担当司祭から:2018年7月

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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枢機卿 ― 教皇の最高顧問 ―

(「道後教会だより」2018年7月号より)

 5月20日に教皇フランシスコは新たに14名の枢機卿を任命することを発表しました。その中の一人にトマス・アクィナス前田万葉(まんよう)大阪大司教が選ばれたことは、日本の教会にとって大きなニュースでした。今回選出された14名の枢機卿は、今月29日にバチカンで行なわれる枢機卿会議において正式に任命されます。日本において枢機卿は濱尾文郎枢機卿以来6人目です。また2009年に白柳誠一枢機卿が亡くなって以来日本には不在だった枢機卿が9年ぶりに誕生することになりました。そこで今回の教会だよりは枢機卿という職務が教会の中でどのような役割を果たしているかについて書いてみたいと思います。
 枢機卿というのはラテン語でCardinalesという言葉に由来します。Cardinalesの原語はCardoという言葉で、これは「蝶番、かなめ」という意味を持つ言葉です。枢機卿という職務が教会の歴史に登場したのは5世紀頃です。4世紀末にキリスト教がローマ帝国の国教となって以来、信者は増え、それとともに教区も増え続けました。その中で教皇の協力者は主に司教でしたが、それだけでは足りなくなり、司教以外の教区司祭も「枢機卿」として任命され、教皇の協力者となりました。1217年には7名だった枢機卿は現在213名任命されています。
 それでは、枢機卿というのは具体的に教会においてどんな役割を担っているのでしょうか? その大きな役割の一つはローマ教皇の選出です。前回2013年に教皇フランシスコが選挙で選ばれましたが、その選挙は「コンクラーベ」と言われ、この投票ができるのは枢機卿だけです。もっとも、教皇を選出できる枢機卿は80歳未満の枢機卿に限られます。先ほど言及した213名の枢機卿のうち、教皇を選挙できる枢機卿は現在のところ115名です。前田大司教は現在69歳なので、教皇を選出できる枢機卿となります。
 もう一つの職務は、全教会の牧者として働く教皇を補佐することで、それは枢機卿団として、あるいは個人として各自教皇から託された職務を果たすことによって行われます。その職務とは特に教皇庁諸官庁の長官および顧問の職のことを指します(以上の文章は『新カトリック大事典』Ⅲの492ページを主に要約したものです)。
 この二つの職務だけでも枢機卿が教会においてどれほど大きな役割を担っているかが分かります。現在のところ、前田大司教が枢機卿としてどのような役目を担うかは分かっていませんが、枢機卿としてバチカンと密接な関係を築くことが期待されています。実際、前田大司教は報道機関のインタビューに「教皇フランシスコの訪日を是非とも実現したい」と答えて、教皇フランシスコの訪日に強い意欲を示しておられます。
 現在の日本のカトリック教会は大変難しい状況にあります。その中で前田大司教が枢機卿になられたことは日本のカトリック教会にとって喜びの出来事です。けれども、前田大司教はこれから枢機卿団の一員としてローマに行くことも増え、大阪大司教区には少なからず影響が出るものと思われます。実際、前田大司教が枢機卿に選出されることが決まった10日ほど後、教皇フランシスコはパウロ酒井俊弘師(オプス・デイ)とヨゼフ・アベイヤ師(クラレチアン宣教会)を大阪の補佐司教に選出しました。
 大阪大司教区のもとにある高松教区に属するわたしたち道後教会の信徒もトマス・アクィナス前田万葉大司教が枢機卿に任命されることをお祝いし、新枢機卿がローマと日本のカトリック教会のつながりを深める牧者として働かれるように、祈りを捧げましょう。