aozora of KOTANI Art Works2

　この作品は、7メートル四方で天井まで6メートルある空間に一辺が2メートル90センチの正八角形をした壁面を黒い布で作り、巨大な暗い八角柱型の縦穴に落ち込んだ様な錯覚にとらわれる空間を演出する。その中では、天井のプロジェクターから真下に向けて降りしきる雨、雲の流れ、上空の飛行機、木漏れ日など空を見上げたときの空で起こる出来事を投影する。この映像は、空中にピントを合わせることで床の上では、焦点の合わないぼけた映像になる。その床面を地面や水たまりと見立て、雨の波紋、人の影、ざわめく木陰など、様々な地上で起こる現象の痕跡を、低い位置からプロジェクターで投影する。空で起こる出来事は、乳白色で半透明のビニール傘を差してその傘の内側から傘に映る映像を見上げる。地面に映る何らかの現象の痕跡と空の映像は、関連するが、時間的にシンクロさせず結果である痕跡を先に投影する。これは、人が同時に上と下を見ることが出来ずこの二つの視覚情報を空のことと地面のことを分けて交互に取り込むこと。そして、誰もが知りえる万人に共通の現象であれば、脳内に取り込まれた時に時間の曖昧さは意味を持たず例えば雨が降り地面の水たまりに波紋が出来たと認識する。そして効果音の雨音やカエルの鳴き声が聞こえるとその認識は確実となる。観覧者の視覚と聴覚から取り込まれた情報と雨の日には、傘を差すと言う行為が経験的に会場のバーチャルな自然現象を曖昧ながら起こりうる現象と理解し心の中の原風景と重ね合わせることで、その人自身の記憶から何かを連想させ過去を思いだしたり、未来を想像したりする。この作品の映像は、観覧者の傘を差すと言うアクションを誘発させる為のものであり重要なビジョンは、観覧者自身の記憶である。この作品は、多数の人が同時に同じ映像や同じ音を聴き同じ空間に存在し他者の存在を認識しつつ、同時に映像は自己の記憶と重なり自身を再確認する空間でもある。

表　現：ビデオインスタレーション
制作年：2006年
素　材：プロジェクター、映像、光、ビニール傘
映像素材：木漏れ日、雨、雪、空などの自然景観3DCG