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vol 14 : 昔話蛇の子編
人間は既にこの世に存在し、あの世には2つの世界がありました。
2つの世界は、天界と黄泉の国とに分かれていて、
お互いの世界が、お互いを神だと認めていませんでした。
此処は黄泉の国の中の蛇の神々の国。
この国を治めて人間を守っているのが白い大蛇の大神です。
この世で死した蛇達はこの国に送られ、修行し神になる者や、
そのままこの国で暮らす者、それは其々。
そして、今日も大神から新しい命が生まれました。
小さな小さな灰色の蛇です。
皆からはチビ神と呼ばれました。
大神に仕える蛇神のもとですくすく育ち、時に大神のもとで修行し、
それは立派な灰色の大蛇に育ちました。
蛇の国と言えど、元が蛇という事であり、天界ではいろいろな姿になれます。
感情・魂の世界なので形は自由なのです。
修行を幾度か経験し、頭で考えるのではなく、人だと思へば人に。
大神は女性の人間の姿で自分が祀られる神社に来る人間達へ祈り、
その願いに合う蛇神達を修行の一環としても向かわせ、日々忙しい毎日。
それをチビ神は男性の人間の姿で見ていました。
黄泉の国には、いろいろな国があります。
動物の国・人間の国。その人間の中でも其々の国があり、各国に、
其々の神が君臨し、霊となった人間を守り、また、地球の生きた動物全てを、
守っています。
チビ神はある噂を耳にしました。
黄泉の国以外にも、天界と言う異国の神の国があり、
そこには決して踏みいれられない。そして、天界からも黄泉の国には、
踏みいれられないという話です。
チビ神は、なぜ同じあの世なのに行き来できないのか、
不思議でたまりません。
同じ蛇神達に聞いても、どの神も、
「そんな世界は存在しない。」
口を揃えてこう言いました。
そこでチビ神は大神にコッソリ話を聞く事にしました。
「母様・・・我々黄泉の国とは別に世界があるのでしょうか?」
大神は表情一つ変えずに、いつもの優しい顔で1つ頷きます。
「母様。私は聞きました。天界と言う世界があることを。
ですが、蛇神達は無いと言います。なぜでしょう。」
チビ神は不思議で堪らないと大神に告げました。
すると大神は口を開きます。
「我が小さな子よ、お聞きなさい。この世界には2つの世界があります。
我が黄泉の国と、そなたが申す天界です。」
チビ神は大神の言葉に嬉しくなりました。
神々の世界がまだ有る事に嬉しく感じたのです。
「やはり。・・・しかし、なぜ蛇神達は皆、無いと言うのです?」
疑問を大神に問いかけました。
大神の表情は1つも変わりません。
「そなたには・・・きっと悲しさが生まれる事でしょう。
しかし隠す必要はどこにもありません。想いは同じ。
天界は宇宙の中で地球を守る神の世界なのです。
この黄泉の国は其々の国に分かれていますが、天界は1つの大きな国。
その天界を治めるのが、地球を守る役割を与えられた宇宙の中の神なのです。
天界の神は地球を守り人間をお守りになられています。
我々同様に。
天界の国は天界の神の御子息が、天界の者達をまとめています。」
「そのような大きな国なのですね。我々と同じ人々を守っていらっしゃる。」
チビ神は嬉しくて嬉しくてたまりません。
しかし、
「ですが・・・なのにどうして?」
「我々の想いと天界の想いは同じもの。
ですが、天界の神はそれを認めてはいません。
なぜなら、天界は我々の存在する前から有る国。
そして、
人間が昔、天界の神を侮辱するかのように、
何もない、ただの物を神とし崇めたからです。」
チビ神は混乱しました。
「待ってください。我々よりも古い神で、その神を人間は侮辱を?」
「神からすれば、その行為は侮辱にあたったのでしょう。
そして、人間に忠告を。ですが、それは人間が荒れていた時代の話です。
我々が存在し、我々の世界が出来ました。
しかし、天界の神は同じ神として認めませんでした。
人間にとって、ご自分のみが神だからです。」
チビ神は思いました。
まるで自分たちの存在自体が認められていないかのようだと。
「そして天界の神は、黄泉の国が天界に入る事も、
天界の住人が黄泉の国に入ることも禁じたのです。」
「そんな・・・そんなことはおかしい。」
「我が小さな子よ。おかしい事は数えきれない程、神々の中でも、
黄泉の国の中でもあるのですよ?
天界の神には神のお考えあっての事なのです。」
チビ神は思いました。
天界など自分達とは違う神の世界だと。思いやりのない世界だと。
大神はそんな我が子を見て、すぐに思いは伝わります。
目を閉じ、我が子の思う気持ちに小さく左右に首を振りました。
「小さな我が子。共にいらっしゃい。」
そう大神が言うと、大神は社を出、チビ神を連れて一目をしのぐように、
歩き森に入って行きました。
チビ神は怒りにも似た複雑な気持ちを抱きながら後を付いて行きます。
「その気持ちを静めなさい。皆に気づかれてしまいます。」
表情1つ変わらないものの、その声には重みがあり、
この世界は感情の世界。想いが強ければ強い程、
他の神々達に気づかれてしまうからです。
チビ神は母の声の変わりように、すぐに言う事を聞き、
深呼吸すると気持ちを無に近付けました。
暫く歩くと、そこは動物達の国の入り口です。
皆が通る道ではなく、ずっと遠回りをした誰も使わない道を歩いて来た事に、
チビ神は気づきました。
「母様、ここは動物の国では?」
「そなたは、そこの大樹の木の裏で見ていなさい。
くれぐれも感情を出さずに。良いですね?」
そう言うと大神は動物の国の入り口から中に入って行きます。
チビ神は、言われた通りに中にある大樹の木の裏に身を潜め無になりました。
大神は広場の真ん中で手を合わせて目を閉じ、空に顔を向けました。
暫くすると、空から一筋の光が広場に射しました。
すると大神は両手を広げ、その光を抱きしめます。
「よくいらっしゃいました。天の子よ。」
大神の腕の中で光は人の姿へと変わっていきます。
チビ神は眩しい光に目を細めながら大神の言葉に驚きをなんとか抑え、
その光景を見つめました。
「大神サマ。大神サマからの呼び出しなんか久し振りやん。」
大神の腕の中には白い衣を着た小さな異国の女の子が、
大神に抱きしめられるように腕の中に立っていました。
チビ神は黄泉の国では見た事のない異国の、そして真っ白な光の、
その女の子に釘付けになりました。
「あれが・・・天の子。」
天の子は大神にまばゆい笑顔を向けて話ました。
「今日は、約束の日と違うけど来てもえぇん?」
大神は優しい笑顔を向けて答えます。
「私がそなたを呼んだのですよ。会いたくなりました。」
「ふ~ん。なんかあったん?イジメられたん?」
「いえいえ。ただ、会いたくなっただけですよ。さぁ、動物達と・・・。」
「うん!」
天の子は大神の腕から離れるとまばゆい光を放ちながら、
動物たちに戯れます。
動物達はとても嬉しそうに天の子に群がりました。
天の子も、とても楽しそうにしています。
大神は天の子に問いかけました。
「天の子よ。人間達はまた争いを行うようです。」
すると天の子の表情が変わり、顔をしかめ拗ねたような声で返事をしました。
「みたいやな・・・。せやけど、人間界で争ってるつまらん事と、
天界と黄泉の国の争いも同じや。つまらん事で・・・。」
天の子はとても悲しい表情をしました。
「お父上は何と?」
「パパはまだアカン。カチカチの頭や。アタシが黄泉の国の話しても、
聞いてへんフリしよるねん。せやけどな、兄ちゃんは理解してくれた。
兄ちゃんも黄泉の国に来てみんなと話してみたいって!」
「そうですか。大した一歩ですよ。大丈夫、お父上は宇宙の神。
偉大なお方です。きっと気持ちは通じます。」
「うん。人間に戦はさせへんよ。何があっても。」
天の子は、動物の国を優しく慈悲に包まれた光で包みました。
チビ神はその心に感激し胸が痛いくらいの気持ちになりました。
天の子が天界に帰って行くと、大神は我が子に歩み寄ります。
「あの子は天界の神の子です。この国や動物が大好きな子です。
必死になって我々の存在を父上に認めさせようと、たった一人で、
天界で頑張っている小さな小さな子です。
天界では、我々蛇は地面を這う汚らわしい者と呼ばれています。
しかし、あの子は我々をとても魅力的で綺麗で好きだと言います。
生き物に汚らわしいなどは無いと。
我々が大好きだと。」
チビ神は涙を流しました。
先程の自分が恥ずかしくなりました。
「我が小さな子よ。神の想いは皆同じなのです。」
チビ神は思いました。
自分も天の子のようになりたいと。
もっと天の子を知りたいと思いました。
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