vol 13 : 蛇と過去



蛇。
蛇というより大蛇に見えた大樹。
その謎を引きずったまま、俺達は本堂を右に進んで山道を歩く。
何度も隣を歩く大樹をチラチラと見る挙動不審な俺。

「・・・カン、さっきから変だよ?」

歩きながら、そんな俺を大樹が気味悪そうにチラチラ見返す。

「なぁ、大樹。お前・・・なんかおかしい事ないん?」

「おかしい、事?」

俺の問いかけに大樹は眉尻下げて俯くと、辺りの木々を見渡した。

「うん・・・よく分からないんだけど、懐かしいのと、
後ろめたい気持ちになるんだ。俺が来たのは初めてなはずだし・・・、
俺が出来る前に父さんと母さんは来てるみたいだけど。」

話す大樹に返事をするかのように木々が揺れて音を出す。
補正された砂利道の脇は土で、目を凝らして見ると、何かが沢山、
這って俺達と共に移動している。
その何かをはっきり見ようと思えば見れるんやけど、
俺ははっきり見るんが怖かったんや。

息を切らす松吉に千代さんの笑い声。
木々の音に地面を這う音。

そうこうしているうちに、本堂よりも小さいものの立派な神社が見えた。
神社には丸い鏡が祀られ、その神社の隣には大きな岩があり、
山からの湧水が汲めるようになっている。
参拝客は、熱心にお参りをし、ポリタンクに水を汲んでいた。

「カンちゃん、大樹もお参りが先ですよ。」

千代さんに言われ、松吉、千代さん、俺、大樹と横に並び、
手を合わせる。

手を合わせながら境内に祀られている鏡を何気に見つめた。
結構離れてんのに鏡に俺の顔が写る。

なんで写ってるんやろか。真ん中におるから?

すると、鏡に写る俺が徐々に変わっていく。
前髪はピンで留めてるはずやのに、ピンはなくなってる。
黒に白ラインのベロアのジャージ着てるのに、白い服着てる。
その顔はまるで女の子で・・・。
隣の大樹を見たら青褪めとる。

「大樹?」

大樹の後に行って鏡を見たら、灰色の蛇の顔が写ってるんや。

「う、うわぁ!」

俺はつい叫んでもうた。

「カンちゃん?」

「どうした、カン。」

千代さんと松吉がいきなり叫んだ俺にビックリしてる。
大樹は俺に振り返り怖がった顔をして震えてる。
大樹も見たんや。

「大樹・・・お前、鏡・・・。」

「・・・見た。」

大樹が返事をした。

(よく来ましたね。天の子。そして、我が兄弟よ。)

またや。天の子?兄弟ってなん?
隣で大樹がやたら辺りを見回しビクビクしとる。
まさか・・・。

「なぁ、大樹・・・もしかして聞こえてるん?」

大樹は問い掛ける俺に、

「天の子?兄弟?」

やっぱり。

「あら、大樹まで。どうしたのあなた達。」

「少し座って来い。」

千代さんと松吉は心配そうに俺らを見つめた。
俺と大樹は、とりあえず二人で石段の所に行って腰をおろす。

「俺・・・なんで蛇?」

不安に満ちた顔で俺に問い掛ける大樹。
てか、聞こえた声には抵抗ないんかい、コイツ・・・。

「本堂のとこでな、大樹が大っきな蛇に見えたんや。
本堂から白い蛇が出てきて、お前に巻きついてた。
そん時も、天の子と私の子って言うとったけど・・・。」

「天の子ってカンのことだよね?俺が蛇で。」

「わからん。そんなん言われたこと・・・」

 俺と大樹の間をすごい風が吹き抜けた。

(天の子はアナタの事。我が兄弟はお前の事です。)

薄ら見える手の指が俺と大樹交互に指して説明する。

「大樹・・・見えるか?」

「・・・うん」

「聞こえるか?」

「うん。」

(アナタ達は人の子となり、全てを忘れているのですね。)

寂しげに言う霊の声。

「どういう事や。ちゃんと説明してくれへんか。」

(この場所は我々、蛇の神の住む場所。私は水の神。
人の病を治すように務めています。そして、大樹。
そなたは、この蛇の国の母から生まれた1匹の灰色の蛇でした。)

「俺が・・・灰色の蛇?」

(はい。小さな小さなアナタはここで大きな灰色の大蛇に成長し、
誰よりも優しい蛇神に成長したのです。そして、天の子。
アナタは我々とは違う世界の子。
まだ、神々の中でも宗教の派閥があった頃です。
アナタは宇宙の中で地球を守る神の子として生まれました。
好奇心に満ち、動物をこよなく愛していたアナタは、まだアナタの父が、
認めていない我々の国に興味を持ち、我々の国に人目を忍んで、
よくいらしていた。本当なら、我々はアナタを異国の神として、
迎え入れてはならないのですが、我が母は同じ神だと迎えいれていたのです)

ちょっと待った!
なんやこの日本昔話みたいな話は。
嘘やとは言わへん。
せやけど・・・。

「その話、もっと詳しく聞きたい。」

大樹が真顔で霊に話しかける。
大樹、こんな現実離れした話、受け入れる体制か?

(いいでしょう。アナタ達の事実をお話しましょう。
是も、きっと何かのお導き。)

そして、俺と大樹の日本昔話が幕を開ける。




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