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vol 12 : 美輪の山
本日は晴天なり。
相変わらず俺は休日に織田家に向かう。
バイトもあれからやってないから、金欠やけど、なんとかなるさーで、
日々を過ごしてます。
「あら、カンちゃん。いらっしゃい。」
千代さんが他所行きの着物姿で玄関に居る。
「・・・どっか行くん?」
自転車に跨ったまま問いかけた。
「美輪山にね、お参りに行くんよ。カンちゃんも一緒においで。」
相変わらずの優しい笑顔で誘ってくれた。
勿論行くけど・・・。
「松吉も行くん?大樹は?」
「二人とも行くんよ。お父さんは水持てないし。カンちゃん来てくれたら、
助かるんよ。」
水?
「美輪山は山の神社でねぇ、湧水が出てるん。
それは病気にたいそう効くらしいの。散歩がてらに行こうって話になって。」
「へー。」
玄関から松吉と大樹がポリタンクを持って出て来た。
「カン、いい所に来た。」
「カン~、電話しようと思ってたんだ。」
二人とも相変わらずやなぁ。
ポリタンク4つを車のトランクに運ぶ大樹。
車の後部座席に乗る松吉と千代さん。
「何してる。早く乗れ、カン。」
最近、運転はいつも大樹や。運転も腰が痛なるらしい。
俺は助手席に乗り込んだ。
大樹が運転席に乗ると、車は1時間程の山に向かって走り出す。
景色は都会から田舎道になり、山に入る前には大きな鳥居が出迎える。
「世界一高く大きい鳥居だそうだ。」
鳥居を車でくぐり、少し走った場所に駐車場があり、
降りるとすぐに神社のある参拝道が山に向かってある。
ポリタンクを持って、みんなで参拝道を歩く。
辺りは高い木々が壁を作り、時折の風にザワザワと涼しげな音をたて、
この空間は自然に満ちていて心も清々しくなる感じがした。
砂利道を登って行くと、左手に第1ヶ所目の小さな祠がある。
立札を読むと、祓いの祠と書いてある。
本堂に行く前に、穢れを払うという事やろ。
大樹がポリタンク両手に、さっきから挙動不審気味。
「大樹、どないしたん?」
「え?・・・いや、何か・・・。」
「おい、お前らもはよお参りせんか。」
先に中に入って手を合わせ終えた松吉が呼ぶ。
俺と大樹も中に入り手を合わせた。
(はじめまして。戌尾 柑って言います。毎日毎日ご苦労さま。)
こういう所はいろんな人が来てお願いするやろ?
そう考えたら人生相談所みたいな気がした。
(ほ~、よう来た。ご苦労さんとは、またありがたい言葉。
ちび蛇か。久しいのう。そなたは、天の子か。)
ちび蛇?天の子?なん?
「カン、どうかした?」
隣の大樹が祠を見つめる俺に不思議そうに問いかける。
「いや、なんも。行こか。」
祠の場所を出ると少ない階段を上り、大きな立派な本堂が現れた。
水を汲む場所は別みたいやな。
本堂の賽銭箱の前に立った瞬間、隣の大樹に異変が起こる。
眉尻下げて本堂をずっと見つめてるんや。
(よく来ましたね。私の子。そして天の子。)
オレンジ色の光が本堂から溢れ出る。
その光は大樹を包みこみ、白い手が光から出てくると大樹の頬を包み込み、
「た・・・いじゅ。」
その光景に圧倒されて名前を口にした。
(大樹・・・そうですか、人の子の名。良い名をもらいましたね。
母は安心しました。)
大樹は目を閉じて手を合わせる。
俺が一番びっくりしたんは、その大樹が大きい蛇に見えてることや。
灰色の大きな蛇に白い大きな蛇が絡まってる。
おいおい、なんやねんコレ!大樹は?
あまりの事に目をぐっと瞑り小さく震える俺。
「カン?・・・カン?」
大樹の声に、恐る恐る目を開ける。
そこには、いつもの大樹がおった。
「た・・・蛇!」
大樹を指して大声をあげた俺に大樹は目を見開き、足元を見て、
「へ、蛇!ど、どこっ!」
その場に蛇がいると思い地面を左右後ろと見る大樹。
「いないじゃない。も~、やめてよ。」
俺は大樹を指したまま、目が点になっていた。
何も解っていない大樹は、俺がふざけたと思ったらしい。
松吉と千代さんは御神籤を引いて楽しそうにしている。
辺りを見渡しても、参拝客は誰もが普通。
でも、はっきり見た。大樹が蛇になったの。
これが一体なにを指していたのか、その意味が解るのはそう遠くはなかった。
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