担当司祭から:2019年5月

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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聖母月とロザリオ

(「道後教会だより」2019年5月号より)

 カトリック教会では、毎年5月を聖母月と定めています。マリアに対する崇敬は初代教会の時代からあったので、聖母月も歴史が古いかと言えば、そうではありません。起源は18世紀のイタリアですが、その由来は諸説あるので一つだけ紹介します。教皇ピオ7世がフランス皇帝ナポレオン1世により幽閉の身となり、苦難の時を過ごしました。しかし、1814年のナポレオン失脚後、教皇はローマに帰還できました。これを聖母の取り次ぎとして、5月24日「キリスト信者の扶助者・聖マリア」の祝日を制定したのが始まりだとされるものです(この祝日は現在祝われていません)。
バラの花 聖母にささげる祈りはたくさんありますが、最も代表的なものは「ロザリオ」です。「ロザリオ」はドミニコ会の創立者聖ドミニコが異端と戦っている時、聖母マリアからの啓示を受けたのが始まりであるとされています。「ロザリオ」という言葉はラテン語で「バラの冠」という意味です。道後教会の柱に飾られている大きなロザリオ
 ロザリオの祈りを唱える時は「喜びの神秘」「苦しみの神秘」「栄えの神秘」「光の神秘」という意向のうちのいずれかが選ばれ、その日の意向として唱えられます。それから主の祈りを唱え、アヴェ・マリアの祈りを10回唱えてから、栄唱を唱えます。これが1連です。これを5回くり返して1環となります。
 ロザリオの祈りには4つの意向がありますが、「光の神秘」は聖ヨハネ・パウロ2世教皇によって制定された比較的新しいもので、ロザリオの祈りは伝統的に「喜びの神秘」「苦しみの神秘」「栄えの神秘」の3つから成り立っていました。この3つの神秘を全部唱えると、アヴェ・マリアの祈りを150回唱えることになります。この150という数字に重要な意味があります。150とは旧約聖書の『詩編』の章の数と同じです。
 詩編は、主日のミサの中で「答唱詩編」の時に歌われますが、教会のミサの中で唱えられることもあります。『教会の祈り』は第二バチカン公会議以降、信徒も唱えることができるようになりましたが、かつては司祭・修道者が日々の勤めとして唱えていました。だから「教会の祈り」のことを別名「聖務日課」と呼びますし、現在もそう呼ばれています。
 しかしながら、昔は文字が読めない修道者もいました。ドミニコ会の会憲には「修道者たちは聖務日課の代わりにロザリオを唱えると定められていました」(今はありません)。ですから、ロザリオは聖務日課の代わりとなるほど大切にされてきたのです。
 そこまでロザリオの祈りが大切にされた理由は、ロザリオの祈りが「イエスの生涯を黙想する」ことが中心だからです。先ほど述べたように、ロザリオの祈りはアヴェ・マリアの祈りを10回唱えるので、聖母への祈りと考えられがちですし、実際ロザリオを聖母に祈ることだと思っている方もいるかもしれません。
 けれども、ロザリオの祈りとは先ほど述べた「喜びの神秘」「苦しみの神秘」「栄えの神秘」「光の神秘」は「イエス・キリストの生涯を黙想する」ことに中心があります。ですから、ロザリオの祈りはマリア「に」祈るのではなく、マリア「を通して」イエスに祈りをささげる祈りなのです。
 教会において、マリアはイエスの母ですが、イエスの忠実な弟子でもありました。マリアは十字架につけられたイエスのそばに佇み(ヨハネ19章26〜27節)、イエスが天に昇った後、聖霊が降るまで弟子たちと共にいて祈っていました(使徒言行録1章14)。そのマリアの姿に倣ってイエスの生涯を黙想するのがロザリオの祈りが持つ最も大切な意義なのです。このことを心に留めて、ロザリオの祈りを唱えていただきたいと思います。