☆ 痛みの原因が上顎洞の炎症だったケース
CTがあってよかった〜〜と思った出来事です。
30代の女性 Mさんの事です。
何度か来院しているある日、 左上の奥歯が数日前からズキンズキン痛いと訴えてきました。
脈打つように痛くて、夜も寝られない、と辛そうです。
問題の奥から2本目が 押すと沈み離すと浮いてくる・・という動きをしていますが、 右のパノラマレントゲンを見てもそんな強烈な痛みが出るように見えないのです。
左の写真はパノレマレントゲン写真の痛いと訴えた歯の部分を拡大したものです。
パノラマレントゲンはいろんなものが重なって映っているので、見たいところがはっきりわからない事があります。
奥から2本目の歯
(赤○)の根の先も上あごの骨が白くたなびくように映ったり、ほほ骨が邪魔をして、見分けが付きません。
そのせいかこの写真からでは、そんなにひどい状態にはみえません。
この写真だけなら、根の治療をすれば良くなるだろうと思ってしまいます。でも、あまり症状が強いので、CTを撮影しました。
CTのすごいところは 見たいところを360度どこからでも 輪切りにして診ることが出来ることです。
0.2mmにスライスしてその断面を見ることが出来るので、もちろん重なって映っている邪魔なものをよけて診ることが出来ます。
左の写真は、私(古西)の左上のCT画像です。
目の下で、ほほ骨の奥に「上顎洞」という空洞がありますが、健康な場合は上顎洞の中は写真の様にほぼ真っ黒に映ります。
この上顎洞の床は白い曲線
(黄色→)に映り、
上の奥歯の根の先
(緑→)と接近しています。
上顎洞の壁には 卵の殻の薄皮に似たような薄い「シュナイダー膜」が張り付いていて、表面の繊毛は異物を鼻に送り出す働きをしています。
左の写真は来院しているMさんのCT画像です。
痛い歯
(赤→)の根の先にあるはずの上顎洞の床の白い線が途絶えていて
(オレンジ→)、なおかつ上顎洞の中に白い物が溜まっているように映っています。
(青→)。
これは、根の先の病気によって上顎洞の床の骨に穴が開き、さらに卵の薄皮のようなシュナイダー膜が分厚く腫れあがってしまった様子で、「歯性上顎洞炎」という病名が付く状態です。
残念ながらここまで悪化すると、歯を残す事はできません。
良く聞けば左の鼻はよく詰まるそうです。
Mさんに この写真と私の写真を見比べてもらい、症状が軽くなった数日後歯を抜きました。
抜いてみると、根の先に鉛筆の頭くらいのグニュグニュした赤い肉が付いて出てきたのです。それを見て、改めてこんな状態なら根の治療しても無理だったろうな〜と思いました。
Mさんには耳鼻科受診も勧めました。
パノラマ写真だけでは、こんなに状態が悪化しているなんて診断出来ません。
以前CTを入れる前に、いくら治療しても良くならない根の病気がありました。
そして、診断が出来ないから説明も出来ずに時間ばかりが過ぎていく事があったのです。
その間、ずっと患者さんの違和感は続き、私も歯を抜く必要性を説明できないまま根の治療をくり返し、(どうして良くならないのだろう・・・)と悩みながら数か月が経ちました。
そのうち、患者さんが「もう痛いのは嫌だから抜いてほしい・・」と訴えてきてモヤモヤした まま歯を抜くこととなり、抜いて初めて根の先にブヨブヨした肉の塊が付いているのが 分かった事がありました。
CTがなかったら、Mさんにも同じ苦しみ数か月も味わわせる羽目になったことでしょう。
右の写真はMさんの抜歯後3か月のCT画像です。上顎洞はきれいな状態になりました。
CTのおかげで、パノラマレントゲンでは見ることが出来ない根の先をみて、残せるか残せないか自信を持って診断出来、Mさんを短期間で痛みから解放出来ました。
私にとっては心強い最新診断機器です。
CTがあれば、速く正確な診断が出来て、安心・安全な治療をあなたにも提供出来ます。