症例集A
症例 J 鼻炎
50代男性 鼻水がすぐに回復
所見
寒い中仕事をしていたら鼻水がズルズル出てきて止まらなくなった。鼻風邪かな?と本人。仕事が忙しく、この後休むわけにはいかないので何とかしてほしいと来局。
顔色が真っ白でいかにも冷えている様子。風寒症、肺陽虚と判断。麻黄附子細辛湯を通常より少し多めの量を服用させた。
服用後30分くらいで鼻水は治まり、本人も驚いたようで、「漢方薬って良く効くんだね〜」とお礼を言いに訪れてくれた。
その後悪化することなく、元気に仕事を続けられた様子。
今回は症状が出て、すぐに漢方薬を服用したのが良かったと言える。
寒気の風邪など、風寒症は症状の出始めにすぐに服用すると、悪化せずに治ってしまうケースが少なくない。
葛根湯などは常に常備していて、おかしいなと思ったらすぐに服用するのが、風邪を引かないコツである。
症例 K 吐き気
30代女性 朝からの吐き気が漢方薬で治癒
所見
朝から吐き気がして辛い。ナウゼリン(西洋薬)を服用したがぜんぜん効かない。その他にドラッグストアで勧められた漢方薬を飲んだがいまいちとのこと。
この後保育園に小さな子供を迎えに行かなければならないので、診てほしいとのご相談。
ドラッグストアで勧められたものは柴胡桂枝湯であった。方向は合っているが、吐き気と悪心以外に症状はないので、余計なものが入っていない、小半夏茯苓湯に変更。
服用後、気持ち悪さは少し残ったが、なんとか吐き気は治まったので、無事保育園に迎えにいくことが出来た。
翌日にはすっかり回復した。
余談だが、吐き気にはすりおろした生姜が良く効くので、おかゆやうどんに入れて食すと良い。
症例 L 嘔吐
20代 男性 胃寒による嘔吐の改善例
所見
朝から嘔吐。吐ききって胃袋には何も入っていないが、気持ち悪いのが続く。酸っぱいものが込み上げてくる。何を飲んでも効かないとのこと。
平素より少食で、サラダばかり食べていたら気持ち悪くなったと本人。胃寒症と判断し、呉茱萸湯を使用。
服用してすぐに吐き気が消失。陰の物ばかりを食べて胃が冷えて、けいれんを起こした典型例である。
症例 M 腹部の張り
30代女性 腹部の張りと吐き気の改善例
所見
お腹が張って苦しい。少し吐き気がして気持ち悪い。3日間便が出ていない。
食積と便秘による吐き気と腹部膨満感である。
小半夏茯苓湯と平胃散を投与。
エキス剤1服ずつで症状が治まる。
その後溜まった便も解消したとのこと。
症例 N アトピー性皮膚炎
23歳男性 顔いっぱいの湿疹が1カ月で改善
所見
顔面に赤い湿疹。小さいころよりアトピーで悩んでいたが、良くなり、13歳のころに突発性の全身の湿疹を起こしたが、ここ最近は落ち着いていた。
顔面部に赤く滲出性の湿疹。それ以外にも全身に同じような湿疹。肌は全体的に乾燥して荒れている。夜になり、体が温まると痒くなるという。
血熱有毒と判断し、清血熱毒、除湿の漢方薬を与えた。
服用後二週間後来局。あまり変化がなく、まだ夜になると痒いとのこと。除湿薬を増量し、痒みを抑える漢方を追加した。
その二週間後に再来局。明らかに顔面の湿疹が消失。腕と背中に幾分かの湿疹は残っているが、本人も明るく元気に。
薬は継続。その2週間後に湿疹はほぼ消失。
ただし、依然として、肌は荒れて乾燥気味。
今後は補血、補陰薬を中心に荒れて乾燥した肌の改善を目指すことで治療を続けていくこととなった。
若いし新陳代謝もよいために、回復が早かった例である。
また、漢方の治療を始める前に、ステロイドの使用をほとんどしていなかったのも、回復が早かった要因である。
皮膚病の相談では、ステロイドを長期間使用した後に来局される方が多いが、この場合回復期間が長くなるばかりでなく、治療にてこずる場合が多い。
漢方治療に急に切り替えて、ステロイドの使用を急に中止すると、ほとんどのケースで悪化する。
長期間のステロイドの使用で、副腎皮質が委縮して抗炎症ホルモンを自分で分泌出来ないためと考えられる。
このことをきちんと理解してもらい、一時的な悪化を乗り越えての、体質改善が必要で、長期間の治療が必須となる。
理解が得られないケースも多く、漢方薬の服用で症状が悪化したと思われることも少なくない。
皮膚疾患の難しい所以である。
症例 O 慢性の便秘
50代女性 下剤を服用しないと出なかった便秘が解消
所見
いつも1週間位便通がない。さすがにお腹が張って苦しいので、いつも下剤で出している。
血圧が高いため、利尿作用のある薬を飲んで降圧している。
本人はこれが便秘の原因と言っている。
便は硬くて乾燥し、コロコロのウサギの糞の様。
麻子仁丸を投与。
服用後2日で通便。お腹がまったく痛くないと喜んでいた。
1日3回の服用では、逆に便が緩くなるとのことで回数、服用量を減じて調整していくこととなった。
その後、薬の服用量がどんどん減っていった。食生活の改善も同時に指導。毎日ではないが、服用なしでも通便する日があると喜んでいた。
症例 P 膝の痛み
50代女性 膝周りの膨れと痛みの改善例
所見
右ひざがいつも重だるい。歩くときについかばってしまうので、歩くペースがとても遅くなる。ちょっと長い距離を歩くと痛みが出る。
見た感じはむくみがあり、膝周りに水が溜まっている様子。麻杏ヨク甘湯をすすめるも、本人が抗炎症系の薬を強く希望し、1カ月分購入して行った。
1カ月後にあまり効果がなかったと来局。今度は勧められた方を試してみたいとのこと。
1カ月分の服用で再来局。こんどは調子が良いとのこと。
足のむくみも減り、歩き方も以前より良くなったように見える。しばらくは今の薬を続けることとなった。
症例 Q 生理不順
31歳女性 1年来なかった生理が来るように…
所見
多のう性卵巣という診断を受けて、ホルモン治療を1.5年間行った。血糖値が急激に上がってしまい、中止。そのご1年以上生理がない。
生活に問題ないが、漢方治療を試してみてはと母親に勧められて来局。
若いがかなり太っている。ホルモン治療の影響か。去年より1年間生理がない。生理があった頃の生理痛は激痛だったとのこと。易疲労、嗜眠あり。
痰湿、オ血を確認。化痰、活血薬を使用。
1カ月後の来局。服用後イライラが増えたような気がする。便は軟便気味とのこと。
基本的な薬は継続し、疏肝薬を追加。
その後は来局なしで、同じ薬を郵送。4カ月後に無事生理が来たとの報告をいただいた。
症例 R 円形脱毛症
30代男性 ストレスからの脱毛が回復
所見
仕事のストレスから円形性の脱毛。それがどんどん進行し、頭部全体から脱毛するようになり、側頭部以外、毛髪がない状態に。仕事にも行けずに、家で悶々と過ごしていたところ、このままではと、彼の奥さんから連絡があった。
脱毛以外に特に自覚症状はないという。ただ、甘いジュースを毎日大量に飲んでいるという。
肝気欝結、血熱と判断。加味逍遙散の服用と、中国式整体(スイナ)で心身を整えることとなった。甘いジュースは止めるよう指示。
2週間後に来局。脱毛が止まり、精神的にも前回より落ち着いた様子がうかがえる。
4週間後、明らかに発毛がみられ、頭部半分が髪の毛で埋まる。帽子をかぶり、仕事に復帰。
1カ月後に再び来局。一部に円形の脱毛部分があるが、かなり回復。仕事は行ったり、休んだりを繰り返しているとのこと。
薬は継続。
3カ月後、元の髪にもどり、仕事も休まずに行けるようになったと彼の奥さんから連絡があった。
症例 S のどと首の痛み
60代女性 原因不明の痛みが改善…
所見
首と喉の奥が痛む。固定性の痛みではなく、調子の善し悪しがある。湿布を貼ったり、痛み止めを服用しても全く効果がない。
整形外科に行ってレントゲン検査をしたが問題ない。耳鼻咽喉科で検査を受けても何もない。脳神経外科での検査も問題なかった。
「どこも悪くありません。気のせいでは?」とさえ言われたが、痛みはあるし、首の違和感が消えずとても憂うつ。手段がなく、娘さんの勧めで漢方を試してみたいと来局。
かなり強めの鎮痛剤が全く効かないので、筋肉や神経の痛みではなさそう。固定性ではなく、押すと気持ちいいと言う。
調子がいい時と悪い時があり、ストレスがたまり、大変な時は痛みが出るとのこと。背中とお腹がとても張っていて、緊張感が高い。
痛みの原因は分からないので、証で判断するしか手段がない。
肝火上炎と痰濁がみられるので、それらを抑える薬を投与。
痛みの改善とはおよそ縁のない処方だったので、効くかどうかはかけであった。
3日目にウソのように痛みがなくなったとご報告をいただいた。
それにしても、本人が異常を訴えているのに、「どこも悪くありません、気のせいでは?」はあまりにも無責任ではなかろうか。
その間、検査検査でたらい回しにされ、多くの出費を強いられる患者の身になってほしいものである。
本人が痛いと言っていて、ウソをついているわけではないのだから、「問題ありません、どこも悪くありません」は正しい回答ではない。
「検査をしたけれども、痛みの原因は分かりませんでした」「今の技術では、あなたの痛みの原因は解明出来ません」
が正しい回答ではないか?
多くの人に、西洋医学の検査が万能ではないことを知っていただきたく、この症例を挙げさせていただいた。
漢方薬局 <癒しと元気> 048-940-7634 