担当司祭から:2024年2月(バックナンバーはこちら)

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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『証し 日本のキリスト者』

(「道後教会だより」2024年2月号より)

 今回の教会だよりは久しぶりに本の紹介をします。表題は、わたしが偶然本屋で見つけましたが、非常に興味深いので、今少しずつ読んでいる本です。
 この本の著者は最相葉月(さいしょう はづき)という作家で、科学技術と人間の関連性、スポーツ、精神医療、カウンセリングなど幅広い分野を取り上げています。今回紹介するのは、日本のキリスト者の信仰の道のりを、宗教者ではない著者がインタビューしたものをまとめている本です。
分厚い本 と言いましても、この本を皆さんに購入をお勧めするのはためらいます。と言いますのも、この本はカトリック、プロテスタントをはじめとするあらゆるキリスト教の教派の信仰者を取り上げる1,000ページを超える大著だからです。そして、値段が3,180円(税別)であり、一般の方がおいそれと買えるものではないと思います。しかしながら、内容は一人長くても10ページ程度の信仰に関するインタビューですから、少しずつ読むことができるので、ページ数ほど負担は感じないというのがわたしの印象です。
 それでは、この本の特徴について紹介します。この本では信仰者のインタビューを14章のテーマに分けています。それを順番に取り上げると「回心、洗礼、家族、献身、開拓、奉仕、社会、差別、政治、戦争、運命、赦し、真理、復活、現在」です。わたしは現在「献身」の箇所の途中なので、この本の4章途中まで読んだことになります。この本は一つひとつの話が短くても内容が非常に濃密なので、それぞれが印象深いのですが、わたしが今まで読んだ中で特に印象に残ったのは3章の「家族」のテーマのところでした。
 この本の章ごとに、タイトルを説明する一文が書かれています。3章の一文は「神様よりも親が怖かった」です。わたしはこの文章にドキッとしました。以前も書いたことがあり、説教でもお話ししたことがありますが、小学生の頃、わたしは学校よりも教会に通うのが好きでした。けれども、成長するにつれて友人との付き合いもいくらかできるようになりました。その時、問題になったのは日曜日の教会でした。
 中学生までは教会学校の合宿に行っていたので、学校の友達と遊ぶ機会はありませんでしたが、高校生になると友達から日曜日に遊びに誘われることも多くなりました。しかし、わたしは日曜日に教会に行かないのが怖くて、なかなか友達と遊びに行けませんでした。友達からは「一回ぐらい教会に行かなくていいだろう」と言われたのですが、わたしはなかなかそう思えませんでした。それは、教会に行かないと親に後ろめたい気持ちになったからです。その頃、すでに父は他界しており、厳しい父が亡くなったので、ためらわずに教会に行けるかと思ったのですが、そうはなりませんでした。幼少期から両親から植え付けられていた信仰が自分にとって大きな影響力を持ち、それは当時の友人たちが持っていなかったものだと、その時初めて気づいたのです。
 それから、歳を重ね、司祭になっていく過程で、色々な人との出会いを通して、自分の信仰のあり方、考え方も変わっていきました。そのわたしの信仰の道のりを改めて思い出させてくれたのがこの本でした。
 3,000円を超える本を購入することは簡単ではないでしょう。わたしは司祭として本を読むのは大切な学びなので購入できますが、一般の方、特にご高齢の方は物価高騰の中、生活に精一杯で本を読むのも難しい状況だろうと思います。
 けれども、できれば機会があれば、『証し 日本のキリスト者』を本屋、あるいは図書館で見つけて、少しでも目を通していただきたいと思います。間違いなく、本に書かれている方々の信仰体験の中に皆さんの信仰体験に重なるものが見つかるでしょう。自分の信仰体験を振り返るためにこの本をお手に取ることをお勧めします。