【フライヤー】
画像をクリックすると高画質版が開きます。チラシ作成:中丸麻衣子
【推薦】小澤実(西洋中世史・北欧史・史学史/立教大学教授)
スウェーデンに伝わる巨人伝承を語り直した本書は、一見すると、子供向けの絵本である。もちろん、かわいらしい絵柄とやさしい語り口を、私たちはまず楽しむことが大事だ。北欧発の物語として、家族で楽しむことができるだろう。
しかし、絵本としての楽しみは、本書の一部であるに過ぎない。絵本なのに?と訝しむ向きもあるかもしれないが、裏面に始まる訳者中丸による解説は、巨人フィンの物語を、余すところなく味わい尽くすプロフェッショナル向けの研究である。「第1部:『巨人フィンの物語』ができるまで」では、聖書や北欧神話などの欧州の伝承世界に分け入り、「第二部:教会建設説話から『大工と鬼六』へ」では、私たちも読んできたであろう『大工と鬼六』の元ネタを辿る多言語と多文化をめぐる旅路に私たちを誘う。伝承文学の専門家であれば、この時点で本解説が与えてくれる学識と発見に慄くであろう。しかし中丸の筆はそこに止まらない。真骨頂は「第3部:北欧神話と『進撃の巨人』」にある。諫山創『進撃の巨人』が北欧神話にモチーフを求めていたことを知っている人は多いかもしれないが、すでに完結したその壮大な物語に隠されていたかもしれないもう一つの物語を、中丸は掘り起こす。
中丸自身が、スウェーデン各地を歩いて撮影したり関係者から頂いたりした写真が、本書にはふんだんに用いられている。物語それ自体と解説を強固に結びつける写真や図版は、中丸の解説と併せて、本書を手に取る私たち日本人にスウェーデン語原著にはない新しい読み方を与えてくれるだろう。
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【書誌情報】
中丸禎子(訳・解説)『巨人フィンの物語 北欧・日本 巨人伝承の時空』ローネ・モーゲンセン(絵本・文)、トード・ニイグレーン(絵本・絵)、三弥井書店、2024
【概要】
スウェーデン・ルンドの教会の地下にある「巨人の柱」。教会を作った巨人が、報酬を得られなかったために教会を壊そうとして石化したと伝わる。
言い伝えをもとにした絵本『巨人フィンの物語』のスウェーデン語からの全訳と、80頁の解説――解説者が旅した巨人フィンゆかりの地の現在、源流となる北欧神話、日本の民話『大工と鬼六』との意外な関係、漫画『進撃の巨人』論まで、北欧・日本と巨人の知られざる姿を盛り込んだ充実の一冊。
英語でもう少し詳しい概要を書いています。こちらをご覧ください。
【目次】
<絵本> 『巨人フィンの物語』 …6
巨人フィンに会いに行こう …32
<解説>
はじめに 『巨人フィンの物語』との出会い …116(3)
第一部 『巨人フィンの物語』ができるまで …112(7)
第二部 教会建設説話から『大工と鬼六』へ …96(23)
第三部 北欧神話と『進撃の巨人』 …77(42)
※解説は縦書きのため、絵本の最終ページから始まります。通しページ番号(縦組みページ番号)
参考文献 …55
謝辞 …57
【オンライン書店情報】
三弥井書店 ウェブサイト
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