようこそ、グロリアさん。ちょっとぶっちゃってるとこ、可愛いと言えば、可愛いってことになるんですかね(笑)。 (グロリアさん) わたしは彼女けっこう好きなんです。 ヤマ(管理人) 意外としっかりしてて向上心高く生きてきてるんだなーって、妙な言い方ですが、感心してました(笑)。 スクリーン外でのことって何も知らないんですが、脚光を浴び始めたときの出方がキワモノめいてましたからね。 (グロリアさん) 腹黒くないというか、正直というか、そういうのが現れてて。 ヤマ(管理人) なるほど。率直な感じはありましたね、確かに。 (グロリアさん) ヤマさんが日誌のなかで触れられてたテレサ・ラッセルとテリー・ガーのコメントは、わたしも印象に残ってます。コメントもだけど、2人の老けぶりというか崩れぶりが激しくて驚いてしまいました。 ヤマ(管理人) ええ、加齢がっていうことではなくて、何か精彩を欠いている感じがちょっと淋しかったですね。 (グロリアさん) ハリウッドのプライオリティーが若さ、美貌、セクシーさで、それがないと無価値も同然みたいなシビアさもリアルに伝わってきたけど、よく考えると日本のほうがもっとひどいような気がします。 ヤマ(管理人) 状況がそうだからってことでしょうが、女優たちが自らの内でも非常に強く囚われていたように感じました。 日本のほうがひどいかについては、僕は、自分があんまり小娘に興味がないもんでそうとも思えなかったりするんですが、そういう傾向はあるような気がしつつも、アメリカほどじゃないようにも思ったんですけど、そうなんですかねぇ。 (グロリアさん) 最近、24~5歳で「とうがたった」扱いですもん・・・ ヤマ(管理人) こんなん前から言葉の上では、口の端に登ったりしますが、多分にネタ的軽口って気がしますよ、男の側が使うときは。女性同士では、けっこうマジみたいですけど。それに江戸の昔は、もっと若くして年増と呼ばれてたらしいですよ(笑)。 (グロリアさん) まだ成熟した大人の女の魅力を認めているハリウッドのほうがわずかにましかも・・・ ヤマ(管理人) いや、日本でも男たちはけっこう認めていると思うんだけどな~。 (グロリアさん) フランスみたいに大人の文化が大手を振る社会にはなれない幼稚な国なんですね、日本って・・・ ヤマ(管理人) ま、あそこの国はまた特に際立って、若いのなんか小娘扱いって感じはありますよね。 実際のところがどうなのかは僕も知りませんけど(笑)。 4109 『エデンより彼方に』 2004/02/01 18:19 (ローズさん) ヤマさんお薦めの『エデンより彼方に』DVD鑑賞しました。 ヤマ(管理人) ようこそ、ローズさん。すごく作り込んでたでしょ(笑)。 あの監督さんの作品にはそういう傾向があるみたいです。でも、そこんとこが今回これ見よがしにも見えなかった功績は、僕は、ジュリアン・ムーアにあったんじゃないかと密かに思ってます(笑)。 (ローズさん) 50年代アメリカのメロドラマってこういう風だったのねえ~。色彩豊かな映像、華麗な衣装、俳優のオーバーアクションを堪能しました。『めぐりあう時間たち』とは正反対のキャラクターを劇画チックな演技で真摯に演じるジュリアンに惚れ惚れ。 ヤマ(管理人) 日誌にも綴ったように、歳を重ねてからの松坂慶子に似通って見えたりしたんですが、ローズさんには、そんなふうには映りませんでしたか?(笑) (ローズさん) 松坂さんの映画を観たことないのですが、ああいう芸風なんですね。 ヤマ(管理人) 芸風というか、まぁ雰囲気ですかね(笑)。 (ローズさん) 今は仕事復帰して時間がなくなりましたけど、子育て中は、アメリカのTVドラマをよく見てました。その頃、駆け出しのジュリアン・ムーアを見かけて、透明感があってなんて可愛い人だろうとビビッときました。大女優になっても、その雰囲気のまんま輝いていて好きです。 ヤマ(管理人) 僕は若い頃の彼女の印象というのが余りないままで、最近の活躍ぶりしかしらないのですが、いい女優さんですよね。 (ローズさん) 先日、アクターズインタビューで、ジュリアンが『エデン』の演技方法を語っていて、凄く興味が湧いたので映画を観ました。 ヤマ(管理人) 演技方法って、どういうとこに留意してたんだろ? 邪気のない無垢さと無知とのバランス加減かな。どっちに傾きすぎてもいけないんですよね。 (ローズさん) 興味を持ったのは“演技スタイル”です。 ジュリアン曰く「彼の緻密な映画作りには本当に敬意を払うわ。今回の役は素晴らしい役だった。この国に育った人間なら誰でも経験したことがあると思うけど、土曜の午後にテレビをつけると、必ずこの手の女性が好むメロドラマをやってるの。だから知らず知らずにそういった作品を見ていて、自分が意外にメロドラマについて知っていたことに気付いたわ。」 ですから、私は、メロドラマってかんじで軽いノリで見ちゃいました。 ヤマ(管理人) ジュリアンが“彼の緻密な映画作り”というのは、あの映画を観た誰もがその成果として目にすることのできる映像のことでしょうね。“今回の役は素晴らしい役”というのは、ある種の典型というか普遍性に則ったメロドラマというものを演じてみたかったという思いなんでしょうかねぇ。“自分が意外にメロドラマについて知っていたことに気付いた”というのは、ある種のメリハリ演技というか、そういうとこなんでしょうね。 確かに、言われてみれば、他の作品での彼女以上にそこんとこのメリハリ感は強かったような気がしますね。メイクだけじゃなくって(笑)。 それはともかく、「メロドラマってかんじで軽いノリで見ちゃった」っていうのは、キャシー以上に、フランクにはかなり手厳しいですね(笑)。 (ローズさん) あらら、文章に書くと、どうしても、そうとれちゃいますね。「好きなように生きればいいじゃん」ってかんじかなあ。 フランクとおなじタチの、小学校時代の幼馴染みがいますが、彼は、素直に自然に、同性の相手と仲よく暮らしています。周りの友人たちも意識することなくふつうに付き合ってます。 ヤマ(管理人) 最近はそうですね。僕の知り合いにも何人かカミングアウトしている方がおりますよ。 で、メロドラマと言えば、まぁ、昼メロなんかでもそうらしいですが、主人公の夫っていうのは、そうした役回りではありますね(苦笑)。でも、幼い子供の視線もあるなかで、うなだれ嗚咽を漏らしていたフランクには身勝手とばかりは言えないものを僕は感じましたよ。子供のためにも夫のためにも、その姿を見せちゃうのは酷だとばかりに子供を階上に追いやるキャシーの図は、確かに典型なんですが、母および妻としての全く以て普遍的な姿だろうと思いますねぇ(笑)。当時の典型と当時不可能だったことのハイブリッド映画なんですね。 (ローズさん) あの夫は罪深くて身勝手。分かっていながら結婚して、やっぱ抑えることができないわけで。そのくせ、妻が男と会っただけで世間体を気にして激怒。あげく、好きな人できちゃったからと離婚でしょ。派手な洋服着てバレバレで異性と逢う妻も妻だけど、あんなパパとママだったら、私だったらやってらんないなあ(爆)。 ヤマ(管理人) 確かに子供は災難ですよね(苦笑)。 僕には、誰が悪いわけでもなくして起こった家庭崩壊と見えましたし、フランクにしろキャシーにしろ、ああなると装い演じて家庭生活を営みようもないでしょうから、いいも悪いもない、という感じでしたが、子供にとっては実害が及びますから、たまんないとこでしょうね。親としては、もちろん二人とも、その責を負わなきゃいけないわけです。 形の上では、キャシーの側にはフランクがもたらしたものとして免罪的な受け取りができるような設えが施されているところがまた、いかにもメロドラマ的な案配なのかもしれませんね。 (ローズさん) 作品的には、演技はもちろん、色彩、演出、ショットのすべてがデフォルメされていておもしろかった。 ヤマ(管理人) 作り込んでいましたねぇ。 (ローズさん) 大好きなジュリアン・ムーアだったから、鑑賞に耐えました(笑)。 ヤマ(管理人) 映画の技の部分には満足しても、ストーリーというか主役のキャラが合わなかったみたいですね。それだと、ムーアがよくてもイマイチになるでしょうね(詫)。 (ローズさん) デニス・クエイドもほんと上手いなあ。で、この映画ってただのメロじゃなくて、差別が描かれていて、人の心の業がわびしく哀れ。差別の目で見る人のアングルで捉えるショットには怖くてぶるぶるっ(笑)。 ヤマ(管理人) そうでしたね。白眼視っていうのが両側から捉えられていたのにも感心しました。 (ローズさん) ほんと、あの捉え方にはびっくりで怖かったですね。>周囲の視線 ヤマ(管理人) レイモンドがキャシーを連れて行った黒人バーのシーンをどんなふうにご覧になりましたか? (ローズさん) 物語には、何も感動しませんでした。キャシーは無垢な心の持ち主だけど、それだけではつまらない。恵まれた結婚をして、夫は働き蜂。子どもは「宿題をして。歯を磨いて。TVを見ちゃだめ。寝なさい。」と言うだけで言う事を聞く年頃。思春期がきたらこうはいかない(笑)。人と本気で向き合うキャシーの姿はどこにもない。 ヤマ(管理人) まずあったのは「理想の」ハイソ夫人でしたからね(笑)。それを得、務めている自身に対する満足感みたいなとこで生きてました。 (ローズさん) ハイソな暮らしを選んで世間体を重んじることもよいけど、それはそれで覚悟がいる生き方ですけどね。 ヤマ(管理人) 覚悟っていうかまぁ、確かに難儀そうですね(笑)。 (ローズさん) そして、夫に異変が起こってから、理想だと錯覚していた『エデンの世界』が崩れ始める。 ヤマ(管理人) 直接的にはそのとおりなんですが、崩壊は、夫の同性愛に遭遇する前から兆していましたよね。そういうとこがあったからこそ、レイモンドとの対話が深まっていったのでしょう。 (ローズさん) 生きていれば誰でも経験すること。夫、子ども、友人、心を通わせた相手、すべての人々と本気で真剣に向き合うキャシーの姿は見られなかったし、駅のシーンも醒めた目で観ていました。 ヤマ(管理人) 確かに、ある面いい気なもんだって見えても来るキャラではあります(笑)。レイモンドにも指摘されてましたしね。でも、僕は、そのいい気さ加減だけには流れず、彼ら二人にはそれぞれ、結果責任というか、責任転嫁や逃避に走らない「引き受け」感があるのが好もしかったですね。まぁ、ムーアの雰囲気に魅了されていたまで、とも言えますが(笑)。 (ローズさん) 人種差別だけでなく、日本人だって人が集まれば差別が発生して「すぐに壊れるうそ臭いモラル」ができて、差別しないことも差別になる人の愚かさ。無垢なキャシーの行動でさえ大切な人を傷つけてしまう。 ヤマ(管理人) そうですねー(ほとほと)。 差別しないことも差別になる人の愚かさというのは、エレノアとの場面のことですか。痛烈でしたね。 (ローズさん) エデンより彼方に行き着いてしまったキャシーは、透き通った心のままで映画は終わる。50年後の今、これほどあらかさまではなくても、人の心の奥底は変わらないのかも…。 ヤマ(管理人) 隠蔽されている分、却ってタチが悪いような場面もたくさんありそうですね。 (ローズさん) ほんと、人間の本質は変わらないですね。自分も家族も生きていれば辛いことや悲しいことを色々経験します。それぞれが、自分が大切にしたい『真実のエデン』を見つけられたらいいなっておもってます♪ ヤマ(管理人) 家族それぞれが家族との関係のなかだけでは見つけられない場合の多いとこが、人生の悩ましさでしょうね。その際のキーワードは「応分」感覚ではないかと僕は思ってます。人それぞれの器量、欲求、環境によって、その絶対値は異なるんでしょうが。 一度染まってしまった部分は、なかなか変えがたいものでしょうが、染まらないうちに、染まりにくくするようなコーティングを施すことは不可能ではないような気がします。かと言って全く染まらないわけではないやむなさがあるんでしょうが、染まりにくさを施しているといないとでは随分と差があるように思ってます。認識が甘いかもしれないけど(苦笑)、自分はせめてそうありたいな、とか思ってますね。 (ローズさん) 言葉の魔術師@junkさんがコスチューム劇と表現してましたが、うまいですね! ヤマ(管理人) 時代劇ですか、ふーむ(笑)。 五十年前ですから、衣装風俗は変わってきているものの、その年代に生を受けた者としてはねぇ...(苦笑)。 (ローズさん) ヤマさんてば、なにをおっしゃいますやら。わたしも40代ですわよ。どーしましょ。うぷぷ。 ヤマ(管理人) あらら、そうでしたか。お仲間だ(笑)。僕は、日誌にも書いたように、ちょうどキャシーがレイモンドを駅で見送った頃に生まれたことになりますから、ね(笑)。 (ローズさん) あ、コスチューム劇は、時代劇でしたね。この映画の場合のコスチューム劇のイメージは、50年代メロドラマを、華麗に、贅沢に、緻密に描かれたオマージュ劇というかんじで使いました。 ヤマ(管理人) 僕の観た上映会の主催者が言ってましたが、ダグラス・サーク監督の当時の作品へのオマージュ映画らしいです。 (ローズさん) 衣装もインテリアもど派手で軽い眩暈が~(笑) お芝居も型にはまっていておもしろかったですね。 ヤマ(管理人) このへんがトッド・ヘインズの凝り性的持ち味で、それ以上の味わいを残したのがジュリアン・ムーアの功績だと僕は思ってますよ(笑)。 まぁ、ジュリアン・ムーアがコスチューム劇向きか否かはともかく、これで思い出したことがありますよ。拙著にても紹介したものですが、『オルランド』を観た友人が主演のティルダ・スウィントンについて「いかにも十五、六世紀の肖像絵画に見られるような時代的な顔立ちでなかなかよかった」と話してたことがあります。そういうふうなのってありますよね。現代劇がピンと来ない里見浩太郎とか(笑)。 (ローズさん) あはははは、ほんと、ほんと。挙げだしたら、いっぱいいそうですね~。 そうそう、逆も発見しました。『新選組』を見ていたら、現代劇では、お洒落なヘアースタイルでイケてたのに、カツラ顔になったら、吹き出してしまった俳優がいました。どちらもオッケーな役者ってすごいことなんですね。 4112 『PERFECT BLUE』 2004/02/03 08:00 (シューテツさん) ヤマさんお久しぶり。 あっ、ジュリアン・ムーアの話、ヤマさんに言われてから「ああ、そういえば(松坂慶子に)似ているかも、いや似ているじゃないか」と変化して来ましたよ。f^_^;; ヤマ(管理人) ようこそ、シューテツさん。共感していただけましたか(笑)。 僕自身の加齢ということもあるのでしょうが、近頃は若い女性よりもそれなりの成熟を感じさせてくれる女性のほうに惹かれますね(笑)。若い女性はイヤだというわけでもないんですが(笑)。 (シューテツ) 勿論そうでしょうとも、御同輩(笑)。 若い女性に対する興味が無くなるというより、年齢とともにその興味の年齢幅が広がるという感じですよね。f^_^;; ヤマ(管理人) 僕の場合、単純に広がるってのでもなく、ややスライド傾向にあります。もしかしたら今後は若干狭まるかもしれないと思われるのは、僕に娘がいるからでしょうかね(苦笑)。 4173 リンク 2004/02/22 15:34 (人魚さん) 『エデンより彼方に』はマイベストテンに入れました。 ああ・・今50年代をこんな風に撮れるのだ~オリジナルのサーク作も友人からのコピーで見られ比較することができました。サークは以前から興味ある監督です。 ヤマ(管理人) ようこそ、人魚さん、こちらこそありがとうございました。 これ、拝借したテクストによれば、『天はすべてを許し給う』の物語を翻案する際に『悲しみは空の彼方に』のテイストを持ち込んだという実に意匠を凝らした作品だったようですね。さすが凝り性のトッド・ヘインズ、面目躍如たるものがありますよ~(笑)。 美術や衣装、カメラだけじゃなかったってことですよね。でもって、原題は『天はすべてを許し給う』に同じなんでしょう? とすれば、『エデンより彼方に』って邦題も洒落てますよね。 |
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by ヤマ(編集採録) | |
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