街角で　信号を待っていたら

ヒューン　ヒューン　北風が吹いてきた

おやっ　気づいてみたら

四十年前の　コートを着ていた

グレイーのコート　丸い襟　裾広がり

乏しい小遣いで　買ったお気に入り

あれっ　信号を渡る時　

今の　おばさんコートに　戻っちゃった

人生の旅路に　脱ぎ捨てたコート

季節の風にあおられて

ふんわり　肩に止まった

懐かしい香り　甘い想い出　

ほんの少しの間　ヒュルンと風に吹かれる間

そうよ　確かに二十歳(はたち)前の私だったわ

帰り道　見上げると半月(つき)が出てた

ヒューン　ヒューン　北風が追ってくる

ブーツ　引きずり行けば

足音の谷間に　昔が響いた　

グレイーのコート　三本の　飾りミシン

従弟と伊丹空港(くうこう)で　撮った写真は

赤い　スカーフがはみ出てた

若く　ふっくら笑顔が　はじけているの

人生の旅路に　脱ぎ捨てたコート

季節の風にあおられて

こっそり　肩に止まった

あのころは　わざと　北の新地を

きざな娘よそおって　ヒューンと風を突っ切ったわ

そうよ　若さに苦い思い　ついてまわるわ

そうよ　若さに苦い思い　ついてまわるわ

今の　コートもいずれ同じ　運命(さだめ)持つのね

胸が　何だか熱くなった　熱くなったわ