尺別炭鉱 扇状通気斜坑跡 探検: 北の細道 尺別炭鉱 扇状通気斜坑跡

尺別炭鉱 扇状通気斜坑でライナープレートを探す




北海道釧路市(音別町)

 扇状通気斜坑内の盲立坑はIビームによるリング枠やアーチ枠で支保していた。
盲立坑とは地表に露出しない、地下の坑道同士をつなぐ立坑だ。
Iビーム Iビーム
Iビーム

昭和43年、たまたまこの昇降口付近で大規模な崩落が発生した。
状況としてはアーチ枠が倒壊しており、その対策が検討された。
その結果、ライナープレート工法という方式での対策が採用された。
ライナープレート
ライナープレート

当初は傾斜35から55°に角度が変わる付近で小崩落があり、この部分を固めるために盛土を行ったところ
風洞ながらその部位は狭少となってしまった。

通気確保のために風洞断面拡大の工事を行ったところ、リング枠が移動し副次的に大崩落を誘起することとなった。
扇状通気斜坑は主要排気装置であったために、風量の確保は絶対条件であり崩落ズリの搬出作業が行われた。

この結果、盲立坑部に12mの大空洞が生じることとなり、
二次的な崩落を防ぐために大空洞に円弧のライナープレートを設置、
周囲をズリで固めて強固に固定することを目的とした。

まずは大空洞部分に30kgレールによる梁を渡し、
これを起点に高さ1m、直径3.5mの厚さ2.7oの鋼製亜鉛メッキの円弧型ライナープレートを18枚使用、
崩落個所に内壁を施工したのだった。

工事期間は昭和43年9月17日から11月5日の39日間であった。
工事中の再崩落には注意が払われたが、
実際には岩石落下が発生し、ライナープレートが一部破損する惨事も起こった。

このライナープレートの耐用年数は約20年とされたものの、
事故から2年後の1970(昭和45)年2月27日尺別炭鉱は閉山を迎える。


尺別炭鉱については 選炭場冬季南直坑北卸坑豆炭工場東卸坑 などを紹介してきた。

鉱史については各リンク先を見ていただくとして、
昭和29年3月現在、尺別炭鉱の正式名称は雄別炭礦鉄道株式会社 尺別鉱業所であった。
当時の稼行中の坑口は双久坑と太平坑の二か所であり、
奈多内坑と第一坑は昭和28年10月をもって操業を停止していた。

双久坑は昭和28年3月に完成した新坑であり、
太平坑は昭和29年11月に企業合理化のために稼行を中止している。


坑口比較

  坑口名   海抜(m)   傾斜   延長(m)   日産(t)
 双久坑  134  1/300  2,146  650
 奈多内坑  125  24°  843  ー
 太平坑  154  25°  290.8  200
 第一坑  155  25°  593.7  ー

戦前の尺別炭鉱の通気構成は双久坑及び太平坑の二か所に扇風機が設置され、
排気坑口として流用されていたが、
開発の進んだ戦後は、東卸坑・北卸坑・扇状鉱区の三か所に通気設備が設置されていた。

主要通気設備
  設置個所   東卸第2風洞   北卸通気   扇状通気
 型式  軸流直結 54馬力  ターボ 40馬力  プロペラ 20馬力
 公称容量  2,200m3/min  1,450m3/min  1,000m3/min
 風量  1,020m3/min  1,160m3/min  890m3/min

今回の探索ターゲットはこの扇状地区通気斜坑だ。
尺別炭鉱の一般的な遺構群から更に6.4kmの山中だ。
坑外図
坑外図

坑外図を頼りにほぼ徒歩となるアクセス困難な中、かつての風洞を目指してみよう。

扇風機・鋼管・碍子・・・



Iビーム
Iビーム





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