5月5日をもって全国の原発が止まりました。核燃料はいま強制的に水で冷やされています。再稼働を阻止しても数十年以上の冷却が必要です。もはや電力を生み出さないのに電力を必要とする使用済み核燃料は負債そのものです。
強制的な冷却が必要なのは「核のゴミ」が放射線を出し続けるからです。そのエネルギーを吸収する固体の核燃料は冷やさないと温度が上がってしまいます。放射線の減り方は半減期で決まっていて変えることができないという、放射能にはやっかいな性質があります。
「核のゴミ」は二種類あります。1つは核分裂した破片です。核燃料は核分裂する成分(ウラン235)が5%程度で、残りの95%は核分裂を起こしにくいウラン238です。ところが核分裂の際に出る中性子をこのウラン238が吸収するとプルトニウム239(長崎原爆の材料)に変身し、核分裂を起こして破片となります。
実はプルトニウム239は60%しか核分裂せずに、40%は中性子を吸収してプルトニウム240になります。そして、さらに241,242と太っていき、また途中でアメリシウム241,242やキュリウム242,243などに変身していくのです。ウランが肥えてできた物質を超ウラン元素といい、これが2つ目の核のゴミとなります。
いま大問題となっている放射性セシウムは核分裂破片です。半減期が30年なので数百年管理できればあまり問題になりません(図の▲)。ところが超ウラン元素は数万年前後の半減期を持つので、数百年以降の放射能は超ウラン元素だけによるものとなります。ウランを利用する原発では避けられない宿命なのです。
プルトニウム240は勝手に核分裂を起こすので核兵器にとっては邪魔者です。そのためにプルトニウム中の239の割合が高いうちに原子炉を短時間で止めて取り出します。したがって核兵器開発で出る超ウラン元素の量はわずかで放射能は「低レベル」。米国では2億5千万年前の安定した岩塩層に埋設が始まっています。それでも米環境保護局は1万年の安全を求めているのです。一方の原発の使用済み核燃料は大量の超ウラン元素を含むために100万年の安全が求められ、埋設場所も未定です。
ウランではなくトリウムという核燃料を溶けた溶岩にまぜて使う原発は、事故時に溶岩が自動的に冷えて固まる。しかもプルトニウムは殆ど生まれないので核のゴミは数百年で解決。核兵器と縁遠いが故に実用化には至っていません。実現したとしても数百年のツケは重過ぎ、自然エネルギーへの投資の方がはるかに有益。
結局は、まさに新指導者への「祝砲」たる打ち上げ「花火」で終わった北朝鮮の「衛星打ち上げ」事件。世界中から挙がる「国連安保理決議違反」の包囲網の中での強行でした。それもさることながら日本の異常ぶりも際立ちました。
まるで申し合わせたかと思えるタイミングでした。3月16日に北朝鮮が「衛星打ち上げ」を通告、3月26日には空自航空総隊司令部が府中市から米軍横田基地に移転を完了し、運用を開始しました。同司令部は領空侵犯や弾道ミサイル対処などを指揮する中枢で、その長官がPAC3やイージス艦のSM3の発射権限を持ちます。庁舎は米第5空軍司令部に隣接し、米軍と一体化した「共同統合運用調整所」を新設、初仕事が今回の「衛星打ち上げ」対処です。
09年8月、韓国は初の国産ロケットによる人工衛星打ち上げを行い、失敗しました。このときの予定軌道は今回の北朝鮮の通告軌道よりも東寄りで、2段目が沖縄本島上空を通過する予定でした。当時の日本政府は「韓国の場合、宇宙の平和利用であるのは明らかだ」として、発射を静観したのです。イージス艦3隻、PAC3を7ヶ所に配備した今回より、はるかに「危険な」事態だったはずなのに。
PAC3は短距離ミサイル対処に開発されたもので、今回のような長距離ミサイルの迎撃実験は皆無。イージス艦でダメならPAC3でという二段構えの構想自体が虚構なのです。しかも打ち上げ失敗で落ちてきた破片は空気抵抗で軌道が変わってしまいPAC3での迎撃は不可能です。所詮はハリボテで、北朝鮮の脅威を国民に煽り、今回はとくに南西諸島に自衛隊を配備する「援軍」として利用したのです。
今回の「衛星打ち上げ」が国連安保理決議違反であることは明確です。決議は北朝鮮の行った核実験と弾道ミサイル開発への懲罰でした。しかしその精神は北朝鮮だけに限られるものではないはずです。明らかな核保有国であるインドやパキスタンも弾道ミサイル実験を行っていますが国連で議論にもなりません。米ロも大陸間弾道ミサイルの発射実験を毎年繰り返しています。特に米国は包括的核実験禁止条約の批准を拒んだままです。北朝鮮あるいはイランだけを、確かに問題の多い国ですが、‘いじめ’の対象にして自らの悪事は不問にさせるという、二重基準がまかり通っています。安保理決議云々とあわせ、国連憲章の謳う、主権平等の原則が貫かれなくてはなりません。
戦後、イギリスは天然ウランを使うガス冷却炉(GCR) を開発し、着々と建造していった。日本初の商業用炉の東海1 号はこの炉型。ソ連はオブニンスク原発で史上初の原子力発電に成功したがその後の動きは遅々としたものだった。
一方、米国は官民一体で原爆開発を推進し、ゼネラル・エレクトリック社(GE) はプルトニウム製造を、ウエスチングハウス社(WH) は原潜動力炉の開発を担った。「Atoms for peace」戦略の下でWH は原潜用に開発した濃縮ウランを使う加圧水型軽水炉(PWR) を急きょ大型化してシッピングポート原発を54 年9 月に着工した。当の原潜の炉の初臨界は54 年12 月、原子力航行は55 年1 月である。いかに計画先行で進められたか伺われる。またGE はアルゴンヌ国立研究所と共同で沸騰水型軽水炉(BWR) を開発、56 年に原型炉パレシトスを建設。これらの成果を基にドレスデン1 号を完成させる。
アイゼンハワーの任期中に原発輸出は出来ず、石炭火力より低コストと宣伝されたオイスタークリーク原発65 万kWが完成するのは1969 年である。いまや米国で最古の稼働原発となった。
国名 | 原子炉名 | 型 | 出力(万kW) | 着工年月 |
---|---|---|---|---|
ソ連 | オブニンスク | LWGR | 0.6 | 1951.01 |
英国 | コールダー ホール-1 | GCR | 6.0 | 1953.08 |
英国 | コールダー ホール-2 | GCR | 6.0 | 1953.08 |
米国 | シッピングポート | PWR | 6.8 | 1954.01 |
英国 | ドーンリー | FBR | 1.5 | 1955.03 |
英国 | コールダー ホール3 | GCR | 6.0 | 1955.08 |
英国 | コールダー ホール4 | GCR | 6.0 | 1955.08 |
英国 | チャペルクロス-1 | GCR | 6.0 | 1955.10 |
英国 | チャペルクロス-2 | GCR | 6.0 | 1955.10 |
英国 | チャペルクロス-3 | GCR | 6.0 | 1955.10 |
英国 | チャペルクロス-4 | GCR | 6.0 | 1955.10 |
米国 | GE バレシトス | BWR | 2.4 | 1956.01 |
米国 | ドレスデン-1 | BWR | 20.7 | 1956.05 |
米国 | インディアン ポイント1 | PWR | 27.7 | 1956.05 |
米国 | エンリコ フェルミ-1 | FBR | 6.5 | 1956.08 |
英国 | ハンターストン-A1 | GCR | 17.3 | 1957.10 |
英国 | ハンターストン-A2 | GCR | 17.3 | 1957.10 |
英国 | バークレイ-1 | GCR | 16.6 | 1957.11 |
英国 | バークレイ-2 | GCR | 16.6 | 1957.11 |
英国 | ブラッドウェル 1 | GCR | 14.6 | 1957.11 |
英国 | ブラッドウェル 2 | GCR | 14.6 | 1957.11 |
英国 | ヒンクリーポイント-A1 | GCR | 26.7 | 1957.11 |
英国 | ヒンクリーポイント-A2 | GCR | 26.7 | 1957.11 |
米国 | ヤンキー | PWR | 18.0 | 1957.11 |
ソ連 | ベロヤルスキー-1 | LWGR | 10.8 | 1958.06 |
ソ連 | ノボボロネジ-1 | PWR | 21.0 | 1958.07 |
英国 | ウインズケール | GCR | 3.6 | 1958.11 |
米国 | エルクリバー | BWR | 2.4 | 1959.01 |
米国 | ホラン | SGR | 8.4 | 1959.01 |
米国 | パスファインダー | BWR | 6.3 | 1959.01 |
英国 | トロースフィニッド 1 | GCR | 23.5 | 1959.07 |
英国 | トロースフィニッド 2 | GCR | 23.5 | 1959.07 |
米国 | ピクウェー | OMR | 1.2 | 1960.01 |
米国 | CVTR | PHWR | 1.9 | 1960.01 |
米国 | BONUS | BWR | 1.8 | 1960.01 |
米国 | サクストン | PWR | 0.3 | 1960.01 |
米国 | ビッグロックポイント | BWR | 7.1 | 1960.05 |
英国 | ダンジェネスA1 | GCR | 23.0 | 1960.07 |
英国 | ダンジェネスA2 | GCR | 23.0 | 1960.07 |
米国 | ハンボルト ベイ | BWR | 6.5 | 1960.11 |
米オバマ政権は10年間で920億ドルもの核兵器複合施設の近代化・改造予算を投入することで「新・戦略核兵器削減条約」の批准にこぎつけました。これは「地下核実験に依拠することなく強力な核抑止力を維持する」ものです。
戦後まもなく米国の核独占が崩れ、英国・ソ連の原発開発にも危機感を持った米国アイゼンハワー大統領は「Atoms for peace」戦略を打ち出し、核兵器拡散予防と核態勢の主導権の奪還をはかった。その後、米国製の軽水炉原発+濃縮ウランの売り込みが本格化するが、それは史上最大の核軍拡の時代でもあった。
米国はこれまでに100 種類、約7 万発の核弾頭/核爆弾を製造した。このうちのアイゼンハワー政権中(1953-1960)に配備が開始されたのは実に42 種類にのぼる。ソ連に対抗するために、陸海空海兵の各軍に種々の、そしてメガトン級の水爆を次々に開発・配備していった。保有する米核兵器の破壊力のピークは同政権末期である1960 年で、実にTNT 火薬換算で205 億トンに達した(長崎原爆の約100万発分)。配備弾頭数もこの頃に2 万発に達する。同政権の8年間に弾頭数で22 倍、破壊力で410 倍になった。また核弾頭は一定の破壊力を維持しながら軽量・小型化され、それを搭載できる長距離ミサイルICBM や潜水艦発射のSLBM が登場するのもアイゼンハワー政権の末期である。表には主要なものを示している。
種類 | 破壊力 | 核 | 備考 | 配備期間 | 製造数 |
---|---|---|---|---|---|
B18 | 50 | U | ウラン最大威力 | 1953-56 | 90 |
W5 | 1-4.7 | Pu | 巡航ミサイル | 1954-69 | 65 |
B14 | 700 | DT | 初の実用水爆 | 1954 | 5 |
B17 | 1,350 | DT | 初の量産水爆 | 1954-57 | 200 |
B15 | 340 | DT | 初の軽量水爆 | 1955-65 | 1,200 |
B7 | 0.8-6 | Pu | 初の戦術核 | 1956-63 | 225 |
B11 | 1-2 | U | 核砲弾 | 1956-60 | 40 |
W23 | 1.5-2 | U | 戦艦核砲弾 | 1956-62 | 50 |
W33 | 0.5-1 | U | 核砲弾 | 1956-92 | 1,200 |
B36 | 1900 | DT | 多段階式水爆 | 1956?62 | 940 |
B7-3 | 0.05 | Pu | 核地雷 | 1957?64 | 300 |
W25 | 0.5 | Pu | 空対空ミサイル | 1957-84 | 3,150 |
W27 | 200 | DT | 艦対地ミサイル | 1958?65 | 25 |
B28 | 7-145 | DT | 威力5 段可変 | 1958-91 | 4,500 |
W31 | 0.1-4 | Pu | 増強型原爆 | 1958-84 | 3,000 |
W34 | 1-1.5 | Pu | 核爆雷 | 1958-71 | 2,000 |
W28 | 7-110 | DT | 巡航ミサイル | 1959-69 | 150 |
W30 | 0.05 | Pu | 核地雷 | 1959-66 | 300 |
W40 | 1 | Pu | 増強型原爆 | 1959-64 | 400 |
W49 | 140 | DT | ICBM アトラス | 1959-64 | 40 |
W28 | 7?110 | DT | 空対地ミサイル | 1960-75 | 650 |
W31 | 0.2 | Pu | 核地雷 | 1960-65 | 300 |
B41 | 2,500 | DT | 3段階式水爆 | 1960-76 | 500 |
W47 | 120 | DT | SLBM ポラリス | 1960-75 | 350 |
「原発はないほうがいいけれど、原発を全部止めたら電気は大丈夫なのだろうか?」という心配が多くの国民の中にあります。電力会社は肝心な情報を隠して不安を煽り、結局、原発は必要なのだと世論誘導しようとしています。
九電の「供給見通し」は7 月25 日に資源エネルギー庁がようやく国会に提出した、各電源設備ごとの資料をまとめたものです。地熱などの自然エネルギーを加えると1,812 万kWとなって最大需要予測に対して8.5%の余裕があります。
電力供給能力と供給見通し:万kW(九電資料)
電源の種類 | 自社設備での 最大供給能力 |
供給見通し 11 年8 月 |
|
---|---|---|---|
原子力 | 525.8 | 257.0 | |
火力 | 1,157.8 | 939.0 | *1 |
水力 | 173.2 | 110.0 | |
揚水 | 230.0 | 230.0 | |
自然 | 31.3 | 26.0 | *2 |
買電 | 250.0 | *3 | |
合計 | 2,118.1 | 1,812.0 | |
最大需要予測 | 1,669.0 | *4 |
では稼働中の3 基の原発をいま止めたらどうなるか。他に手だてをとらなかったら1,555 万kWで、最大需要予測を下回ります。しかし最大需要は夏の午後のいちばん暑い頃だけに必要な電力で、年間わずか十数時間です。10%削減をこのピーク時だけ行うことで十分に乗り切れます。通常期は余るので火力の一部を停止します。
また停止中の火力のうち、唐津火力2 基は緊急時の予備電力(87.5 万kW)として「休眠」させているものです。これを稼働させればピーク時電力の5%削減で十分対応できます。
電源の種類 | 対処なし | ピーク時5%節電 |
---|---|---|
原子力 | 0.0 | 0.0 |
火力 | 939.0 | 1,026.5 |
水力 | 110.0 | 110.0 |
揚水 | 230.0 | 230.0 |
自然 | 26.0 | 26.0 |
買電 | 250.0 | 250.0 |
合計 | 1,555.0 | 1,642.5 |
最大需要予測 | 1,669.0 | 1,585.6 |
九電の「自然エネルギー」発電の設備は
地熱 21.20 万kW バイオ 4.06 万kW
風力 5.57 万kW 太陽光 0.53 万kW
で、全設備の1.5%にすぎません。電源設備投資計画を見ても、その扱いは歴然としています。
原発停止は火力の稼働率を上げることになり、その燃料費がかかります。(核燃料は買いだめしている!)。しかし原発への設備投資や再処理積立金など必要なくなるお金を充てれば賄えます。また液化天然ガスへの転換、発電効率の向上をはかっていけば二酸化炭素の増加も抑えられます。
電源 | 10 年度 | 11 年度 | 12 年度 |
水力 | 159 | 159 | 137 |
火力 | 170 | 131 | 120 |
原子力 | 423 | 541 | 512 |
新エネ等 | 55 | 23 | 34 |
合計 | 807 | 854 | 803 |