担当司祭から:2019年12月

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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大学生との関わり

 去る10月13日にある大学の先生と学生の総勢25名が教会を訪問してミサを見学し、その後教会の2名の信者の講話を聞いた後、信者との懇親会を行いました。そして、11月5日にわたしがその大学に赴いて学生たちに授業を行いました。
 このかかわりのきっかけは、今年の2月末に前述の先生が教会に連絡を下さったことでした。そこで先生から「ぜひとも教会のミサを学生たちに見学させていただき、そして司祭の講話を聞きたい」というお願いがあり、今年4月にわたしから先生の研究室に伺い、先生とお話しして、学生が実際に宗教が実践される場に身を置くことによって、宗教というものについての学びを深めてほしいという先生の熱意に打たれ、この申し出を受けることにしました。
 最初、この話を教会の評議会で検討したときは「果たして今の若い人たちがどれほど宗教に興味を持っているだろうか」という声が上がりました。わたしも同じ考えでした。以前書いたように、わたしは現在愛光学園の非常勤講師として中学2年生を担当していますが、宗教に関心を持つ生徒はかなり少数派です。だから、どれだけの大学生がミサに来て、講話を聞いてくれるのか、という不安の方が先立ちました。懇親会
 全てが終わった今言えることは、わたしと教会の信者たちの不安は取り越し苦労だったということです。任意参加でありながら、先生の講義を受講している学生の3分の1に当たる25名がミサにやってきたのは、教会にとって大きな喜びでした。そして、ミサを見学した学生は皆真剣であり、しっかりと信者の講話を聞いていました。そのあとの交流会で生徒の数名と会話しましたが、皆真摯に宗教について学ぶ姿勢を持っていると感じました。
 その後わたしが大学で行なった講義は拙い内容であったにもかかわらず、学生たちはしっかりと聞いていたと感じました。その後に質問を受け付ける時間がありましたが、その中に「教会はすべての人に開かれるという一般的な原則と神父様が直面している現実は矛盾していると思いますが、神父様はどうお考えですか?」というとても的確な質問がありました。
 この質問に対して、わたしは「今の教会に『何ができて、何ができないのか』を見極めて、できることを身の丈にあったやり方でやることが大切である」と答えました。現代の教会は高齢化しており、また少子高齢化社会の日本において、これから信者の数が劇的に増えるのは考えづらいです。それを踏まえた上で教会にできることは何かを模索していく必要があると思っています。
 それと共に、結婚式はほとんどない反面、葬儀が増えていく現状にあって、「遺族の意向をできる限り尊重して、キリスト信者でない人たちにキリスト教のことを伝える機会としたい」とも答えました。
 今回の大学生たちとの関わりは道後教会にとっても、わたしにとっても大変良い機会となりました。教会に関わりのない若者たちがミサを見学し、キリスト教について学ぶのは、道後教会において非常に貴重な機会でした。学生たちのコメントには「教会のミサはなんとなく近寄りがたいと思っていたが、実際見学してみたらとても良かった」と書いてあったのはとても印象的でした。わたしとしても、学生たちに宗教を伝える機会がこのような思いがけない形で与えられたことを感謝したいと思っています。
 折しも教皇フランシスコが来日される時に、大学生たちがキリスト教に触れたのは良い機会だったと思います。それはキリスト教についての知識を持ってもらうことで学生たちの視野が広がり、現代社会で起こっている様々な出来事を考えるきっかけになることを希望しています。これからこの大学の学生たちが歩む道のりが実り豊かであることをわたしと教会の信徒一同は心から願っています。