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vol 15 : 昔話天の子編
人間は既にこの世に存在し、あの世には2つの世界がありました。
2つの世界は、天界と黄泉の国とに分かれていて、
お互いの世界が、お互いを神だと認めていませんでした。
此処は天界です。天界には宇宙の神の一人でもある神が、
地球を守る役割を与えられた神の治める大きな国です。
天界の神には大切な息子がいましたが、
人間界に大きな乱れが起こり、それを鎮める為に人の子として、
地上に降り立っていました。
神は息子が居ない間の寂しさに、娘をお作りになられました。
天の子は神にたいそう可愛がられてすくすくと育ちました。
しかし、溺愛されすぎた為に少しわがままに育ってしまいます。
他の神々を召使いのように使い、
また神もそれを怒るということはしませんでした。
ある日の事です。
天界以外に黄泉の国という世界が存在する事を、
天使達から聞いてしまいました。
好奇心旺盛な天の子は黄泉の国に天使を連れて向かいました。
天使達は黄泉の国の入り口で怯えています。
「神子よ、これより先は如何わしい国です。
父のお許しになっていない国。入ってはなりませぬ。」
天使達は怯えながら天の子に言いました。
しかし天の子は言います。
「パパは神やで?あらゆる神の中でも最強の神や。
黄泉の国なんか、なーんも怖わない。」
怯える天使達を小馬鹿にするように言うと黄泉の国の門を小さな手で、
開けようと押しました。
すると扉が開くとずらりと黄泉の国の神々が並び、
まるで敵を迎えるかのような表情をしています。
「何をしに来た!天の子よ。」
皆の態度に天使達はひるむも、天の子は胸を張って答えます。
「遊びに来たんや!悪いんか!」
その態度とその言葉に黄泉の国の神々は驚きに満ち、
「な、何を申す!天の子よ。天界が黄泉の国を受け入れぬ限り、
我々も天界を受け入れぬ!立ち去れ!」
黄泉の国の神々はそう言って門を閉めようとしました。
天の子は神々の後ろに見える綺麗な川や川に浮かぶ蓮の花、
そして不思議な大きな鳥たちが視界に入ると、ますます興味を示し、
まばゆい光を神々しく放ちました。
すると黄泉の国の神々は、その眩しさに目を両手で覆ってしまいました。
「今やっ!」
その瞬間、天の子は姿を光の玉に変えて黄泉の国の中に入って行きました。
黄泉の国の神々が気付くと天の子の姿がありません。
中に侵入したと大騒ぎになりました。
天使達は慌てて天界に戻ります。
黄泉の国の神々は、天の子を追いました。
天の子は黄泉の国の美しさに心弾ませて飛んでいます。
「なんて美しいとこや。天界は白い建物ばっかりやけど・・・
ここは奇麗な色がたくさんや。」
随分飛んでいると、川を覗く神を見つけます。
光の玉は女の子の姿に戻り、その神の横にしゃがみ、
川に何かいるのかと同じように覗きます。
「なぁ。なんかおるん?」
あどけない表情で問い掛けながら川に顔を近づけて覗きます。
すると、隣にいた神は答えます。
「えぇ、ここから地獄を見ているのです。」
異国の神だと気付いていながらも、その神は答えました。
神は手のひらを上にし、天の子に言いました。
「見てご覧なさい。ここに1匹の蜘蛛がいます。
そして、そこに蹲っている人間は罪人です。でも、その罪人、
生前に川で溺れかけている蜘蛛を助けた、優しい心もありました。」
天の子は、手のひらの蜘蛛を見つめてから、罪人を見ました。
「どないするん?」
すると、神は手のひらを下に向け、
蜘蛛に糸を作らせて川へと細い糸を下していきました。
「チャンスを与えましょう。あの者が本当の優しさの持ち主かどうか。
もしも、そうであれば、
その優しさに免じて罪を許し黄泉の国に向かえ入れましょう。」
するすると蜘蛛の糸は下へ下へと垂れていきます。
すると下にいる罪人は糸に気づきました。
罪人が見上げると上には黄泉の綺麗な空が広がります。
自分のいる地獄は罪人たちの呻き声に真っ赤な炎、真っ暗な闇の世界。
罪人はその糸に助けた蜘蛛を思い出しました。
そう、神がわざと思い出させたのです。
罪人は細い糸を掴み必死で苦痛から逃れようと上ります。
随分上った時に下を見ると他の罪人達が同じく、
苦痛から逃れようと必死で登ってきます。
その数は何十人もの数です。
しかし細い糸は千切れる様子はありません。
罪人は思いました。
もしも、ここで糸が千切れたら、また地獄に戻ってしまう。
そう思った罪人は恐怖を感じ我を忘れ、自分の足元の罪人達の顔を蹴り、
次々と罪人達を蹴り落として行きました。
「なにすんねん!アイツ。」
その光景に天の子は怒りに満ちました。
そして、神は溜息を吐き悲しそうな顔をして蜘蛛の糸を切ったのです。
糸は切れ罪人は再び地獄へと落ちていきました。
「ハァ・・・やはり無理なのでしょうか。
人間の弱い心を強くはできないのでしょうか。」
悲しみに満ちた神に天の子は立ち上がり、神を小さな腕で抱きしめました。
「なに言うてんねんな。その為にアタシら神がおるんや。
だいじょーぶ。人は弱い者。その弱い者を助け守るんや。
でもな、その気持ちの伝わらん奴は、なんぼでも地獄に落ちたらええ。
んで、学ばせるんや。なかなか学ばんけど、
アタシらは、それを辛抱強く見守ってチャンスをあげたったらええ。
せやろ?」
天の子は暖かな慈悲の光を放ち神を包み込みました。
神は呆気にとられるも、クスクスと笑います。
「ふふ、面白い人ですね天の子。」
天の子は驚きました。
なぜなら、自分は天の子だとバレていないと思っていたからです。
「な、なんで知ってるん!」
神は天の子の頭を撫でて微笑み暖かな風を吹かせました。
「分かりますとも。異国の服に異国の顔。
そして、その強い力の光。しかし、天の子はやんちゃな娘と聞いてました。
少々やんちゃではありますが、こんなに優しい子とは。
さすが天界の御子息ですね。」
天の子は思いました。
褒められてるのか微妙だと。
しかし、頭を撫でる感覚と暖かい風には気持ち良く笑顔で神に問い掛けます。
「名前は?アンタ、天使?」
神は答えました。
「私は釈迦如来。仏です。」
「ホトケ?」
聞きなれない言葉に考えていると1匹の蛇が川岸を這っています。
「蛇や!釈迦如来、また遊びに来るわ。」
そう言って慌てて蛇を追い掛けました。
蛇は天界では汚らわしい生き物とされ、話は聞いていたものの、
本物を見るのが初めてだったからです。
天の子は思います。
こんな綺麗な国に、なぜ蛇がいるのか。
地獄にいるべきものではないのかと。
這う蛇を見つめると、鱗の光や大きな目、長い舌、
天の子はとても神秘的に感じました。
随分ついて行くと社が見えます。
そこに向かって蛇の数は増え道を進みます。
すると、いきなり目の前に大きな黒い大蛇が2匹立ちはばかりました。
「貴様!貴様は黄泉の国の神ではない!すぐに立ち去れい!」
「な、なんでバレんねん!」
変装もせず神々しい光を出したままの自分に気づかず、
姿をバレた事に驚いているも、黒大蛇は大きな口を開けて威嚇をしました。
天の子は言います。
「スッゲー!」
目をキラキラさせ大蛇を見つめて興奮に足踏みまでして。
大蛇は相手の意図が読めず、襲いかかろうとしました。
「おやめなさい!」
社の中から白い大蛇がゆっくり地を這って現れます。
「おやめなさい。この者が何をしたと言うのです。」
白い大蛇は、黒大蛇を後に下がらせました。
天の子は真白の大きな大蛇に言います。
「なぁなぁ!触ってもええん?!」
ぴょんぴょん跳ねながら白大蛇に問いかけます。
白大蛇は自分の頭を下げました。
「ええ、構いませんとも。怖くはないのですか?」
天の子は白大蛇の頭にそっと触れてゆっくり撫でました。
「綺麗や・・・神秘的。素晴らしいな。」
そう言って白大蛇の首に抱きつき、暖かな光で白大蛇を包みこみました。
白大蛇はその光とその言葉に天の子の優しさと純粋さを感じたのです。
「天の子よ。我は蛇の国の主の大神と申します。我々の国にようこそ。」
そう言ったその時、天の子に向かって鋭い光が射しました。
「やば!見つかった。」
天界の神です。
我が子を見つけた天界の神が連れ戻しに天界から光を放っているのです。
その光に包まれた天の子は体が浮かび始めました。
天の子は言います。
「黄泉の国の事、みんな誤解してる。綺麗で、
すごくいい所や。ありがとう大神サマ。」
大神に礼を述べ天界に連れ戻れさた天の子は、
天界で父に言います。
「パパ!話が違うやん。蛇の事も、黄泉の国の事もっ。」
父はすごい形相の娘にたじたじになりつつも話ました。
「我が子よ。蛇の中にも唆す悪い者もいるんじゃ。
黄泉の国はあれど、神は我一人で十分!」
天の子はそんな父の言葉には納得しません。
「天界のみんなに訂正して!パパ一人で全て出来るんか?
なんでみんなで協力せんの?
黄泉の国の神はパパのこと偉大な神やて認めてんのに。」
そう話すも天界の神は聞く耳を持たずに去ってしまいます。
天の子は早速、天界の神々や天使に黄泉の国の話をしました。
そして父がまだ認めぬ中、黄泉の国に遊びに行くようになったのです。

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