担当司祭から:2020年2月

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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四旬節 ― 大斎・小斎について ―

(「道後教会だより」2020年2月号より)

 来る2月26日の「灰の水曜日」から、カトリック教会では四旬節が始まります。四旬節は待降節と違い、始まる時が年によってばらつきがあります。これは、復活の主日は「春分の日(3月21日)以降の満月の次の日曜日」に祝うという決まりがあるからです。
 初代教会の時代は、ユダヤ教で出エジプトを記念するニサンの月(ユダヤ教の暦で3~4月にあたる)の14日を復活祭として祝っていました。けれども、キリスト教がユダヤ教の影響下から離れるにつれて、復活祭を日曜日に祝うべきだという考えが強くなり、その一つとして「春分の日(3月21日)以降の満月の次の日曜日」という祝い方が提唱されて、正式に採用されて現在に至ります。ちなみに東方正教会では今も「ニサンの月の14日」を「復活の主日」として祝っています。
 2月26日から始まる四旬節は4月12日の聖土曜日まで続きます。これは厳密に換算すれば46日であり、四旬節を意味する40日ではありません。それは日曜日が四旬節の日数から除外されるためです。四旬節中の日曜日には栄光の賛歌を歌いませんし、アレルヤ唱も歌いませんが、日曜日はあくまでもキリストの復活を記念する日として保たれるためです。
 さて、四旬節中の務めとして重要なのは「大斎・小斎」の務めです。「大斎・小斎」は満14歳から満60歳までの人が守る務めです。「大斎」とは一日のうちで十分な食事を一度だけ取ることであり、「小斎」とは肉類を金曜日に食べないことです。大斎は灰の水曜日と聖金曜日に行われ、小斎は毎週金曜日に行われます。パンと魚
 もちろん、重労働をされる方や病気の方は十分な食事が必要なために、この規定は免除されます。ただ自分は重労働もせず病気でもないけど、この規定を守るのは大変だと思う方もいるでしょう。付き合いで近所の仲間や友人と金曜日に食事に出かけたとき、「大斎・小斎だから食べる物に制限がある」と言って食事を断るわけにはいかないでしょう。ただ、そうなると自分が信仰を守っていないという罪悪感を感じるのです。そういう方は少なくないでしょう。
 そこで、四旬節で大斎・小斎を行う理由を考えてみましょう。大斎・小斎を行う一番の意義は「キリストの死を悼み、キリストの受難に従う」ことです。教皇(現名誉教皇)ベネディクト16世が回勅『希望による救い』で「毎日の小さな苦労を『ささげる』という」信心業を勧めています。それは「何かを捧げることによって、人はこの小さな苦労を、キリストの偉大なあわれみに差し出す」ことです。若干抽象的ですが、すなわち自分が日々の生活の中で感じる苦しみや辛さを捧げることです。それを特に四旬節の期間中に行うのはキリストの死を思い起こすためにふさわしいと言えます。
 イエス・キリストは神でありながら人間となってこの世に来られました。しかも、十字架刑という最も酷い刑罰によって死なれました。それはまさしく「犠牲」でした。わたしたちはそのイエスの死を自分の心に留め、自分がキリストに倣って生きるためにこの四旬節を過ごすのです。「大斎・小斎」はその一つの大切な方法ですが、日本の社会は教会の決まりを守るのが難しいことも確かです。
 そこで、わたしたちは「自分の苦しみを神に捧げる」ことによって四旬節を過ごすことができます。たとえ、わたしたちの苦しみはイエスの死に到底及ばなくても、自分の苦しみを捧げることはキリストの死を心に留め、キリストに従うために大切なことです。この精神を持って四旬節を過ごすように努めていきましょう。