☆ 失った歯を取り戻せる「インプラント」という治療の存在

 


私がまだ学生の頃、新聞に最先端医療「人工歯根 インプラント」というものが紹介されました。 インプラントは 歯を無くした後、ブリッジや部分入れ歯のように両隣の歯に負担をかけて歯の機能を回復させるのではなく、 骨の中にチタン製の人工歯根を埋めて、単体で機能するように歯を作る治療法です。 大学の授業にはインプラントの「イ」の字も出て来ませんでしたが、学生の頃からそんな治療が提供できる歯科医になりたいな〜〜と憧れていました。


もし私が歯を無くしたら・・・ 無傷の歯を犠牲にしてブリッジを入れるなんて絶対嫌です。 まして、バネをかけた歯がグラグラになっていずれ抜けてしまう部分入れ歯なんて死んでも嫌!!友達にも、インプラントを勧めます。 家族には、押さえつけてでも無理やりインプラントしちゃいます。(笑)

インプラント研修で学んだこと。
私が45歳の時最初の研修会で、あるインプラント学会の会長先生が、「ベンツを買うお金があったら、CTを買いなさい!」 とおっしゃっていました。 会長先生はいつもそうおっしゃっていたようです。

パノラマでのインプラントの診断の限界。
インプラント治療は 骨の中にインプラント体を埋め込みますが、この時、稙立する部位の骨の高さ、幅、形、または隣接する神経、血管、上顎洞までの位置、 上顎洞の形など、立体的に把握しておかなければいけない項目が数多くあります。 骨が多く無くなってしまった患者さんほど、それらが重要になり、診断機器として、患者さんの骨の状態を立体的に見ることができるCTが必要になってくるのです。
あしはら歯科が開院した当初は、インプラント希望の患者さんがいらっしゃると、ベテラン歯科医のM先生がインプラント手術を行っていました。 M先生は私が長野にいる時にかみ合わせ治療を指導していただいた師匠です。 M先生のように、かみ合わせ治療が出来るようになりたいと思い、そのためにもインプラント治療が必要になってきていました。 
複数のインプラントの研修会に参加したり、M先生の指導を仰いだりして、猛勉強をして、私もインプラントの手術が出来るようになりました。
ところが、インプラントの患者さんが増えてくると、当院にあるパノラマレントゲンだけでの診断に限界を感じ始めてしまったのです。 平面のパノラマレントゲンを使って立体的に診断するために、計測した値を模型に書き込んだり、模型を切断したり…。やることはアナログな作業ばかりです。

私にできる症例か、そうでないかをはっきり診断したい。
患者さんの骨が、安全にインプラントできる状態なのかそうでないのか…はっきり線引きできる方法があれば…と思っていました。 パノラマレントゲンだけだと、私が出来る症例と出来ない症例の差に、かなりの幅が出来てしまいます。「出来そうだし、できるかもしれないけど、 安全のためにこの患者さんのインプラントはしないでおこう」といったように、「グレーゾーン」が出来てしまうのです。
CTがあれば、「グレーゾーン」ではなく、インプラントが可能かどうかを、骨の状態から明確に線引きして診断することができるようになります。

診断に困るたびに、患者さんに大きい病院まで足を運んでいただくことに。
医院にCTがないと、診断に行き詰るたびに、患者さんに大きい病院まで足を運んでいただき、CT撮影を受けていただいていました。 忙しい時間をやりくりして来院してくださる患者さんには 時間もお金もかかることなので申し訳なく思っていました。 でも、CT撮影なしで妥協して、勘で治療をするわけにはいきません。
当院にCTがないので、患者さんから「ここが痛いんだけど…」と相談を受けたときに、「これが原因ですね!」と即答ができないことがあるのも、もどかしかったです。
病院で撮影したCT画像は、フィルムではなくCDに焼き付けられて来ます。 (平面ではなく立体なので、情報量が多いのです。)それをコンピューターで読み取り、診断するのです。 そのためのソフトを入手したり、画像診断の勉強もしました。

何度、「医院にCTがあれば…」と思ったかしれません。
当時CTは、2,500万円もする超高額機器でした。医療器なのに国の補助なども一切ありません。 一般企業と同じで、借入をして設備投資したら、自力で全額返済していかなければならないのです。 都会の病院や儲かっている歯科医院なら何の不安もなくCTを導入できるでしょうけれど…。だから、地方の先生はCT導入に躊躇することが多いです。 でも私は、地域密着で開業しているからこそ、ちゃんとした診断機器が欲しい!と言うのも正直な気持ちでした。
そんな中、一昨年JMMという会社が小型のCTを発売して、記念キャンペーンを行っていました。 興味があったので見積もりを依頼すると、以前と比べれば随分安くなったけど、半額にまでなるはずもなく、やはり高い…。 私が買えるシロモノではないな〜。(でも ちょっと気になる…)

消費や浪費よりも、患者さんの役に立てるCTがほしい。
そんな時、某歯科メーカーが企画した実習付のCT診断の研修会に参加しました。 CTはインプラントの診断だけじゃなく、骨の中の、全部の治療の診断に役立つことがわかりました。歯の骨の中の治療・・・ 私たち歯科医のやっているのは、ほとんどが骨の中の見えない所の治療です。
なるほど〜…と感心しているところへ、その某歯科メーカーの担当者から、「格安のCTがあるが導入を検討しませんか?」と持ちかけられたのです。 実はその頃、医院の2階増設を目標に頑張っていました。
1階のスタッフルームを2階に移したらもっと仕事がしやすくなるのでは…と考えていたのですが、その費用と同額だったのです。 ずいぶん前に聞いた、会長先生の言葉がよみがえってきました。 「ベンツを買うお金があったら、CTを買いなさい」
・2階を増設したら便利になるけど、直接患者さんのためになるわけではない。
・でも、もしCTがあれば、診断機器として絶対患者さんのためになる。
・パノラマレントゲンだけでのインプラント診断の限界。
・安全なインプラントを行うために、私に出来る症例か、そうでないかをはっきり診断したい。
・インプラント以外の治療の診断力も、飛躍的に向上する。
の中で、少しずつCTの存在と必要性が膨らんで来ました。
(欲しい!! 無理かな〜〜 でも欲しい・・・)

あしはら歯科に、CTを導入できるかもしれない!
それから2週間程、ずっと悶々としておりました。欲しいし、何より患者さんのためになる。でもなにしろ高額です。 あるとき思い切って、モヤモヤした気持ちを主人に話しました。悩みを聞いてもらうつもりで・・・
すると、主人はおもむろに電卓をたたき始め、一言「いけるんじゃない?」 私はちょっと拍子抜けしました。(もっと早く話せばよかった) それと同時に あしはら歯科にCTを導入できるかもしれない! という嬉しさに 鳥肌が立ち、小躍りしたくなるような興奮を覚えました。 そして、背中をポンと押してくれた主人に抱き着きたくなりました。

CTがあればできること。
パノラマレントゲンは平面画像で、いろんな場所の骨が重なってわかりにくい画像になります。 でも、CTは立体画像なので、撮影のあと画像処理をして、パソコン上で、どこからでも骨を輪切りにすることが出来ます。 診断に不要なものは排除して、鮮明な画像になるので診断もしやすく、患者さんが見てもわかりやすい画像になります。
今まで、パノラマレントゲンと私の手描きのイラストを見せて、患者さんに分かっていただこうと必死になっていましたが、 そんなことも不要で、言葉で長々と説明する必要もなく、骨の状態そのものズバリを見ていただけます。

 

CTが入ったことで、今まで見ることが出来なかった以下の事が分かるようになりました。
・歯の根の形や、歯の中の神経の管の立体的な形
・根と、骨の中を走っている神経血管との3次元的位置関係
・目の下の上顎洞の中の様子
・インプラントを稙立するのに必要な骨の量
・治療後の経過も確認する事が可能になります。


☆CT画像の見え方。
CTを撮影すると、コンピューターの画面上にこんな画像が出て来ます。 同じ部位でも、見る方向を変えて3種類の断面画像を見る事が出来ます。

 


☆上の写真の@〜Bの画像を説明します。

 

画像@
従来のパノラマレントゲンのようにみえます。
診断に不要な骨を取り除いて表示してあるので、パノラマより 見やすい画像です。





画像A
歯を(画像@)の緑→から見て輪切りにしてあります。
この画像は CTでなければ絶対見ることが出来ません。





画像B
歯を(画像@)の橙→からみて輪切りにしてあります。
灰色のドーナツ型の丸は 奥歯の根の断面がいくつも映っています。





インプラント以外にも、こんな治療・診断の役に立っています。
CTがあってよかった〜〜と思った症例です。
インプラント手術だけじゃない! 日常の治療のこんなことにも活躍しています。

この画像は治療したのに痛みが引かなかった患者さんの実例です。 →CTのおかげで、痛みの原因が上顎洞の炎症だったことが分かったMさんのケース →CTで、歯の根の形が特殊だったことが分かったKさんのケース CTは 6万件以上ある全国の歯科医院のうち、5%しか導入されていません。

最初、会長先生が「ベンツを買うお金があったら・・・・」と切り出した時(ベンツか〜〜 世界がちがうな〜〜)と  ちょっと白けた気分で聞いておりました。(そりゃね、CTがあったら良いに決まってる。 でも、現実問題、無理じゃない!)と。ここまでくると、半分ふてくされてます。(笑) でも、そんな「希少機器」をまさか導入してしまう日が来るなんて思ってもみませんでした。
CTを導入出来たことで、自信を持って治療を提供できる幸せをかみしめて、日々患者さんの笑顔のためにがんばっています。 誰のための歯科治療か、をいつも考えています。

CTは、いつもいつも使う機器ではありません。 困った時の診断の「切り札」的存在です。
普段は、従来の全体が見られるパノラマレントゲンや、部分撮影のデンタルレントゲンで事足りると思います。 レントゲン画像を見て、「あれ? これどうなってるんだろう・・」と感じた病態を正確に診断できる機器が自分の医院にある・・・ というのは、想像していた以上に安心できることなんだな、と実感しています。
CTがなくて、診断もできずに 「もう少し様子をみましょうか・・・」とか、 「もうしばらく痛みをがまんしてみてください」とか、 「わからないから、大きい病院に行ってください」という態度ではなく、 きちんと診断が出来るから、私がやるべきことがはっきりします。
正しい診断ができるから、必要があれば口腔外科に紹介もできます。 以前より自信を持って診療に当たる事が出来ています。 そして、CTは私の治療行為をシビアに評価もします。 今までは「見えなかったから分からなかった」ものを全て見せてくれるので、自分の治療技術をレベルアップさせてくれる機器であり、 患者さんに治療を提案、提供する時の、確かな自信の「根拠」を支えてくれる機器でもあります。
CTは、私にとっても、患者さんにとっても強い味方です。
あしはら歯科医院   豊橋市芦原町嵩山地 25   TEL:0532-29-8355

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