担当司祭から:2017年11月

川上栄治神父の写真
川上栄治神父

 2009年10月~2010年3月 協力司祭
 2010年4月~2013年3月、2014年4月~ 道後教会担当司祭

 1975年8月16日生。大阪出身。ドミニコ会司祭。
 2006年9月に司祭叙階。2006年~2009年、ローマで勉強。2009年8月に帰国後、松山へ。
 松山教会に在住。

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諸聖人の祭日と死者の日

(「道後教会だより」2017年11月号より)

 11月はカトリック教会において「死者の月」です。日本では8月のお盆に墓参りをして死者を思い起こすのと同様に、教会においても死者を記念します。教会の暦において、死者の日は11月2日に記念されます。その起源は古く2世紀に遡ります。その頃は死者のために祈りを唱えるだけでしたが、やがてミサを行うようになり、11世紀頃には教会で広く祝われるようになりました。死者の日は教会において「記念日」という位置づけで、普通日曜日と重なると日曜日が優先されますが、「死者の日」は記念日として唯一、日曜日と重なってもお祝いされる教会の暦の中では異質とも言える扱いです。それは、教会が死者の追悼を大切にしていることの証と言えるでしょう。
花と十字架 ところで、11月2日の前日の1日には大きなお祝いがあります。それが「諸聖人の祭日」です。この祭日の起源は諸説ありますが、8世紀前半に教皇グレゴリウス3世が使徒とすべての聖人、殉教者のための小聖堂をつくり、その聖堂の祝別の日が11月1日に移されたことで、11月1日がすべての聖人と殉教者の日となったという説が有力です。
 「諸聖人の祭日」は今まで教会のために働き、そして世を去った聖人たちを祝う日です。教会の暦において「祭日」とは重要な日であり、このお祝いをする日は、神の母聖マリア(1月1日)、聖母のお告げ(3月25日)、聖ペトロ・聖パウロ(6月29日)、聖母の被昇天(8月15日)、無原罪の聖マリア(12月8日)、主の降誕(12月25日)などです。これらはいずれも教会においてとても重要な聖人や出来事です。ですから、諸聖人の祭日はこれらの祭日と並べられるほど重要な日として教会で祝います。
 それでは、諸聖人とはどのような人々を指すのでしょうか? 「聖人」と聞くと多くの人は、教会で列聖された聖人を思い浮かべるかもしれません。もちろん諸聖人の祭日はそういう聖人も記念しますが、どちらかといえば、「キリスト者として洗礼を受けてこの世を生きて生涯を全うしたすべての人」を記念するという意味合いの方が強いのです。それは、わたしたちの知り合いや先祖でキリスト者としての信仰を全うしたすべての人が含まれるということなのです。
 ですから、諸聖人の祭日においてわたしたちは自分に先立って亡くなったすべてのキリスト者のために祈るのです。わたしたちたちが教会の暦で記念する聖人の多くはずっと昔に生きた人々が多いので、その人々に祈ることは時として難しいかもしれませんが、「諸聖人の祭日」で洗礼を受けて亡くなったすべての人を記念するので、わたしたちにとって身近に感じられることでしょう。その一方、洗礼を受けずにこの世の生涯を全うしたすべての人々を記念するのが「死者の日」です。私たちはこの両方の日を記念することによって、自分に関わりがあって、この世を去ったすべての人を思い起こして祈るのです。
 ですから、11月は日々の祈りの中でかつて自分とかかわりがあって、この世を去ったすべての人のためにミサを捧げることが勧められます。もちろん一周忌や三回忌という形で祈ることは大切ですが、亡くなって長い年月が経った人のためにミサを捧げることも必要なことです。なぜなら、亡くなった人との交わりは時が経ったとしても無くなるものではないからです。